しつけの悩み

すくすく子育て
2016年11月19日 放送

「食事のマナー」や「公共のルール」などを、子どもに教えるのは難しいですよね。
今回は、「しつけは何歳から?」「効果的な伝えかたは?」など、しつけのお悩みに答えます。

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学学長 発達心理学)
遠藤利彦(東京大学大学院教授 発達心理学)

今回のテーマについて

「本人のため」「社会で共生するため」のしつけを

しつけは「誰のため」「何のため」にするのかということが大事です。
しつけ(躾)は、漢字で「身を美しくすること」と書きます。身を美しくするマナーやルールを、「本人のため」「周りの人と生きるため」に、身につけられたらいいですね。
(大日向雅美さん)

しつけは子どもの自立を下支えするもの

しつけというのはもともと、「着物をしつけること」に関係している言葉だと言われています。
裁縫では、まずしつけ糸で仮縫いをしてから、本縫いをします。それを子どものしつけで表すと、親のしつけによって「仮縫い」をし、子ども自身で「本縫い」をするというイメージです。
つまり、本来のしつけという言葉の意味は、「子どもが自立する下支えをする」ということです。
しかし、一般にしつけは、「命令したり、指示に従わせる」といった受け止め方がされています。この考え方をあらためることが必要です。
(遠藤利彦さん)


しつけは何歳から始めればいい?

娘が最近食べ物で遊んでしまうため困っています。口に飲み物を入れて「ぶくぶく」してしまうのです。
「ぶくぶく」をし始めたころは、そのうちやめるだろうと思い、あまり注意をしませんでした。しかし、保育園でお友達がマネをしていると聞き反省し、注意をするようにしています。
以前教育系の雑誌で、「3歳まではキツく怒られても、怒った人を怖いと思うだけで頭に入りません。優しく言いましょう。」という内容の記事を読みました。
そのため、なるべくキツく言わないよう心がけていますが、注意しなければならないことが何回も続くとき、自分に時間的な余裕がないとき、仕事で疲れているときなどは、感情的にキツく叱ってしまいます。
2歳を過ぎた今の年齢で、キツく叱ってもいいのでしょうか。また、しつけは何歳からどのように始めていけばいいのでしょうか。
(2歳2か月の女の子をもつママより)

「やっていいとき」と「やってはいけないとき」を繰り返し教えることが大事

回答:大日向雅美さん

子どもにとって水や飲み物を「ぶくぶく」することは楽しいことです。
しかも、「ぶくぶく」は歯を磨くときのように「やっていいとき」と、食事中のように「やってはいけないとき」の2つの場合があるため、子どもに伝えるのは難しいところです。

しかし、TPOを分けることは大切です。
「やっていいとき」と「やってはいけないとき」を叱るのではなく、教えてあげてください。
教えてすぐに効果はでないため、食事の度に繰り返し伝え、子どもを諭してあげましょう。

このようなしつけは、「いつから始めればいい」ということはありません。
極端なことを言えば、お腹の中にいるときからしつけは始まっています。
家族で話しているときに、どんなリズム、どんなトーンで話しているのかといったことは、お腹の赤ちゃんにすべて伝わっているのです。

したがって、「食事のときは“ぶくぶく”はマナー違反」ということを、小さいときから繰り返し子どもに言ってあげましょう。
これは、叱るということではないと考えたいですね。

しつけは早い段階から始まるもの

回答:遠藤利彦さん

例えば、ハイハイを始めた子どもが、目の前のアイロンに向かっていった場合、背後にいる両親は「絶対にそんな所に行っちゃダメ」と強く言いますよね。
この段階からしつけは始まっているのです。
つまり、乳児の段階からしつけは自然に始まっています。

そういう意味では、「3歳まではキツく叱ってはいけない」というのはあまり気にせず、しつけは早い段階から始まるものだと認識して大丈夫です。


子どもにひびくしつけのしかたは?

我が家には今、2歳8か月の娘と、6か月の息子がいます。
娘と息子と私の3人で食事をすることが多いのですが、娘は食事を始めると、徐々に落ち着きが無くなり、席を立つこともしばしばです。その他にも「眠くなった」と寝転んだり、イスを移動させたり、なかなか食事に集中できません。
見かねて私が食べさせると、やっと落ち着きます。毎日この繰り返しで、食べ終わるまで50分以上かかります。
最初は優しく注意しますが、息子の面倒も見ながらなので、だんだん私も怒ってしまいます。しかし、優しく言っても、怒っても言うことを聞いてくれません。
どういう風に声をかけたら子どもの心にひびくのでしょうか。
パパも、外食時などに同年齢の子がきちんと座って食べているのを見ると、もっと厳しくしつけなければと思うみたいです。
(2歳8か月の女の子と6か月の男の子をもつママより)

叱り方のワンパターンを崩す

回答:遠藤利彦さん

一般的に、叱っても優しく言っても言うことを聞いてくれない場合には、ワンパターンを崩すということが重要です。
ふだんと違う言い方をしたり、ふだん怒らない人が怒ったり、いつもとは違う関わり方をすることが効果的です。
ただし、基本的にすぐに効果がでるものではありません。
どうしても子どもは、キツく言われても、優しく言われても、最後の最後にはママが折れてくれるという見通しがついてしまっています。
すると、同じことを繰り返してもなかなか子どもはいうことを聞いてくれません。
まずは、ワンパターンを崩すことを試してみてください。

また、外で食事をするときというのは、周りの目が一番気にかかりますよね。
3歳前後くらいになると子どもは人の目が気になり始めます。
すると、「人が自分をどう見ているか」「うるさく、うろちょろして、自分のことを周りが悪く思っているんじゃないか」などと考えたり、「恥ずかしい」という気持ちが出てきます。
そして、徐々に自分の行動を抑えられるようになっていきます。

子どもの気持ちをくんであげることが大切

回答:大日向雅美さん

私たちはしつけをしようとするときに、どうしても親の「こうしなさい」「こうさせたい」という気持ちが先に出ます。
しかし、子どもがどういう気持ちでいるのかなと、気持ちをくんであげることが大切です。

今回の場合、ママが食べさせてあげればちゃんと落ち着いて食べることができています。
弟がいて、ママの関心がそちらに向くと、さみしいと感じているのだと思います。
そのため、子どもが「どういう気持ちでいるのかな」と考えてあげ、「ごめんね。ママ弟のお世話が大変で、あなたのことかまってあげられないけど、さみしいのよね。」と、子どもの気持ちを先回りして解釈し、伝えてあげましょう。

子どもは自分の気持ちをわかってくれていると思うと、ママやパパの言うことを聞こうと思います。
最初から「言うこと聞きなさい」「座りなさい」と言うのではなく、「座らない理由をママちゃんとわかってるわよ」と、伝えてあげてください。


外でのマナーを教えるには、どう言い聞かせればいい?

息子の元気がありすぎて、困ってしまうときがあります。
外出のとき、私の手をふりほどいて1人で走って行ってしまうのです。横断歩道や、ショッピングモールでも1人で猛ダッシュしてしまいます。
毎回しっかりと注意はしているのですが、なかなか聞く耳を持ってくれません。
何かあったときにはもう遅いので、危険であることを一番心配しています。人の邪魔にもなりますし、危険を回避できるような手段はないでしょうか。
パパに対しては、私よりもおとなしくしていますし、幼稚園でもきちんと生活できているようです。
(3歳8か月の男の子をもつママより)

危険はしっかりと教え、時には子どものペースを見守る

回答:遠藤利彦さん

命に関わったり、大きなケガにつながりそうなことは、強い感情を持ってハッキリと子どもに言うことは大切なことです。
これは、子どもに手をあげるという意味では全くありません。
「これは絶対ダメだ」ということを、表情や声の調子を変えて、子どもにハッキリと感情を伝えましょう。

しかし、ショッピングモールなど、命にかかわるような危険な場所ではない場合は、時として、すぐに追いかけずに子どもをじっと見守ってみるといいと思います。
すると子どもは、「何も注意されないな」と振り返るでしょう。
この“振り返る”という機会を体験させてあげることが大切です。

いつも親が後ろをついていってしまうと、子どもはそれを当たり前だと思ってしまいます。
「ママは離れていても見ていてくれて、何かあったら守ってくれる」といった見通しが子どもの中にしっかりと成り立っていくと、そこまで子どもが危険を冒さずに、安心感にひたって遊べるようになっていくでしょう。

本当に危ないときは強い感情で伝え、そうではないときは、子どものペースに任せて見守っていくことも大切です。

回答:大日向雅美さん

今スタジオにお子さんがいらっしゃいますが、VTRで見た様子と、スタジオにいる様子は別人のようです。
どこで走り回ってよくて、どこはダメなのか、わかっているのだと思います。
パパの言うことは聞くということですから、パパが「ママとショッピングモールに行ったときに、走り回っちゃダメだよ。
ちゃんとできたか帰ってきたらママに聞くよ。」などのように言ってみてください。
子どもは分かってくれるでしょう。
ママが一生懸命追いかけてくれるので、楽しさが倍増しているのかもしれません。

いつも怒られていると、子どもは言うことを聞きません。
ふだんは優しい人が「ここぞ」というときに怒るからこそ効き目があります。


外で叱るとき他人の目が気になります。どのように叱ればいい?

スーパーなどで子どもが走り回ったりしていると、周りから「またあの人たちが、あんなことしてる」と思われているのではと気になります。また、叱っている声を聞かされるのもイヤなのではと考えています。
(2歳2か月の女の子をもつママより)

外で、どうしても子どもが言うことを聞かないときに「もう知らない」と先を行き、子どもが泣きながら後ろをついてくるときに、チラチラと見られてしまいます。やはり外では優しく言ったほうが良いのかなと、人目が気になってしまいます。
(2歳8か月の女の子と6か月の男の子をもつママより)

回答:大日向雅美さん

私たちは社会生活をしているので、人の目が気になることはある程度当たり前です。

大切なことは“気にしかた”です。
「迷惑をかけているな」という“気にしかた”は必要ですが、「自分は良いママだと思われたい」などのように格好をつけて、結果的に叱らなくていいときに叱ったり、もっと叱らなければいけないときに叱れなかったりします。
「他人からの見られかた」を気にするよりも、「子どものためのしつけ」を心がけてください。

子どものために、ときに怖い顔をして怒るというのは、人から見ると美しいものです。
この子のためを思って真剣なのだということはわかりますので、そこはきぜんとしてください。


すくすくポイント
子どもが片付けるようになる!声かけの工夫

今回は片付けを例に、しつけに使える子どもへの伝え方の工夫を紹介します。
子どもに片付ける習慣を身に着けて欲しいけれど、なかなかすぐにはできません。
結果的に、「早くしなさい!」「きちんとしまって!」という言葉をつい使ってしまいますよね。
そんなときは、以下の工夫をして伝えてみてください。

専門家:井桁容子(東京家政大学ナースリールーム 主任保育士)

伝え方の工夫

(1)見通しがつくように伝える
(2)具体的に伝える

[例]

▼外の魅力で片づけを促す
「片付けが終わったら公園行こうね」
「外はお日様いっぱいだよ」
「散歩に行ったら、どんな花が咲いているだろうね」

▼ごはんの魅力で片づけを促す
「お片付けできたらおいしいご飯を食べようね」
「時計の針が6のところに来たらごはんができるから、それまでに片付けてね」

これらのように、先の見通しがつき、映像がイメージできる具体的な言葉を使いましょう。
すると、子どもはイメージがしやすく、次の行動を起こすことができます。

また、「乱暴に扱ったら壊れた」という経験も大事です。
一度壊してしまった経験があると、「この間割れてしまったよね。そういうのは『そ-っと』だよ。」という風に子どもに伝えることができます。
この『そーっと』というのは、他のモノにも使えるようになります。

例えば、「赤ちゃんには『そーっと』だよ」「痛いところには『そーっと』だよ」などのように、応用がききます。
叱られたからオモチャだけを片付けるのではなく、モノを大事にするということを、具体的な言葉で伝えましょう。

「オモチャは大事だからしまっておこうね」などのように言ったほうが、片付けの本当の意味が伝わります。

ママやパパの表現力をフル活用して、子どもがイメージできる楽しい言葉で伝えてくださいね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです