地震の備え・できること

すくすく子育て
2017年3月11日 放送

いつ起こるかわからない地震。いざというときのため、日ごろからどのような準備をしておけばいいのでしょうか。ママ向けの防災セミナーが各地で開かれるなど、ママたちの関心も高まっています。今回は地震の備え・できることについて専門家と一緒に考えます。

すくすく子育て「地震の備え・できること」

専門家:
汐見稔幸(白梅学園大学学長 教育学)
倉石哲也(武庫川女子大学 心理・社会福祉学科教授)

乳幼児に必要な備えは?

避難する際にベビーカーは使えないと聞きました。そのため、避難するときには、ママバッグを持っていこうと考えているのですが、他に必要なモノや備えておくといいものはあるのでしょうか?
(7か月の双子の女の子をもつパパ・ママより)

避難用に用意するもののポイント

「何を」「どれだけ」準備すればいいのか。防災に詳しい、かもんまゆさん(スマートサバイバープロジェクト)に教えていただきました。

▽女性が持って逃げられる重さは10kg程度
「家にストックしておくべきもの」と「持って逃げるもの」の区別があいまいになっている人は多いと思います。
「持って逃げるもの」は、女性だと10kgが限度です。3kgの赤ちゃんをだっこしたら、残りは7kgしか持てません。それ以上持って逃げても、途中で捨てることになってしまいます。厳選して持っていくようにしてください。

▽背負って逃げるための「防災リュック」
地震を体験したママたちが防災リュックに入れておけばよかった、入れておいてよかった防災グッズが以下のとおりです。

  • すぐ食べられる食品(お菓子・アメ)
  • 飲料水
  • 割りばし、紙皿、紙コップ
  • 小型ラジオ&電池
  • 小型LEDライト(首かけタイプ)
  • 筆記用具
  • お札、小銭
  • 重要書類コピー(免許証、健康保険証、母子手帳、お薬手帳、生命保険証書、銀行口座など)
  • ライター、ティッシュ、ばんそうこう、はさみ、ナイフなど(ひとつにまとめて)
  • 帽子
  • 家族写真(捜索時に使用)
  • ガムテープ
  • トイレットペーパー、生理用品
  • 簡易携帯トイレ
  • マスク(大人用、子ども用)
  • マウスウォッシュ
  • 洗眼薬
  • レジ袋、ゴミ袋、黒いビニール袋
  • 食品用ラップ
  • ブルーシート
  • 軍手、ゴム手袋
  • 使い捨て下着
  • ブランケット
  • タオル
  • 除菌シート
  • 携帯充電器

乳幼児がいる場合は・・・

  • ベビーフード
  • 粉ミルク(スティックタイプ)
  • スティックシュガー(ミルクの代用に)
  • おむつ(圧縮袋でコンパクトに)
  • おしりふき
  • 歯みがきシート
  • カイロ
  • だっこひも
  • 使い捨て哺乳瓶
  • ネームタグ(本人と親の氏名、携帯番号などを書く)
  • 赤ちゃんの薬
  • 着替え

※「ママのための防災ブック『その時』ママがすることは?」より

これらの中から自分の家族に必要なものを厳選して入れて、逃げるときにすぐに持てるように廊下や玄関に置いておきましょう。特に乳幼児は成長が早いため、最低半年に一度は中身を見直すことが必要です。

人によって、「あのときこれがあればよかった」と思うものは異なります。汚いのがイヤだという人は除菌シートをたくさん入れていたり、子どもがたくさん食べるおうちは、食料を多めに入れていたりします。ふだんの生活をしている中で絶対に必要というものを優先していれてください。

講師:かもん まゆ(スマートサバイバープロジェクト)
東日本大震災のときのボランティア活動を機に、東北や熊本で被災したママたちの声を集めた冊子を制作されました。
自らも3人の子どもを育てながら、これまで全国100か所以上で、被災地のママたちの体験を伝える活動をされてきました。

おもちゃや絵本など子どもが安心できるもの

回答:倉石哲也さん

子どもが避難所でも安心できたり、楽しめたりできるように、おもちゃや絵本など、子どもの好みのあそび道具なども備えておくといいかと思います。

避難する場合だけではなく、自宅にとどまる場合も考えておく

回答:汐見稔幸さん

被災した場合、避難所ではなく、ライフラインが断たれた自宅にとどまらないといけない可能性もあります。
そのような場合も考えて、自宅に水や食料をストックしておくことも大切です。

物質的なもの以外に備えておくことは?

助けてもらえるように周囲とのつながりを作っておく

回答:倉石哲也さん

難しいことだと思うのですが、実際に被災すると自分がどうなってしまうのかを考えてみてください。おろおろしたり、ビクビクしたり、頭が真っ白になったり・・・。いつもは機敏に動けるのに、動けなくなってしまう可能性があると思います。そんなときに、助けになってくれるのは周囲の人たちです。
ふだんから、あいさつするなどして、地域や周囲の人たちとのつながりを作っておきましょう。


地震が起こったとき子どもが保育園にいる場合、親はどのように動けばいい?

保育園を信頼して、二次災害に気をつける

回答:汐見稔幸さん

保育園では、児童福祉法と消防法により義務付けられています。
日本にあるさまざまな組織の中で、一番避難訓練をやっているのは保育園とも言えるでしょう。
保育園を信頼して、自分の命を守ることを最優先にしてください。


避難所での子どもとの生活は?

実際に避難所で生活をしたママの体験談

2016年4月に起こった熊本地震で、実際に避難所生活をしたママにお聞きしました。
地域の人との助け合いがある一方、避難所生活には子連れならではの苦労もあるようです。

<1歳6か月の女の子をもつママ>

家屋の倒壊は免れたものの、家具は倒れあらゆるものが散乱してしまったため、当時9か月だった娘を連れ、2週間の避難所生活をすることになりました。

・良かったこと
避難している方々の中には、自宅が全壊して帰る場所がない人たちもいました。その方たちが、娘に勇気づけられて毎日癒されると言ってもらえたのはうれしかったです。
・苦労したこと
避難所にいるお年寄りはとても早く寝てしまわれるので、グズるたびに外に出て寝かしつけることを夫婦で繰り返しました。赤ちゃんなのに十分な睡眠がとれないことに困りました。

<女の子2人、男の子1人をもつママ>

家屋の倒壊は免れたものの本震によって大きな被害を受けたため、地震のあった夜から近くの小学校へと避難しました。

・良かったこと
避難所では、校長先生が率先して毎朝みんなでラジオ体操をしたり、小中学生も積極的にボランティア活動をしたり、一体感のある、温かい避難所でした。
小さい子を抱える親はなかなかボランティア活動に参加できず、心苦しかったのですが、トイレ掃除などは夜11時まで募集があったので、子どもを寝かしつけてから、参加するようにしていました。
・苦労したこと
避難所生活、7日目の朝、一番下の息子が体育館内を走り回ってしまいました。
主人が急いで追いかけて連れ戻してきたところで、おじさんに怒鳴り込んで来られ、「タバコを外でしか吸えなくても我慢しているのに、そういうことをするならここで吸ってやる」と言われました。私を含め、周りの人たちもショックを受けている状態でした。うちを含めた子連れ家族4組はいたたまれなくなり、その日のうちに避難所を出ることにしました。

子連れの避難者への対応

熊本県益城町は、2016年4月に起こった地震でもっとも被害が大きかった町のひとつです。
益城町では、ピーク時には人口の3分の1にあたる1万人以上が避難していました。
そのような想定外の災害が起こった益城町で、子連れの避難者へはどのような対応をとられていたかを、実際に避難所を運営されていた方々にお聞きしました。

丸山 伸二さん(益城町役場 福祉課 主査/避難所対策チームの一員として避難所を運営)
今回のような長期の避難が発生するような災害は想定していなかったため、お子さまや乳幼児、要配慮者の世帯向けの態勢や準備は特段なかったように思います。
そのため、態勢のひとつとして部屋を区切ることが考えられますが、部屋を区切ってそのような方たちだけが入ることができるスペースはありませんでした。

冨森 靖博さん(熊本YMCA/益城町総合体育館で避難所を運営)
授乳が必要な方や、夜泣きをする小さいお子さんがいるご家族には、夜を過ごせる別スペースを設けました。
ガマダス隊を子どもたちで作り、トラブルが起こりがちな年配者と子どもの関係も和みました。
「ガマダス」は熊本弁で、「がんばる」という意味です。ガマダス隊は、届いた食事を高齢者の方々に届けたり、フロアを拭き掃除をしたりと、避難所の人たちのためにできることを手伝っていました。小学生でも他人のためになりたいという感情を持っています。子どもたち自身が地震の体験を通して、そのような自分自身の一面に気づいたこともたくさんありました。


避難所生活で大切なことは?

柔軟な思考と臨機応変な行動が大切

回答:汐見稔幸さん

避難所生活においては、こうすれば大丈夫というような、決まりきった解決方法はありません。
常識に捉われずに、どうすればこの状況を切り抜けられるかということを、柔軟に考えることが大切だと思います。

子どものことを優先する、能動的に生活に関わる

回答:倉石哲也さん

子どものことを優先して考えてあげましょう。周りの人に気を使って、子どもに泣くのをやめさせたり、我慢をさせてしまったりするのは避けた方がいいです。
また、避難所での生活に能動的に関わるようにしてください。やってもらうばかりの受け身ではなく、誰かのために動く方が、精神衛生を保つためにも良いと思います。


子どもの心のケアはどうすればいい?

熊本地震が起こったとき、息子はまだお腹の中にいました。私の不安が伝わってしまったのか、地震の後、とても激しくお腹をポコポコ蹴っていました。
また、3歳になる甥っ子がいるのですが、地震が起こったのが深夜だったこともあり、夜寝るときにテレビや電気を消せなくなってしまいました。地震は小さな子どもにもとても影響があるんだと実感しました。
子どもの心のケアはどうすればいいのでしょうか?
(8か月の男の子をもつママより)

親がそばにいてあげることが子どもの安心につながる

回答:倉石哲也さん

地震を経験してから、明るくしていないと眠れなくなったり、何か不安を抱えたりというのは当然のことです。
そのことを心配しすぎるよりも、「大丈夫だよ」と何度でも伝え続けてあげてください。親がそばにいてあげることが、何よりも子どもの安心につながります。

共感して何度も話を聞いてあげる

回答:汐見稔幸さん

経験したことのないような不安は、なかなか言葉では言い表せませんよね。
そのような不安を心の中にためると、何歳になってもその不安は繰り返し出てきます。
その度に、子どもに共感して何度でも話を聞いてあげてください。
そのようにして、何度も不安を外に吐き出していくうちに、心の根っこにある不安も解消されていきます。
大きな不安を解消することは時間が必要だと思います。何歳になっても、子どもに寄り添って話を聞いてあげるといいと思います。


地震に備えて、ふだんから心がけておくことは?

ふだんから子どもとのスキンシップを大事に

回答:倉石哲也さん

突発的な災害が起こったとき、ふだんの親子関係や人間関係が顕著に表れます。
ふだんから、子どもと楽しく過ごしたり、子どもとのスキンシップ多く取ったりしてください。
そうすることで、いざというとき、「子どもは黙っているけど緊張しているのかな、我慢しているのかな」と子どもの立場に立って考えることができますよ。

いつ何が起こってもおかしくないと思って備える

回答:汐見稔幸さん

地震だけではなく、大雨による洪水も起こります。
そのような時代になったのだと、ふだんの生活の一部に災害が起こることを想定して、備えることが必要です。この認識を、みんなで自覚していくことが大切だと思います。


すくすくポイント
地震が起こったときに、わが家を安全な場所に変える工夫!

いつ起こるかわからない地震。自分の命を守るのも難しいほどの大きな地震でも、自分だけではなく、子どもも守らなければいけません。地震に備えて家の中でできる工夫を、かもんまゆさん(スマートサバイバープロジェクト)に教えていただきました。

おうちの中に安全地帯を作る

部屋の中にモノを置かないスペースを作りましょう。
ここなら安全という場所を作り、揺れを感じたら、そのスペースに移動するように習慣づけるといいですよ。

寝室に家具は置かない

2階建ての家はなるべく2階に寝るようにして、寝室に家具は置かないようにしましょう。
また、ドアの周りや廊下、階段など、逃げ道にはモノを置かない方がいいですよ。


家具をロックする

家具はL字金具でしっかり留めることはもちろん、食器棚などの扉もフックで留めるようにしましょう。


家具をロックするときは、ぜひ子どもと一緒にやってください。
そうすることで、子どもに地震への興味・関心を持たせることができると思います。
地震は起こるものだと考えて、できることから行動に移しましょう。

講師:かもん まゆ(スマートサバイバープロジェクト)
東日本大震災のときのボランティア活動を機に東北や熊本で被災したママたちの声を集めた冊子を制作されました。
自らも3人の子どもを育てながら、これまで全国100か所以上で、被災地のママたちの体験を伝える活動をされてきました。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです