パパの育児・どうする? ママとの関係

すくすく子育て
2016年9月24日 放送

家事や子育てを頑張っているのに、なぜかママとギクシャクしてしまう、そんな経験が多くのパパにあるようです。
今回は、パパの育児とママとの関係について考えます。

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学学長 発達心理学)
大豆生田啓友(玉川大学大学院教授 乳幼児教育学)

今回のテーマについて

育児における夫婦のポイントのズレが目立ってきた

パパとママの間に気持ちのズレが生じています。
パパの方は「こんなに家事・育児をやっているのに」と思い、ママの方は「えっ?」と思っている状況があるようです。昔に比べれば、随分パパが家事育児に参加するようになり、それはとてもいいことですが、パパとママの「ポイントのズレ」が、目立ってきているのではないかと思います。
(大日向雅美さん)

夫婦の気持ちのズレの原因を考えることが重要

パパは、「自分はある程度育児をやっている」と思えば思うほど、「どうしてそのことがママにわかってもらえないんだろう」と感じます。
パパ側とママ側とのそれぞれの思いのズレが、どこにあるのか考えることが、とても重要になります。
(大豆生田啓友さん)


妻が納得してくれるにはどうすればいい?

休日はなるべく息子と過ごそうと考えています。
我が家は共働きで、アニメの作画をしているママは、締め切り間際になると、週末も家で仕事をすることがしばしばです。そのため私は、週末は子どもと遊んだり、家を掃除したりと、ごはんの用意以外の家事・育児をするようにしています。
しかし、ママは納得していないようで、「1週間のうちの1日や2日やるのでは、私の方がやっている」となるようです。また、気が緩んでテレビでも見ていると、「暇でいいよね」と言われてしまい、少しも気が抜けません。
ママによると、「俺やってる、みたいな空気が漂っている気がする。確かにやってもらっているけれど、私も平日の家事や育児をやっているんだよ」と思ってしまうそうです。そんな雰囲気を出しているつもりはありませんが、出ているのだと思います。
どうしたら、ママは納得してくれるのでしょうか。
(2歳の男の子をもつパパ・ママより)

ママとパパの評価にはズレがある

回答:大豆生田啓友さん

なかなかママに褒めてもらうのは難しいようですが、すごくよく頑張られていると思います。
育児や家事に関しては、パパの自己評価は高いけれど、ママからの評価は低いことがあります。逆の場合もあり、ママからの評価は高いが、パパの自己評価は低い場合もあります。
そこの評価の差は何か考えたとき、今回の場合は「ちょっと油断してテレビを見ていること」が思いあたります。
パパ側は、心のどこかで「頑張っているのに」と思ってしまいますが、ママ側は、「私は24時間365日ずっと家事・育児をやっているの。あなたは週末だけよね。しかもそうやって、自分の時間がいつでもとりたいときにとれるのよね。」という見えない思いがあるのだと思います。そこのズレが、とても難しいところだと思います。

「足りない」のは育児の「量」とは限らない

回答:大日向雅美さん

パパが家事・育児をやっていても、ママが「何か足りない」と感じているとき、その「足りない」は、「もっと家事・育児をやって欲しい」という思いだけとは限りません。
例えば、パパがテレビを見ているときに、ママが仕事を終えて部屋から出てきたら、パパは「お疲れさま。コーヒーでも入れるから一緒に飲もうか。」とママをねぎらってあげてください。ママは「ねぎらいの一言」が欲しいのです。それをパパがしてくれると、「じゃあ一緒にテレビ見るわ」となったり、「飲み終わった食器は私が洗っておくわね」「いいや、僕が洗っておくよ」など、次のステージに進むことができます。
ママが「何か足りない」と感じるポイントは、家事・育児をやっている量の問題とは限りません。ママのハートをつかめるのは、ママをねぎらう、ティータイムかもしれませんよ。


妻からの要求に応えられず、ダメ出しをされてしまいます。どうしたらいいでしょうか?

お悩みパパ(1)

ママの方がふだんから子どもと接している時間が長いため、私が同じように家事・育児をやっているつもりでも、ママと全く同じようにはできません。そのため、「もっとこうして欲しい」などと言われることもあります。
そういったときに、「もっと頑張ろう」と思うときもあれば、「からまわりをしてしまった」と思い、ダメだしされたような気分になって落ち込み、家事・育児に及び腰になってしまうときもあります。
そういったときに、ママの言葉を前向きにとらえられるような心構えはあるのでしょうか。

お悩みパパ(2)

良かれと思って私が家事に手を出すと、ママに怒られます。ママにはママのやり方があり、ママと違ったやり方に不満があるようです。

お悩みパパ(3)

私が何かするとママから、「だっこのときの角度が高すぎる」「ミルクの温度が低すぎる」など、重箱の隅をつつくような指摘を多くされます。

話し合うことが大切

回答:大豆生田啓友さん

小さい子どもを持つパパたちが、これだけ家事・育児をやり始めているというのは、僕らの世代と比べると、すごいなと思います。
パパ、ママ、どちらがどのように家事・育児をしようと、違いがあり、ズレが起きるのは当然のことです。そのため、話し合う場を持つことが重要です。

小さな衝突は繰り返して上手に発散を

回答:大日向雅美さん

一般論ですが、家事・育児に関して男性と女性ではスタートラインが違います。やはり女性の方が、先にスタートしています。つまり家事・育児において、どちらかといえばママの方が先輩であることが多いです。
例えばパパたちは、職場で上司や先輩から色々と教えてもらったときに、いちいちダメ出しだとは思わずに、「ご指導いただいてありがとう」と思うことの方が多いと思います。そのように、ママからの要求も“ダメ出し”ではなく、“教えてもらっている”と、考えてみてください。
もちろん、ママたちも言い方がパワハラにならないように、気をつけなくてはいけません。「ありがとう。だけど、ここの所はこう変えてね。」というような言い方を心がけましょう。
パパたちは、ママたちにそのように言わせるためにも、謙虚に「教えてください」という心構えでママの意見を聞いてみてください。

それでも納得がいかないようであれば、何がいけないのか率直に理由を聞いてみたり、何か不満がたまっていることがある?」などと、違う原因を探ってみてください。
本当はママは違うところで不満があるのかも知れませんし、「他に何かつらいことがあった?」などと変化球を投げてあげることで、「実はね、」と悩みを吐露できるママもいます。

「ママが先輩だと思うと、パパは自分が正しいと思っていることも余計に言いづらい」という意見もあるようですが、どうしてそんなに夫婦間で気を使うのでしょうか。何が怖いのでしょうか。かつてはプロポーズをして「僕と結婚して欲しい」と言えた妻に、何を恐れてそんなに言いたいことも言えないのでしょうか。
イライラはずっとためこんでいると、マグマのように大爆発します。そのため、イライラをためないように、小さな衝突は繰り返してかまいません。そして、衝突したときはどこかでピリオドを打って、ママの好きなものでも買って帰ってあげてください。
ママたちも、「私はこうしたいのに、パパがこんなにいらだっている」と、遠慮をしていることもあります。
パパもママもお互い様です。イライラをため込まずに、上手に発散するのが、家庭が円満である秘けつです。我慢することだけが、解決ではありませんよ。


ママとの関係を良くするには?

「理想的な夫婦のありかた」はない

回答:大豆生田啓友さん

パパにもママにも言えることですが、他の夫婦のことは、うまくやれているように見えるものです。他の夫婦は良い面だけを見てしまうため、その夫婦のように良い夫婦であらねばならないという思いが強くなります。
しかし現実は、夫婦は小さいトラブルの連続です。「理想的な夫婦のありかた」があるわけではありません。このことは、夫婦でお互いに持っておくべき重要な共通認識です。

夫婦は人生を一緒に生きる同志

回答:大日向雅美さん

ひとつだけ、はずさないで欲しいポイントがあります。
それは、「夫婦は人生を一緒に生きる同志」だということです。ママたちも、パパがこの同志でいてくれることを望んでいます。このことをしっかりと押さえておけば、パパが何をやろうがやるまいが、たいしたことではないという風に落ち着くのではないかと思います。

また、ここでいう同志は「子育てを一緒に頑張る同志」ではなく、「人生の同志」です。
“ママとパパ”であったら、一緒に頑張るのは子どものことだけですが、“ママとパパ”である前に“ひとりの男性とひとりの女性”です。やがて子どもが巣立ったら、「長い人生の老後をともに生きる同志」でもあります。
したがって、「子育ての同志」だけでなく、「『人生をどうやって生きるか?』を分かち合える同志」だと考えて欲しいです。「子育てが終わったら何をしようか」といった風に妻の人生に関心を持ってあげてください。

老後に関心を持つときだけでなく、子育て中にもママがパパを同志だと感じた例があります。フランス人のママから、パパの家事・育児について聞いた話です。
彼女の夫は忙しく、家事・育児はほとんどできません。しかし彼女は、「私は幸せです」と言っていました。それは、彼女の子どもが聞き分けの無い年頃のとき、彼女に対して「やだ!」「うるさい!」など侮辱するようなことを言うと、パパはきぜんと「僕の一番大切な女性に君はなんて無礼なことを言うんだ」と言ってくれるからだそうです。
「僕の人生で一番大切な女性だ」とパパが思い、言ってくれる、それだけで、家事・育児をやってくれる、やってくれないを超越して、ともに生きていると思えるのです。

「人生の同志だ」と意識を変える具体的な方法として、夫婦で過ごすときは、ママ・パパではなく、名前で呼んでみることをオススメします。名前で呼び合うだけでなく、結婚前の写真や子どもがまだ小さいころの昔の写真を見ながら、「こんなことあったね」と、お互いにママとパパだけじゃなかったときを思い出してみてください。そこが、「人生の同志」のスタートです。
いつでも名前で呼び合うのではなく、子どもの前ではママ・パパと呼び合い、2人のときは名前で呼び合うなどもいいですね。
それは、あるときはママとパパであり、ある時は一人の女性と男性であり、あるときは働く人であり、といろんな自分があるほうが、自分の引き出しが多くなるからです。引き出しが多いほうが、夫婦ゲンカも上手におさまりますよ。


すくすくポイント
パパ必見! 子育て中の夫婦のコミュニケーションに役立つ豆知識

脳科学が専門の、黒田公美さん(理化学研究所・脳科学総合研究センター 脳神経科学)は、パパたちには、子育て中のママの心身の状態を理解して欲しいと話します。

哺乳類にとって出産や育児は、生命最大の難事業です。
外敵や病気、食糧難などに打ち勝って、子育てを成し遂げるために、哺乳類のメスは、妊娠・出産・育児をしていく中で心も体も劇的に変化します。
母親になるとどういう変化があるのか、はっきり言えることは、「多くの種において、攻撃性が増す」ということです。

哺乳類の赤ちゃんは他の生物に比べて未熟な状態で生まれるので、親に守ってもらわないと生き残ることができません。
そのため、出産後の母親は、出産前に比べ、子どもを守るために攻撃的になると言われています。
例えばクマも、ふだんであれば人間が近づくと自分から逃げていくメスのクマが、子連れのときは人間に先制攻撃を仕掛けてくることがあります。
自分は逃げられても子グマは速くは逃げられないからです。

このように、哺乳類において母親になるということ、母性本能の中では、攻撃性が重要な部分を占めています。
そしてこの攻撃性が、子どもの父親に対してさえも、向いてしまうことがあるのです。

<パパにオススメのママとの会話のしかた>

もし、ママがパパにイライラをぶつけてきた場合、まずは理由を聞いてあげてください。

理由はあまりはっきりしないのに、イライラが止まらない場合もあります。
そのようなとき、ママの言葉を文字面で追うと訳が分からなくなり、お互いに対立してしまうことがあります。
このような時、言葉や理屈だけではなく、ママの「感情」について理解することが効果的です。

まず、できれば何か他の事をしながらはやめて、ママの方に体を向けてみてください。
そしてママが「何を言っているのか?」だけではなく、今ママは「どんな気持ちで言っているのか?」ということに、注意して聞いてみてください。
今ママは悲しんでいるのか、怒っているのか、寂しがっているのか、そういった部分にパパが注意を向け、「そんな気持ちだったんだね」と受け止めながら丁寧に聞いていると、ママにもそれが分かります。

すると、ママは「自分の話が聞いてもらえた」と思い、話している問題自体が解決しなかったとしても、気持ちが落ち着きます。
イライラしている時、ママに限らず人は誰でも、必ずしもアドバイスを求めているのではなく、ただゆっくり、親身になって自分の話を聞いてほしいと思っていることも多いのです。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです