赤ちゃんの発達と不思議な動作

すくすく子育て
2016年10月15日 放送

寝返り、ハイハイ、あんよ⋯子どもが成長していくのは楽しみですよね。
そんな中で「ちょっと他の子と違う?」「この動きにはどんな意味があるの?」「発達する上で問題はないの?」と、気になる動きはありませんか?
今回は番組ホームページより投稿いただいた、かわいい“赤ちゃん動画”を見ながら、専門家が解説します。

専門家:
榊󠄀原洋一(お茶の水女子大学副学長・小児科医)

今回のテーマについて

みなさん頭の中に、赤ちゃんに対する固定観念のようなイメージがあって、「○か月の赤ちゃんはお座りしている」「○か月ではハイハイしている」「○か月になるとつかまり立ちしている」というように、イメージで捉えがちですが、赤ちゃんはひとりひとり発達のしかたは違い、その子にしかない動きがあります。
(榊󠄀原洋一さん)


どうしてこんな動きをするの?

左手だけじっと見る(3か月の男の子)

左手を持ち上げて、じーっと見たり、話しかけたりしています。
持ち上げるのはいつも左手だけ。

回答:榊󠄀原洋一さん

赤ちゃんが自分の手をじっと見ることを「ハンドリガード」と言って、多くの赤ちゃんにある行動です。
自分の手だとわかって見ているというよりは、見ているうちに、「あれ?これはこうやったら動くぞ?」というように、自分には手があること、これが自分の手だという理解につながると考えられています。
一生懸命、手を見たり、なめてみたりすることで、「あれ?変な感じがするな」という感覚を得ます。そうやって、自分の体のさまざまなパーツを確認して、自分の体の取り扱い方を理解していくのです。
「リガード」は熟視するという意味なんですよ。

泣いているときだけ寝返りできる(5か月の女の子)

ふだん、機嫌が良いときは、あおむけのままなのですが、ごきげんななめのときや寝ぐずりのときだけ寝返りします。

回答:榊󠄀原洋一さん

寝返りのきっかけはいろいろあると思います。何かを触ろうとして喜んでやる子もいれば、ぐずっているときにやる子もいます。これは、ひとりひとりの個性だと考えてください。

哺乳動物の中であおむけに寝ることができるのは、人間だけです。同じ哺乳動物でも、猿や犬も寝るときは、横になりますよね。哺乳動物にとって、あおむけはある意味、不自然な感じなんです。だから、赤ちゃんも寝返って横になろうとする。でもうまくいかなくて、ぐずる。寝返りができて最初のころは、お腹の圧迫感に慣れず、これも気持ちが良くない。おそらく、あおむけになっても、うつぶせになっても落ち着かなくて、イヤだと泣いているのではないかと思います。

寝返りがうまくなり、慣れてくると、泣くこともなくなってくると思います。
いずれは、赤ちゃん自身で解決すると思うので、心配しなくても大丈夫です。

腹筋?!(3か月の女の子)

頭を持ちあげて腹筋のような動きをします。

回答:榊󠄀原洋一さん

あまり見たことはないのですが、腹筋によって得られる独特の感覚を感じているのだと思います。
腹筋で少し上体を起こすと視界が急に変わりますよね。あと、お腹や足先にキュッと力を入れたときの感覚を楽しんでいるのでしょう。

このころの赤ちゃんは、さまざまな動きをやってみては「あ、こんな感じなんだ」と、動きと感覚を試しています。
でも、同じ動きを何度も試していると、ある意味飽きてしまうので、次は別の動きをやってみようと、さまざまな方法で、自分の体の動かし方を経験しています。自分のからだを「ためし運転」しているような感覚です。
それを繰り返すことで、「ここに手があるんだな」「こっちには足があるんだな」という感覚が身についていくのです。


この動きはハイハイの練習?

腹ばいでバタバタ(8か月の男の子)

2か月くらいずっとこのポーズでゆらゆら。前には進みません。

回答:榊󠄀原洋一さん

これは明らかにこの動きから得られる感覚を楽しんでいますね。
なぜ前に進まないかというと、ハイハイするための条件が整っていないからです。
ハイハイするには、手と足を交互に使えないといけないのですが、動画を見る限り、まだ交互に使えないようです。
ハイハイに必要な手と足の交互運動ができるようになるのは、寝返りができて、お座りができるようになったころです。

よつんばいで腰を振る(9か月の男の子)

よつんばいになり、おしりをフリフリ。
ハイハイしそうでしないまま、1か月以上が経ちました。

回答:榊󠄀原洋一さん

人間の体は上半身から発達して、最後は足にいきます。
この子の様子を見ていると、手をついて上体を支えています。上体は発達しているのですが、ハイハイに必要な「足でけり出す動き」がまだ発達していないようです。

子どもの気持ちとしては、ハイハイしているつもりなんだけど、実際はまだできていない。
この動きがあるときにふと、手と足の交互運動につながるのではないかと思います。

チャレンジするけど⋯(7か月の女の子)

ずりばいに挑戦するけど、前に進まずにその場で回ってしまいます。

回答:榊󠄀原洋一さん

ハイハイするためには、手と足ともに、左右の交互の動きが必要になります。
この子の様子を見ると、手は左右交互の動きができていますが、まだ足は交互の動きができてないようです。
手と足のどちらかを優先すると、その場でぐるぐる回ってしまうのです。これを「ピボットターン」と言います。

赤ちゃんはさまざまな動きをします。
ハイハイのトレーニングになっているのですが、あくまでも赤ちゃんは楽しみながら体を動かしているのです。
(榊󠄀原洋一さん)


こんな方法で移動しても大丈夫?

顔を使って前進(3か月の女の子)

顔を布団にうずめて、よいしょ、よいしょ!
3か月でも、前に進めちゃいます。

回答:榊󠄀原洋一さん

まずは手が使えるようになってから、足が使えるようになるのですが、この子は足の力が非常に強いようです。まだ、手が発達していないため、上体を上げることができませんが、足は伸びたり縮んだりしています。
発達には個人差があります。この子は足の交互の運動の発達が早かったため、このような形で前進できるようになったのですね。

寝返りでどこまでも!(7か月の男の子)

ごろんと寝返りでどこまでも移動します。横にしか進めませんが(笑)

回答:榊󠄀原洋一さん

寝返りは、赤ちゃんが初めてできるようになる移動運動と見なされます。寝返ると隣に移動できますからね。
しかし、寝返りで“移動”するには「動きたい」という欲求も必要です。「お母さんのそばに行きたい」「あのおもちゃを取りたい」など。

こうやって寝返りで移動できると、他の移動方法を覚えないのではないかと心配される方もいるようですが、心配ありません。
子どもは、さまざまな動きを覚えると、より有効な方法を使うようになっていきますよ。

上を向いてハイハイ!

▽9か月の女の子

6か月のころから上を向いて移動しまくっています。

▽1歳2か月の女の子

実はもうあんよもできるけど、あおむけもお気に入り。

回答:榊󠄀原洋一さん

あおむけ移動は、ずりばいのひとつの形だと思います。

あおむけ移動は、目線が上を向くので、お父さんやお母さんの顔が見えたり、天井が見えたりして、下を向くずりばいよりも、視界の体験が楽しいのだと思います。
また、足の裏のまさつだけで床の上を簡単に移動できるので、寝返らなくても簡単に移動できるのです。


これって平均的なハイハイと違うの?

左足を使わないハイハイ(10か月の男の子)

回答:榊󠄀原洋一さん

この時期は両足を使う前の段階ですね。この動きに慣れてきたら、自然と両足を使うようになる場合が多いので、心配ありません。
子どもは動きたいと思ったときに、一番楽にできる方法を選びます。ハイハイは移動の「自由形」だと思ってください。
水泳の自由形は、どのスタイルで泳いでもいいけれど、速さを競うとなると、一番速く泳げるクロールで泳ぎますよね。ハイハイも同じなのです。速く移動しようと思うと、平均的な手足を左右に動かすハイハイは一番効率がいいのです。
多くの子は平均的なハイハイに行き着きますが、「自由形」なので、そうではない子もたくさんいるのです。ちなみに、ハイハイのことを、英語ではクロールと言うんですよ。おもしろいですよね。

左ひざだけついてハイハイ(1歳1か月の女の子)

回答:榊󠄀原洋一さん

このようなハイハイで発達に影響があると心配されるかもしれませんが、発達には影響ありません。
このハイハイには、この子の性格が出ているのだと思います。様子をみていると、非常におもちゃや周りのものに関心があるように見えます。両手を使うハイハイの姿勢だと、手が自由にならずおもちゃをつかめません。
興味があるものに向かって行って、すぐに遊べるように、この体勢を取っているのだと思います。この子にとっては、この体勢の方が、効率がいいんですね。

大人でも、車輪のついた椅子に座っている場合、ものを取りに行くときに立ち上がらずに、椅子で転がって取りにいくことがありますよね。それと同じような感覚だと思ってください。

座って移動

▽1歳1か月の男の子

右手をついて左脚を立てて、おしりを擦るように移動。

▽1歳2か月の女の子

座ってお尻をひきずるように移動。

回答:榊󠄀原洋一さん

ハイハイをせずにおしりで移動する赤ちゃんが一定の数いることは、昔からわかっていて、「シャッフラー」と言います。

【シャッフラーをする子の特徴】

  • ハイハイをしない
  • 足を支えたときにぴょんぴょんしない

おしりで移動する子は、40人に1人くらいの割合でいます。その子たちが歩きだすのは、平均1歳9か月ごろだという研究データが出ています。
発達が「遅れている」のではなく、それがシャッフラーの通常の発達なのです。病気なのかなと心配することはありません。
「シャッフラー」は遺伝の傾向があることもわかっていますよ。

その他のハイハイの様子

▽9か月の男の子

ひじをついて高速ずりばい!

▽7か月の女の子

両手でぴょんぴょん前に移動!


すくすくポイント
最新の赤ちゃん研究!ジェネラルムーブメントってなに?

生まれたばかりの赤ちゃんが動くのは、周りからの刺激や働きかけに対して動く「原始反射」。

それに対して、「何かしたい」という目的や意志をもって動くことを、「随意運動(ずいいうんどう)」と呼びます。
大人にとっては当たり前のことですが、赤ちゃんは3か月ごろになってやっとできるようになる運動です。

これまでは、「随意運動」をする前の赤ちゃんの動きは「原始反射」だけだと思われてきましたが、最近の研究では、「原始反射」でも「随意運動」でもない動きをしていることがわかりました。

それが「ジェネラルムーブメント」です。

ジェネラルムーブメントとは?

3か月くらいまでの赤ちゃんがあおむけになったときに、自発的に手足などをバタバタ動かす全身運動のこと。

この運動を通して、自分の体や外の世界に触れて、赤ちゃんは自分の体と、そうでないものを認識するのではないかと言われています。
あおむけに寝ることができる人間の赤ちゃんだけにある動きで、お母さんのお腹の中にいるときからやっているそうです。

3か月ごろになって、お座りやつかまり立ちなどの「随意運動」ができるようになるとともに、このジェネラルムーブメントは、消えていきます。

どうしてこのような動きをするのかは、はっきりとは解明されていません。
赤ちゃんの動きは、まだまだ謎が多いのです。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです