私、口出ししすぎ?

すくすく子育て
2017年1月14日 放送

何かというとつい子どもに口を出してしまう⋯これは、多くのママが抱えるお悩みです。
今回は、「どこまで口出ししていいの?」「子どもとの距離感がつかめない」などの“口出し”に関するギモンに答えます。

専門家:
井桁容子(東京家政大学ナースリールーム 主任保育士)
汐見稔幸(白梅学園大学学長 教育学)

今回のテーマについて

言い過ぎに気づけていることが大きな一歩

一生懸命過ぎて、言い過ぎていることに気づけていない親のほうが実は多いです。私も親子を見ていて、「今は言わないほうが良いかもしれないですよ」と止めたりすることがよくあります。
「言い過ぎちゃっているかな」と感じているママたちは、気づけていることに自信を持ってください。
(井桁容子さん)

今の時代に合った、ラクで楽しい子育ての方法を模索する

昔と違い今の世の中は、子どもに「外で遊んでおいで」と自由に遊ばせることができない時代です。そのため、親が家の中でずっと子どもを見なくてはいけません。これは、「子どもがちゃんと育つかどうかは、親の姿勢しだい」と言われているようなものです。結果として、親は子どもに「こうしなさい」「それはダメよ」などと言いたくなってしまいます。そしてそれをやり過ぎると、今度は過干渉だと言われてしまう。親からすると、「いったいどうすればいいの」という気持ちになってしまいますよね。
言い過ぎの場合は反省も必要かもしれませんが、それよりも、こういう時代にラクで楽しく子育てできる方法は何か考えていくことが大切です。
(汐見稔幸さん)


どこまで見守って、どこから口出しをするべき?

「これでいいのかな?」と思いながらも、子どもの行動に口を出してしまい、悩んでいます。
特に食事の際、食べ遊びがひどいため、常に監視しながら以下のような口出しをしてしまいます。
「お顔、前に出して食べて」
「ゆっくり食べなよ、どうしてそんなにずっと動いているの?」
「ふざけて食べないで。何回も言っているよ。」
「ちょっとそれ早く食べなよ」
「のどつっかえちゃうからお水飲みなよ」
私が注意しないと、将来困るのはこの子たちだと思うと、どんどん言ってしまいます。
これがしつけなのか、口出しし過ぎなのか、境界がわかりません。

我が家には2人の息子がいますが、上の子は幼稚園に通うようになり社会が広がっていく時期です。そんな中、私が口を出し過ぎているせいで、「自分で考えて自発的に行動ができなくなるのではないか」「私の指示が無いと動けなくなってしまうのではないか」ということを不安に思っています。
(4歳の男の子と1歳4か月の男の子をもつママより)

言葉よりも、ママの食事のしかたを子どもの見本に

回答:井桁容子さん

ママの食べ方は子どもにとって見本になります。子どもが上手に食べられるように大人も一緒に食べましょう。そうすると、子どもの食事中の言葉も減り、食べ方のマナーの見本にもなります。
例えば、「食べくずはあんな風に集めるんだな」「スープはああいう風にして飲むんだな」など親の食べ方を見て、子どもは学んでいきます。一緒に食べて“見本となる食べ方を見せる”、それだけで十分ですよ。
私たち保育者も、子どもについ余計な口を出してしまうことを避けるために、食べている子どもを見るのではなく、一緒に食べるようにしています。“食べさせる人”と、“食べさせられる人”のような構図はあまりよくありません。食事は文化なので、おいしく楽しく食べる空気を作ることが大事です。

子どもが自分で行動を選択できる言い方に

回答:汐見稔幸さん

口数は性格にもよりますし、多い人もいれば少ない人もいます。そのため、子どもに口出しする量が多いこと自体は問題ではありません。“量”よりも、言っている“中身”が重要です。
「指示」「命令」「禁止」の言葉が多いと、子どもは自分で考えて、どっちにしようかなと考える余地がありません。そのため、子どもは反発したり、ガマンするしかなくなるのです。このことが、親と子でいたちごっこのようになっている原因と考えられます。
例えば、「あと5分?」「あと10分?」という風に「提案」「依頼」するかたちで子どもに聞いてあげると、子どもは自分で選んで答えます。このように、子どもが自分で考えて選択すれば、意外と子どもは言うことを聞きます。
「指示」「命令」「禁止」から、「提案」「依頼」に言い方を変えることは、慣れるまでは時間がかかると思います。しかし、時間をかけてでも変えていくと、子どもは自分に任されることが増えていくので、親の言うことを聞くことが多くなります。

専門家さんのアドバイスを実践!

口出しをしないで見守る

今回の質問者のママに、おやつの時間に15分間、口出しをせずに子どもを見守ってもらいました。
ママは、子どもがお菓子で遊んだり、おしゃべりしながら食べてもグッとガマンです。

~実践後のママの感想~
イライラして「何か言いたい!」と思いましたが、「言っちゃダメだ」とこらえながら見ていました。
ふだんから、「きっと子どもはできない」という先入観を持って見ているので、「言わなきゃ」と思って対応しているところがあります。しかし、「子どもはできないことがあって当たり前」として見守っていれば、子どもも自分で考えて行動し、できるようになるんだなと思いました。
途中の遊び食べはしょうがないと目をつぶれば、「自分でやるんだ」と気づき、反省しました。

口出しをせずに子どもができることは見守ってあげて

回答:汐見稔幸さん

実践したことで、「黙って見ていれば子どもは意外と自分でやる」という、とても大切なことを発見されたと思います。
子どもができないことを、親が先取りしてやってしまうと、子どもはできるようにはなります。しかし、「自分で一生懸命やって、やれた!」という実感は少なくなります。
親が黙って見ていても、子どもが自力で身につけられるものはあるので、見守ってあげたほうが親もラクです。

見守りながら、子どもの気持ちに思いをめぐらして

回答:井桁容子さん

VTRの中で、お菓子を山のような形にして遊んでいる姿が見受けられました。こういった行動を、「あんなことやって!」ととらえるのではなく、「木の枝のように見えて、面白い形になると考えたのかな」と子どもの気持ちになってとらえれば、「この子はやわらかい頭をしているんだな」という見方をすることもできます。
口出しをせずに見守ることを、“ガマン”ではなく、“子どもの気持ちに思いをめぐらす時間”と考えるのがオススメです。
「口を出すのをガマンする」と思うと苦痛ですが、「この子はどんな気持ちでやっているのかな」と考えれば、退屈しなくなります。ぜひ試してみてください。


ケガをさせたくないと先回りして危険を回避してしまうのは手を出しすぎ?

娘はずりばいが速く、興味のあるところにすごいスピードで行ってしまいます。そのため、頭をぶつけないようにしたり、「ダメ!」と安全なところに引き戻したりしています。
パパには、もう少し見守ってもいいんじゃないかと言われますが、私としてはケガをさせたくないため、先回りして危険を回避してしまいます。これは過干渉なのでしょうか。
(8か月の女の子をもつママより)

夫婦で違う意見をもつというのも大切

回答:井桁容子さん

安全管理・危機管理の観点からすれば、ママの感覚は普通です。この年齢であれば、親が危険を回避してあげることは当然のことです。
しかし、安全な場所を確保したあとは、どんな動きをするのか、何に興味を持ってそこに行くのか、という視点で見てあげてください。すると、子どもが何が欲しくてそこに行ったのかがわかり、そのモノを安全な場所に移してあげることができます。せっかくなら、そこまで先回りしてあげてください。

また、パパが「先回りし過ぎじゃない?」と言ってくれるバランスがちょうどいいです。夫婦で同じ意見だと、ママも自分の考えに対して「そうかしら?」と考える機会を得られません。
夫婦がちょっと違う意見で子育てをしていくというのは、良い関係ですよ。

“子どもは自分で自分を守る”と温かく見守ることも大事

回答:汐見稔幸さん

意外と理解されていませんが、人間は動物なので、自分の命を自分で守ろうとする力は子どもにもあります。
そのため、できるだけ安全な環境を作ってあげたうえで、子どもがぶつかっても転んでも見守ってあげると、「ココはまずいんだ」「こういうやり方をすると失敗するんだな」ということを、子どもは確実に学んでいきます。
例えば1歳になった子に、すべり台のような階段を登らせ、降りるときにどうするかを見守ってみると、ほとんどの場合、後ろを向いて自分で考えてやっているのです。
そのため、ある程度温かく見守っていれば、“子どもは自分で自分を守る方法を発見していく”という信頼感はあっていいです。

ふだんから子どもの感情に共感してあげて

回答:井桁容子さん

ふだんから、子どもが“嬉しい”“おもしろい”と感じたことに対して共感してあげてください。すると子どもは「自分のことをわかってくれる人だ」と思い、信頼します。
そういう信頼関係ができている人に、「これはダメなんだよ」と厳しい顔つきで言われると、「ふだんよく自分のことをわかってくれるのに、今は表情が違うから、本気で受けなきゃいけないんだな」と子どもも思います。


言い過ぎたせいで子どもが臆病に育ってしまう?

ふだんからよく息子に注意をしてしまうのですが、最近息子の様子が変わってきて心配です。
1歳のころ公園で、走って逃げて車道に出るということが多かったため、怒鳴って怒る回数が多かったです。そのためか、今はすべり台も怖がっているようでやろうとしません。
また、小さいことで怒鳴るようになった時期に、言うことを聞くようにはなりましたが、同時に「ママが怖い」と言うようになりました。寝言がすべて「怖い」になった時期もあります。大絶叫で「怖い」と寝言を言うことが2か月ほど続きました。

私の頭の中に、朝何時に起きて、何時に昼寝させてという時間割があり、それと大きく違ったことをされたときに、私も腹が立ってしまいます。
時間ごとに動けるように、「5時のチャイムだからお家に帰る時間だよ」など、「○○のチャイムの時間だよ」ということをよく言っていたら、チャイムが鳴る音も怖がるようになってしまいました。

「ママが怖い」という寝言が始まったころから、もう1年ほど経っています。私が言い過ぎてしまったせいで、まわりの友達が普通にできていることを怖がってやらない性格に育ったのでは、と感じています。
この状態が続けば、臆病なまま大人になってしまうのではないか、ということが心配です。今後の声かけ次第で、どれくらい改善するのでしょうか。
(2歳8か月の男の子をもつママより)

子どもの見方を変えて、温かく見守って

回答:汐見稔幸さん

今回の年齢の子どもの「怖い」の意味は、大人が考える文字通りの「怖い」の意味ではない場合も十分あります。「そういうこととは違うんだ」という子どもの拒否や、「別の対応をしてよ」という叫びのようなものかもしれません。何かのサインではあるでしょう。

チャイムが鳴ったら何が何でも言うことを聞くようにさせるのではなく、温かく見守りながら、子ども自身に選択する余地を与えてあげてください。例えば「帰らなきゃいけない時間になったけど、まだやる?やるならあの時計のどこまでにする?」など、少しずつ幅を持たせてあげましょう。そしてそれを温かく見守ってあげてください。子どもは自分である程度選択できると、感情は落ち着いていきます。

私は、「自分の子どもには良いところがいっぱいあるんだ!」と思うことを推奨しています。そのため、最近の勉強会などでは“自分の子どもの良いところを20個書いてください”ということをやっています。20個書くのはほとんどの親にとって大変です。この数を書くには、ふだんはダメだなと思っているところも見方を変えて良いところだと思わないと書けないんです。例えば「あれだけガミガミ怒ったのにケロッとしている。意外とたくましい。」などです。このように考えることで、子どもの見方が変わり、少しずつゆとりが出ていきますよ。

また、言い過ぎたせいでこのままでは臆病になってしまうのではということですが、親の態度が変わったら、子どもはそれに合わせて行動するところがあるので、変わっていきます。大丈夫ですよ。
子どもに選択させる接し方に変われば、子どもは「自分に任されているんだ」と感じます。
また、保育園や幼稚園に行くなかで、自信がついたり達成感を経験すると、「自分は色んなことがやれるんだ、やりたいんだ」となり、どんどん変わっていきます。あまり心配することはありません。
結局子育ては、親も自分を変えていく練習でもあります。

毎日100点じゃなくていい

回答:井桁容子さん

きっちりしていることが100点だとしたら、毎日100点ではなく30点の日があってもいいんです。
長い期間で見れば、ずっと100点だった人が人生の終わりまで100点でいるかというと、逆にその裏返しで0点になってしまうことが世の中にはたくさんあります。色んなことを決まりきった形でやっていたために、もうヤダ!となってしまうとちょっと怖いですよね。
時間になっても子どもが行動しない場合、「終わらないとご飯が冷たくなって、おいしくなくなっちゃうよ」「暗くなってからお家に帰るのは怖いよね」などと声をかけてみてください。そのうえで子どもがやめず、暗い中お家に帰る日があった場合、その日は30点かもしれません。しかし、その経験をしたことで、翌日「暗くなると困るから早く帰ろう」と言えたら、それは120点ですよね。
毎日100点満点の子どもにしようとするのは少し不自然です。良い日悪い日とデコボコしながら、成長していけるといいと思います。いつか行動できる子になって欲しいと願うことは大切ですが、あまり急いでいい子を連発させなくても大丈夫です。


すくすくポイント
子どもの語彙能力が伸びる「共有型しつけ」とは?

専門家:内田 伸子(十文字学園女子大学 特任教授)

日本を中心に3歳から5歳までの3000名を対象に読み書き調査を行いました。そのなかで注目したのは“親子のコミュニケーション”です。
この調査によって、「強制型しつけをする親子」よりも、「共有型のしつけをする親子」の子どものほうが、語彙力が高い傾向にあることがわかりました。

しつけの種類

<共有型しつけ>

子どもと楽しい時間を過ごしたり、子どもが喜びそうなことを考えて、一緒に体験しながら学んでいくしつけ。親が子どもが好きそうなことを考えたり、一緒に旅行や外出するのが好きだったり、子どもに絵本の読み聞かせをしている家庭の、親子のコミュニケーションです。

<強制型しつけ>

決まりを作り、うるさく言ってしまったり、何度も事細かに言い聞かせたり、指示をするなど、子どもの気持ちに寄り添わずに大人の意見を重視するしつけ。

必ずしも豊かな家庭で塾に通っているからといったことで、語彙力が高くなるわけではありません。「共有型しつけ」をしている家庭の子どもは、読み書きの力も語彙も豊かであると、明らかになっています。

【子どもを伸ばすポイント】

50の文字を覚えるより、100の“何だろう?”を育てましょう。乳幼児期には、「文字が書けるかどうか」という見える力よりも、「“何だろう?”と疑問を持ち探求する心」を育てるほうが大切です。
親子の会話のしかたは、子ども自身に考える余地を残すような、子ども自身が考えることができるような会話が大事になっていきます。


ついつい口を出したくなるのは親心。しかし、時には子どもを信じて待ったり、子どもの気持ちを尊重してあげる余裕も持てたら素敵ですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです