乳幼児期の習いごと

すくすく子育て
2017年1月7日 放送

「わが子の才能を伸ばしたい!」と、子どもに対する期待って膨らみますよね。そんなとき、思いつくのが習いごと。
今回は、「習いごとはどうやって選べばいいの?」「いつから始めればいいの?」「ピアノの練習をしてくれない⋯」のように、習いごとに関する疑問やお悩みにお答えします!

専門家:
遠藤利彦(東京大学大学院教授 発達心理学)
大豆生田啓友(玉川大学大学院教授 乳幼児教育学)

わが子に合った習いごとを選ぶには?

娘は5か月のころから乳幼児教室へ通っています。
人の気持ちがわかるような優しい子に育ってほしいと思っていたところ、そのような子に育てるには、周りの気持ちを理解できるような脳を育てることがとても大事だと知り、乳幼児教室に通わせています。
しかし、娘はあんよも始まっていない時期から、階段をよじ登ったり、すべり台の坂を反対から登ったりと体を動かすことが大好きです。そんな娘を見ていると、体を動かすことが好きなのかなと感じるので、体を動かすような習いごとをさせるのがいいのかと悩んでいます。
わが子にあった習いごとはどのように選べばいいのでしょうか?
(11か月の女の子をもつママより)

適性を見極めるにはまだ早い

回答:遠藤利彦さん

ハイハイをする時期は、自力で移動できる範囲が限られているため、お子さんの知る世界はせまいです。そのような時期に、習いごとへの適性を見極めるにはまだ早いかと思います。
お子さんが自力で歩けるようになってくれば、世界も広がり、自分にとって楽しいものを発見できるようになります。

子どもが“やりたい”と思うことを存分にできるところを選ぶ

回答:大豆生田啓友さん

子どもの「やりたいこと」を思いっきりできるということは、世の中の一番大事なことを学ぶことに繋がります。他の人からさせられてすることが多いと、自発的にやらないようになってしまいます。
習いごとは、子どもが主体的に“やりたい”と思うことを、存分にできるところがいいのではないかと思います。

3歳までに脳が育つとよく聞くのですが、どういうことなのでしょうか?

3歳までに脳が育つというのは、学ぶための準備ができるということ

回答:遠藤利彦さん

3歳までに脳が育つというのは、脳の重さなど基本的な基盤ができるということ、つまり、学ぶための準備ができるということです。脳の機能や働きが完成するわけではありません。
子どもの脳は、3歳までに大人の脳の80%くらいの重さ、6歳ぐらいになると大人の脳の90%くらいの重さになります。
子どもが自発的にいろんな遊びに夢中になる中で、脳はさまざまなものを蓄えて、学んで、そして、機能的に働くようになるのだと考えてください。


スイミングを習うにはまだ早い?

私自身、小さいころから水泳をやっていて、健康には自信があるため、息子が1歳くらいになったら、健康のためにスイミングを習わせたいと思っていました。
でも、1歳を過ぎたころに、庭でお友達と一緒にプールに入れたり、家族で温水プールに行ったりしたのですが、嫌がって、ずっと泣いていました。
そんな状態で、スイミングを習わせるにはまだ早いのでしょうか?
(1歳2か月の男の子をもつママより)

水を怖がる場合は、無理して習わせなくてもいい

回答:大豆生田啓友さん

水を怖がる場合は、無理して習わせなくてもいいと思います。
小さいお子さんで、水を怖がる子と怖がらない子と、とても個人差が大きいです。無理なく水に親しんでいくようなスイミングスクールであれば、水を怖がる子でも問題ないかと思います。

水を怖いと感じるよりも前の段階で、ベビースイミングなどを習わせると、水に慣れて怖がらない場合はあります。しかし、月齢の早い時期から、スイミングを始めたからといって、必ずしも水泳の力が他の子よりも伸びるというわけではありません。

他のお子さんが楽しんでいる様子を見せてあげる

回答:遠藤利彦さん

他のお子さんがプールで楽しむ様子をじっくり観察させてあげるといいと思います。他の人が楽しそうにしているのを見ると、不安が消えて、水に触れてみようかなという気持ちが出てくるかもしれません。お父さん、お母さんはスイミングが好きとのことなので、その様子を見て、お子さんも徐々に水に慣れていけるのではないかと思います。
もしかすると、水自体を嫌がっているのではなく、知らない場所に行って何かをすることが怖いのか、知らない人がたくさんいるから人見知りをして不安なのか、別に理由がある可能性もありますよ。


どうやったら自分から練習してくれるようになる?

長女は3歳のころからピアノを習っています。
今年の春には初めての発表会があり、これまでよりも難しい曲にチャレンジすることになったのですが、なかなか自発的に練習をしてくれません。
そこで、練習1回につき1ポイントがたまり、6ポイントたまると、ごほうびがゲットできる、というポイントシステムを導入しました。
でも、年齢があがるにつれ、このポイントシステムも効かなくなってくるだろうなと思います。どうやったら自分から練習してくれるようになるのでしょうか?
(5歳と2歳の女の子をもつママより)

気持ちを切り替える手段としてごほうびは有効

回答:大豆生田啓友さん

ピアノで難しいところがあって、練習してもなかなか出来るようにならない。そういうときに、気持ちを切り替える手段として、ごほうびは有効です。でもお母さんが感じられているように、自発的に練習する気持ちがないと、この手段を毎回続けていくのは難しいと思います。

自発的にやってくれるようになる手助けとして、難しいところが少しでもできるようになっていたら、その頑張りを認めて、ほめてあげましょう。
また、難しくてつまずいているようなときには、一緒に寄り添ってあげるのもひとつの方法だと思います。

もし、この先、習いごとをやめたいと言われたら、やめさせるべきか、続けさせるべきかを見極めるポイントはありますか?

自発的にピアノを触りにいくことがあるかどうか

回答:遠藤利彦さん

ピアノで難しいところがある、発表会がある、というようなことは除いて、自発的にピアノに触りに行くかどうかが見極めのポイントになります。
気が向いたときでもいいので、自分から触りに行くようなことがあれば、ピアノを嫌いで、やめたいと言っているのではないかもしれません。日常のお子さんの様子を見ながら見極めてください。
お子さんの様子を見て、完全に興味を失っている場合は、やめさせる決断も大切です。

難しい曲は、うまく弾けなくて楽しくないから、弾きたくない。でも違う曲は弾いてみたいなという気持ちになったときは、ピアノに対して前向きに取り組めるときかと思います。
前向きな気持ちになっているときは、ごほうびの与えすぎに注意してください。ピアノに対して、楽しいなという気持ちが育ってきているのに、ごほうびのためにしかピアノを弾かなくなってしまいます。


週に1日しか習いごとに通えない⋯1日に2つ通わせてもいい?

現在は、長女の希望で電子オルガンの教室に通っています。
さらに、親の希望で、将来に役立ちそうな、英語や運動系の習いごとにもチャレンジさせてみたいと考えています。
でも、習いごとに通える余裕は週に1日しかありません。1日に2つの習いごとに通わせると子どもの負担になってしまうのでしょうか?
(5歳の女の子と10か月の男の子をもつママより)

休みを取ることも大切

回答:遠藤利彦さん

子どもは保育園などの集団生活で、体を動かし、頭を使って遊んでいるため、実は疲れています。
疲れているけど、好奇心が強いと「やってみたい!」と言うことはあると思います。
でも、子どもの発達において、休みを取ることも大切なこと。お子さんにゆったりとした時間を味わってもらうことも必要なのです。また、お母さん自身も1日に2つの習いごとがあると送り迎えや準備などで忙しくなりますよ。
気持ちの余裕が持てるように、1日の習いごとは1つにして、家族でゆったり過ごす時間を大切にされるといいと思います。

人によっては、週に何個も習いごとに通っているため、週1つしかできないことで、子どものチャンスをつぶしているのではないかと不安です。

子どもの習いごとへの高い期待は要注意

回答:大豆生田啓友さん

経験したことの何がどのように将来役立つかというのは、明確には言えないので難しいですよね。
子どもの習いごとへの高い期待は要注意です。
「この習いごとをさせているから、こういうこともできるようになってくれる」「この習いごとを将来役立ててくれる」と、習いごとへの期待が高くなってしまうと、思ったように成長してくれない子に対して、苛立ってしまいます。それでも、子どもはがんばって親の期待に応えようとします。このサイクルが、親子関係を苦しくしていきます。

「非認知能力」を育てる時間を作ることも大切

回答:大豆生田啓友さん

いま、乳幼児期の発達で話題になっていることが、「認知能力」と「非認知能力」です。

■認知能力
IQのように測ることもできる知的能力。
・学力
・記憶力

■非認知能力
目には見えないけど、人生の支えとなる重要な能力。
・協調性
・やる気
・社交性
・自制心

「非認知能力」を高めることで、将来、勉強や運動に対する意欲が高まると言われています。
用意された習いごとの中で何ができるか、ではなく、何もない家の中でどのような遊びを生み出せるか、ということも立派なクリエイティブな力が鍛えられます。
習いごとで得られる経験の他にも、このような力がつけられる時間も必要です。


子どもがいろんな習いごとをやりたがる⋯なるべくやらせてあげたほうがいい?

保育園のお友だちの間で、自分が何の習いごとをしているのかと話題になるようです。
その話を聞いて、息子も習いごとをしたいと、スイミングと体操を始めました。最近では、「サッカーを習っている子がいるから、僕もやりたい」と言い始めました。
子どもがいろんな習いごとをやりたがるのですが、なるべくやらせてあげたほうがいいのでしょうか?
(5歳の男の子と1歳1か月の女の子をもつママより)

子どもは限度がわからない。大人が判断してあげることも必要。

回答:大豆生田啓友さん

保育園に行くと、友達関係がとても広がってくるので、友達がやっていることをやりたいというのは、大事なことだと思います。
そうはいっても、子どもは限度が分かりません。無理があるかなと感じたときは、大人が判断してあげることも必要です。
また、子どもは、習いごとをやめたいと思っても、「お父さん・お母さんに無理して、習いごとに通わせてもらっているんだ」と、親に気を使って、なかなか言い出せないことがあります。
やめたいのにやめられないという状況にはならないように、子どもの様子を見てあげてください。

習いごと自体に興味が持てないようであれば、やめさせる勇気も必要。

回答:遠藤利彦さん

もう少し、いまの様子を見てあげてください。
お友達が習っているからという理由ではなく、習いごと自体に自分から関心が向けられるようであれば、続けてもいいと思います。
お友達の関係だけが大切で、習いごとに興味が持てないようであれば、習いごとをやめさせる勇気も必要です。

習いごとを1つに絞るにはどうすればいい?

子ども自身に選ばせる

回答:大豆生田啓友さん

お子さんに聞いてみてください。「いま3つの習いごとをしているけど、1つしかできないんだ」と聞くと、お子さんは自分で判断して、答えてくれると思います。
本人に選ばせることも大事です。習いごとの意欲向上にもつながります。


乳幼児期の習いごとは、どのように考えたらいい?

子どもの遊びの幅を広げるものとして捉える

回答:遠藤利彦さん

習いごとが、子どもにとって遊びの一環で、遊びの幅を広げていくものであればいいものだと思います。習いごとが遊びにならずに、遊びを削ってしまうようなものになるのであれば、考え直しましょう。

子どもの成長を期待しすぎない

回答:大豆生田啓友さん

習いごとをしている時間が、子どもと親の両方にとって、楽しく、充実した時間になればいいと思います。
子どもの成長を期待しすぎると、子どもも親も習いごとをするのがつらくなってしまうかもしれません。


すくすくポイント
子どもの“遊びの重要性”がよくわかる! 長期的に行われた調査

1960年代にアメリカのミシガン州で行われた調査、「ペリー就学前プロジェクト」。

この調査は、貧困世帯の3~4歳の子どもたち123人を対象に行われました。
そのうち、およそ半数の子どもたちに、“ある教育”を施し、それが将来にどう影響するかを長期的に調査したものです。

“ある教育”の主な内容は以下の2つ。これらを毎日、繰り返し行ってもらいました。
・子どもたちに遊びを計画してもらい、その遊びを実行してもらう
・さらにその遊びをよりよくするためにどうすればいいか考えてもらう

この教育を受けた子どもたちと、受けなかった子どもたちを比較する追跡調査で明らかな違いがあることがわかりました。

40歳時点での調査結果

上記の“ある教育”を受けた人の方が、学力や収入が大幅に上回っていることがわかったのです!

つまり、幼児期に重要なことは、“やりたい”と思える遊びに夢中になり、試行錯誤すること。
そうやって、生み出した自発的な遊びを通して、協調性ややる気、忍耐力などの能力を身につけて、それらが将来、勉強や仕事などに対する意欲を高めることに繋がるのです。

子どもに十分な遊びの時間や環境を整えてあげることは大事なんですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです