危ない! 子育てヒヤリ・ハット

すくすく子育て
2016年9月3日 放送

「ヒヤリハット」とは、一歩間違えたら重大な事故になったかもしれない、ヒヤリとしたり、ハッとしたりした経験のこと。子どもの思いもよらない行動に、「ヒヤリ」「ハッと」したことありませんか?
今回は子育て中のヒヤリハット体験をご紹介。家の中の危険を見直していきましょう!

「すくすく子育て 危ない!子育てヒヤリ・ハット」

専門家:
山中龍宏(NPO法人Safe Kids Japan理事長 小児科医)

窒息に関するヒヤリ・ハットは?

※生まれてから、生後4か月ごろまでの赤ちゃんの事故死で、一番多いのが窒息です。

ママの体験談

5か月になり、寝ている間に寝返りができるようになった娘。
寒いだろうと思ってタオルをかけてあげたのですが、目を離したすきに、タオルが顔にかかっていたので、すぐにはぎとりました。
おそらく自分で足をバタバタさせたので、タオルが顔にかかったのだと思います。
これが2回ほどあったので、これはまずいと思い、タオルなどの顔にかかって窒息するようなものは置かないようにしました。
でも、寝返りができるようになったため、夜のうつぶせ寝が心配です。

回答:山中 龍宏さん

人口動態統計という死亡統計を見ると、日本では、年間70~80人のお子さんが、窒息でなくなっています。
窒息の原因としては、「吐いたミルクを詰まらせる」「布団などで顔を覆ってしまう」などが報告されています。

対策
やわらかい布団はなるべく避けた方が良いです。
頭の周りに口を覆うような、スタイやぬいぐるみなどは置かないようにしましょう。

また、夜のうつぶせ寝が心配とのことですが、毎晩うつぶせになったお子さんを、あおむけにさせてあげることはとても難しいです。
硬めの敷き布団を使用するなどして、口を覆うようなものを頭の周りに置かないようにしていけばいいと思います。

危険な状態の見極め方法
息をしているかのチェックはもちろん大切ですが、顔色も見るようにしてください。
窒息の場合は、顔色が青い、または白いです。
そのような場合は、119番をしてください。


転倒・転落に関するヒヤリ・ハットは?

※「はいはい」「つかまり立ち」「あんよ」と自分で動く範囲が広がるにつれ、転倒や転落は増えます。好奇心から思いもよらない事故につながることがあります。

ママの体験談(1)

毎日お風呂の後に使っている綿棒。
1歳4か月の息子は、棚に隠してある綿棒をいつのまにか手に持って、耳の中を触ったり、口にくわえたりします。その状態で転んだら大変だと思い、取り上げようとするのですが、泣き出してしまいます。
気が付けば、息子の背が伸びていて、綿棒の棚に手が届くようになっていたり、ごみ箱から探し出して来たりと、対策をしていても日々追いつかなくて困っています。

ママの体験談(2)

1歳9か月の娘は台所が大好きです。でも、危ないものもあるので、台所に入ってほしくありません。
そこで、入れないようにする対策として、ベビーサークルを導入したのですが、娘は柵によじのぼり、外側に頭から落ちてしまいました。
最初はとても役に立っていたのですが、いつのまにか、柵に足をかけられることを学んだようで、それが転落につながってしまいました。
それ以来、テレビを見せている方が安全のような気がして、ベビーサークルは使っていません。

回答:山中 龍宏さん

危ないものを持たせないようにする対策
危ないものを保管するときは、下記の基準を参考に、子どもの手が届きにくいところに保管してみてください。

<子どもの手が届く範囲(目安)>
▼1歳
「台の高さ+奥行き」の合計が90cmを目安にしてください。
例えば、高さが70cmのテーブルの場合は、奥行き20cmまで届きます。

▼2歳
「台の高さ+奥行き」の合計が110cm。

▼3歳
「台の高さ+奥行き」の合計が120cm。

しかし、いずれの場合も、テーブルの近くに踏み台などがあると登ることができるため、手が届いてしまう場合があります。
よじ登れる場所を作らないようにすることも大切です。

綿棒や歯ブラシ、おはしなどの長いものを持ち歩くことは、とても危険です。
持ったままで歩いて転ぶと、のどをついたりしますので、保管場所には気を付けましょう。

その中でも一番多いのは、歯ブラシです。夜に歯みがきをして、歯ブラシをくわえたまま、布団で転んだりして、歯ブラシがのどに刺さってしまう。
最近では、そのような危険性を少なくするために、のどの奥まで達しないガードがあるような歯ブラシや、のどに突き刺さっても曲がるようなタイプのものも販売されています。そのようなものを使う方が安全です。

危険な状態の見極め方法
頭を強く打って、「意識がない」「けいれんを起こす」「出血がある」というような場合は緊急事態のため、救急車を呼んでください。

頭を打っても「泣いたら大丈夫」とよく言われますが、そうとも言いきれません。
頭を強く打ったときは、まる2日くらいは症状を観察してください。「元気がない」「痛みが続いている」「吐き続ける」という症状があれば、医療機関を受診すべきだと思います。
頭を打った日は大丈夫のように見えても、1日経った後に体調が悪くなることもあるため、気を付けて見てあげるようにしてください。


赤ちゃんのための製品で危ないことがあったときは?

「スイング式のゆれるタイプのチェアにつかまり立ちをして転倒」「ベビーカーのハンドルに荷物をかけすぎて倒れた」のように、赤ちゃんのための製品で危ないことがあると、親の不注意や親の責任と思いがちです。

確かに、そのような場合もあるのかもしれませんが、それだけで済ますのではなく、製品がより安全なものになるように、情報を共有することも重要です。
クレームではなく、「どこで」「どういう状況で」「何が起こったのか」という詳しい情報を、メーカーや各自治体の消費生活センターなどに伝えましょう。

下記の消費者ホットラインを通じ、自治体の消費生活センターなどで相談を受け付けています。

消費者庁 消費者ホットライン
電話番号:188番

回答:山中 龍宏さん

製品を使っていて起こった子どもの事故は、1件だけということはありません。同じような発達段階の子に同じような事故が起きています。
それを、多くのお母さんたちは、自分の不注意だと思い伝えないことが多いため、なかなか製品の改善につながっていないのが現状だと思います。
毎日の育児で大変だとは思いますが、製品にまつわる事故があった場合は、可能な限り、メーカーや各自治体の消費生活センターなどに伝えるように心がけましょう。


誤飲に関するヒヤリ・ハットは?

※誤飲は、寝返りができる5か月ごろから始まります。ピークは、手に取ったものは何でも口に入れる7か月から10か月ごろまで。1歳半ごろまではよく起こります。

ママの体験談(1)

現在2歳になる娘は、1歳2か月のころにたばこを誤飲しました。
突然いつもとは違う娘の鳴き声がして、かけよってみると、たばこが娘の近くに落ちていて、かじった形跡がありました。
あわてて口の中の葉っぱを取り除いて、急いで病院に連れて行きました。
そのとき、水を飲ませてしまったのですが、あとから調べると、たばこの誤飲のときは、水を飲ませてはいけないことを知りました。今後は気を付けようと思いました。

ママの体験談(2)

うちの子どもは、8歳、5歳、10か月になる娘の3姉妹です。
お姉ちゃんが宿題に夢中になっていると、消しゴムのカスや鉛筆の折れた芯、消しゴムが丸ごと落ちていることがあります。それを10か月になる末娘が手に取って口に入れようとしているのを見ると、ヒヤッとします。
お姉ちゃんにも言い聞かせて、日々気を付けてはいるのですが、夕飯の支度のときや、真ん中の子を見ているときなど、どうしても難しいときがあります。

回答:山中 龍宏さん

対策
最大開口直径という、口を最大に開けたときの直径があります。3歳の子の場合、その直径は39mmです。これより小さいものは子どもの口に入るため、誤飲の可能性があると思ってください。
おおよそ、大人の親指とひとさし指で作った丸の大きさのものは、子どもの口に入ると思った方が良いです。

7~10か月の間の子どもは、ほとんど何でも口に入れてしまいます。
小さい子は口に入れても少量なため、危険性はほとんどありませんが、以下のものは、口に入れるととても危険です。これらをしっかり覚えておきましょう。

<口に入れると特に危険なもの>

  • ボタン電池
  • 強酸性、強アルカリ性製品(漂白剤、カビ取り剤、トイレの洗剤など)
  • 石油製品(灯油、マニキュア、除光液など)

たばこの誤飲について
たばこを誤飲してしまったときは、吐かせたり、かき出したりして、体の中に入れないようにしてください。心配であれば医療機関を受診しましょう。受診の際は、「何を」「どのくらい」飲んでしまったのか、きちんと医師に伝えてください。

たばこの誤飲は、昔は危険だと言われていましたが、最近では、「子どもが飲むのは少量である」「たばこの葉には吐かせる作用がある」ということから、危険度は、これまで言われてきたほど高くないとされています。
しかし、誤飲の問い合わせで一番多いのはたばこです。
カバンに閉まっていても、子どもは気が付かないうちに、カバンを開けられるようになっています。保管場所には注意しましょう。


ヒヤリ・ハットを防ぐために大切なことは?

回答:山中 龍宏さん

子どもの事故は、子どもが何か月になったらどんな事故が起こるか、ある程度わかっています。
そして、子どもの事故に関係が深いのは、子どもが発達することです。昨日できなかったことが、今日はできるようになるため、やけどしたり、誤飲したりするのです。
このようなヒヤリ・ハットを防ぐために大事なことは、予防策をとることです。「事故がおこるかもしれない」「重症度が高く病院にかからなくてはいけない事故の可能性もある」と常に考えて、前もって、子どもの周りの環境や製品をととのえて予防策を取ってください。


すくすくポイント
死に至る可能性や重症につながるヒヤリ・ハットは?

誤飲

誤飲の中でも、とくに「コイン型、ボタン型電池」は危険です。
これらは、親が知らないうちに飲んでしまうと、死に至る可能性があります。

<実験>
魚肉ソーセージにコイン型電池を挟んで、しばらく置きます。

すると、1時間後には、ただれて真っ黒に。

「コイン型、ボタン型電池」は、子どもが飲み込むと、食道に張り付いてしまいます。
そして、その状態で何日も経つと、食道に穴が開いてしまうこともあるのです。
その上、飲み込めてしまうサイズのため、子どもが飲み込んだことに親が気づきにくいことも、とても怖いです。

誤飲してしまっても気が付けるように、おもちゃやリモコンなどは、「どこで」「何個」使っているか、把握しておきましょう。
また、使用器具のフタやねじは、取れないように、しっかり締めておきましょう。

★誤飲した場合の相談先

<公益財団法人 日本中毒情報センター 中毒110番>

  • 一般市民専用電話(情報提供料は無料、応急手当や受診の必要性のアドバイス)
    (大阪) 072-727-2499 365日 24時間対応
    (つくば) 029-852-9999 365日 午前9時~午後9時対応
  • たばこ専用電話(情報提供料は無料、テープによる市民向けの情報の提供)
     072-726-9922 365日 24時間対応

※中毒110番は、化学物質(たばこ、家庭用品など)、医薬品、動植物の毒などによって起こる急性中毒について、実際に事故が発生している場合に限定して情報提供しております。
異物誤飲(プラスチック、石、ビー玉など)や、食中毒、慢性の中毒(アルコール中毒、シンナー中毒など)や常用量での医薬品の副作用は受け付けておりません。
※詳細は、ホームページ( www.j-poison-ic.or.jp )の 中毒110番・電話サービス をご参照ください。

溺れ

子どもは、水深5cmでも溺死する可能性があります。
お風呂の残り湯はためずに流しておきましょう。
防災用としてためておくのも、子どもが小さいうちは我慢してください。

そして、一緒にお風呂に入るときはなるべく目を離さない、洗濯機の近くに踏み台を置かないなどの対策をしてください。

やけど

蒸気の出る炊飯器や、倒れたら熱湯がこぼれる電気ケトルなどの電化製品は、子どもの手の届かないところに置いてください。

コードも危険です。子どもが引っぱったり、子どもの足が引っかかることがないように注意しましょう。

ひとつの大きな事故の陰に、たくさんのヒヤリ・ハット体験があるといわれています。
さまざまな事例を知ることで、子どもの周りには危険なものもあることを、意識するようにしましょう。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです