パパの育児・“イクメン”は難しい?

すくすく子育て
2016年9月17日 放送

家事や育児に積極的にかかわるパパ、いわゆる“イクメン”。今では、すっかりお馴染みの言葉になりました。
しかし、“イクメン”という言葉にストレスを感じる方もいるようです。
今回はパパたちのお悩みを聞いて、パパの育児について考えましょう!

専門家:
渥美由喜(東レ経営研究所 主任研究員)
小﨑恭弘(大阪教育大学 教育学部 准教授)

“イクメン”の波に乗り切れない。どうしたらいい?

勤める会社は、育休や時短勤務の取得が進められ、制度が整ってきています。仕事と育児の両立をすすめるために、同僚と意見を交わすこともあります。
仕事と育児の両立に積極的な同僚たちを見ていると、自分が“イクメン”という流れに乗り切れていない気がして、焦っています。
“イクメン”になりたいと思ってはいるのですが、息子になかなかなついてもらえず、やる気をそがれてしまいます。どうすれば“イクメン”になれるのでしょうか?
(8か月の男の子をもつパパより)

まずは週1回でもいいので、早く家に帰る

回答:渥美由喜さん

育休や時短勤務の取得が整えられていて、とてもいい会社に勤められていると思います。

今の日本全体に言えることなのですが、仕事と育児が両立できる制度が整っていても、「上の世代の管理職の方の理解がない」というように、風土が整っていない場合があります。
しかし、中長期的に見ると「効率よく仕事を終える人」「子育てをしている人」が、評価される時代になります。子育てをする人は、職場の女性や介護などをする人の気持ちもわかるようになります。
子どもが小さいうちは、時間と手をかけることが大事です。
まず初めにできることは、週1回でもいいので、早く家に帰って、お子さんといられる時間を勝ち取ってください。それを続けていくと、家事や育児において、できることが増えていきます。

回答:小﨑恭弘さん

誰のために“イクメン”になりたいのか考えてみてください。他の人に勝つためではなく、ママやお子さんのためになるものですよね。
あまり人と比べずに、何をしたら、ママと子どもが喜んでくれるかを考えましょう。

お子さんがなついてくれないとのことですが、ミルクをあげるときや、オムツを替えてあげるときなどに、「ミルク飲んでお腹いっぱいだね」「オムツを替えてすっきりしたね」というように、言葉がけをしてみてください。子どもには、言葉がけが必要です。
言葉の意味が伝わらなくても問題ありません。パパの声や抱き心地、匂いなど、子どもの体に伝えていくことが大切です。
言葉がけと合わせて、子どもに視線を合わせて笑いかけてあげるといいですよ。


ママとの育児能力を比べ落ち込んでしまう。どう解消したらいい?

出産という感動的な瞬間を味わってから、自分はこの2人を支えていく、そして、妻が笑っているような家庭を作れるようにサポートすることが息子のためになると思い、自分のできることは全部したいと思うようになりました。
でも、妻がどんどんママとして成長していく中、自分はパパとして成長できていないなと感じます。
仕事から帰ってくると、妻と息子の家庭でのチームワークが完成されていて、びっくりします。ハイスピードで流れるようにさまざまなことが行われていて、そこに、手伝おうと思って入っていくのですが、自分の力が及ばず、スムーズな流れを遅らせてしまっているような感じがして、ふがいなく感じます。
自分がやって、足手まといになるよりも、ママが全部やった方が早いのではないかと思い、ブルーになって落ち込み、それでも頑張って育児や家事を手伝うのですが、落ち込み⋯と負のスパイラルです⋯。
(11か月の男の子をもつパパより)

ママと自分を比べない

回答:渥美由喜さん

女性の場合は、産後うつと言って、妊娠・出産後にブルーになってしまう期間がありますが、最近は男性でも、育児を手伝いたいのにうまくいかず、ブルーになってしまう男性が増えてきています。
これは子育てするからこその悩みで、パタニティブルーと言います。

パタニティブルーとは?
近年、男性の産後うつ「パタニティブルー」を経験する人が増えています。
妻の出産に伴い、父親としての責任や不安が大きくなり、心身に支障をきたす状態のこと。

ママと自分を比べないようにしてください。

ママも最初から完璧なわけではない

回答:小﨑恭弘さん

ママは完璧に家事をこなしていると思われるかもしれませんが、ママも最初から完璧にできたわけではありません。子どもが生まれてから、毎日一生懸命子育てをして、今があるのです。
そんなママとパパの間に、技術の差があるのは当たり前です。その差を一気に埋めるのは難しいため、自分のできることからやってみるといいと思います。

そして、ママにも少しお願いがあります。ママには、自分の思う育児をやるために、さまざまなルールがありますよね。そしてそのルールは、経験をつむにつれ、自分がやりやすいように変わっていくこともあります。パパはそのルールについていけないこともあるので、そのルールを丁寧に伝えてくれると、パパも育児に取り組みやすくなります。

家事の「見える化」をする

回答:渥美由喜さん

家事は「見える化」をするといいと思います。
例えば、中身を写真に撮る、またはメモをして貼っておくなどして、ママに何度も聞かなくてもいいようにしておきましょう。そうしておくと、お子さんが大きくなったときに、お子さん自身が片づけられるようになる手助けにもなりますよ。


子どもに「パパよりママ!」と言われてしまう。どうすればいい?

家事・育児をがんばっているのですが、報われないと感じることがあります。
息子は2歳をすぎ、自分の意思をはっきり伝えるようになりました。外で遊ぶときなど、息子の言うことに根気よく付き合うようにしています。
でも、外では楽しく遊んでいたのに、家に帰ってオムツを替えようとすると、「ママがいい!」と泣き叫んで嫌がることがあります⋯。
(2歳4か月の息子をもつパパより)

パパとママの子どもへの関わりは違って良い

回答:小﨑恭弘さん

子どもを育てるには、「母性」と「父性」の2つの力が必要だと考えています。「母性」は母親のもの、「父性」は父親のものではなく、パパ・ママはそれぞれの中に「母性」と「父性」の両方をあわせ持っています。

いまのお子さんの気持ちでは、生きていく上でママが一番大事だと思っているのかもしれません。
しかし、子どもはどんどん変化していきます。短期的に見ると、落ち込んでしまうかもしれませんが、子どもが成長するにあたり、社会や世界のことを伝える役割があると思います。

私にも似たような経験がありますが、子どもにはさまざまな経験をする場があるため、パパとママの子どもへの関わりは違って良いと思います。

回答:渥美由喜さん

いずれ、必ず報われます。
私も男の子が2人いるのですが、自分が好きな本の読み聞かせをしていました。
すると、子どもが成長して、「気球に乗りたい」「いかだに乗りたい」「ツリーハウスに行ってみたい」というように、読み聞かせていた本に感化されたのか、自分が好きなものに子どもが興味を持つようになりました。そうなると、夏休みは外遊びしようということで、妻を除いて、父と子だけで遊びに行くことも多かったです。
パパが得意な遊びに引き込むのもひとつの手かもしれません。

パパ・ママのチームワークを意識

回答:小﨑恭弘さん

例えば、ママが家事をしていて、ぐずった子どもをパパにあやしてもらう。でも子どもは嫌がってしまう。そのようなときは、パパが代わりに家事をする。というように、ふだんからパパ・ママのチームワークを意識するといいと思います。


すくすくポイント
「イクメンがツラい!」と感じてしまう男性が増えてきている?! 現代の日本社会の男性の現状とは?

男性学という視点から、男性の生きづらさについて発信している田中俊之さん(武蔵大学 社会学部 助教 [社会学])にお話を伺いました。

子育て中の男性たちが共に抱えているのが「妻の役に立てていないのではないか」「子育ての役に立てていないのではないか」のような「無力感」です。

どうしてパパはツラいの?

現状の“イクメン”は理想が高すぎるからだと思われます。
ちゃんと仕事をしながら、家事・育児もしっかりするというのは、普通の男性にはとても厳しいことです。
これまでの長時間労働など、働き方が変わらない状況では、仕事と家事育児の両立は重荷です。

仕事と家事育児の両立は、これまですでに多くの女性が抱えてきた悩みです。
その同じ悩みが、今、男性に降りかかってきていて、男性がどのように変わっていくかが問われているのではないかと思います。

解決方法は?

抱えている仕事の状況や会社の制度もさまざまなので、一般論ではあまり考えない方がいいと思います。
各々の職場で、定時に帰れるのか、有給休暇が取れるのか、と組織の中で他の人と協調しながら、今の働き方を見直していくしかないと思います。
自分がいま置かれている状況で、できることから始めてください。

また、男性はツラいことや悩みをこれまでに言ってこなかったと思いますが、それを正直に吐き出すと課題と解決策が見えてくると思います。
男性が、胸の内に抱えている悩みを明らかにすることで、社会全体でどのようにしていくとよりよくなるのかという議論が進んでいけばいいなと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです