うちの子 乱暴?

すくすく子育て
2016年7月23日 放送

気に入らないことがあると、ものを投げたり、親やお友達をたたいたり⋯。「うちの子は、ちょっと乱暴なのかもしれない」と心配になりますよね。
今回は子どもの乱暴なふるまいについて、様々な疑問にお答えします。

「すくすく子育て うちの子 乱暴?」

専門家:
岩立京子(東京学芸大学教授 発達心理学 幼児教育)
遠藤利彦(東京大学大学院教授 発達心理学)

思い通りにならないとたたくのは、乱暴だから?

息子はここ1、2か月で、何か気に入らないことがあると、泣いて騒ぐようになりました。
自分の思い通りにならないと、親をにらみつけ、ものを投げたり、たたいたりする行動が目立ちます。
まだ幼稚園に通って集団生活をしているわけではないので、どこでたたいたり物を投げたりすることを覚えたのか不思議です。
思い通りにならないとたたくのは、もともと息子が少し乱暴だからなのでしょうか?
(2歳の男の子をもつママより)

たたくことで、自分の思いを訴えている

回答:岩立京子さん

大声で騒いだり、親をたたいてしまうのは、自分の思いを訴えるためです。
たたくことで、子どもは「自分の気持ちを分かってほしい」と訴えています。
子どもの思いが伝わらなかった場合は、「なんでわかってくれないの?」と、最終的に泣いて訴えているのだと思います。

今は、たたいたり、大声を出すことで、自分の思いを訴えていますが、しばらくすると、他の表現方法を理解できるようになると思いますよ。

大人から見れば乱暴でも、子どもにとっては何らかのメッセージ

回答:遠藤利彦さん

大人からすると、子どもが乱暴なことをしているように見えても、子どもにとっては、自分の思いを伝えるためにしている行為です。

2歳という年齢は、いわゆる自我というものが出来上がってくる年齢です。

「本当はこうしてほしい」という思いがありますが、大人のように多くの言葉を使って自分の思いを伝える力がないため、訴えることができません。
そのため、徐々にフラストレーションが溜まってしまい、結果、からだを使った表現をしてしまうのだと思います。
なんらかのメッセージを伝えたいんだなと思ってあげてください。


外でほかの子どもをたたかないようにするには、どのようにしつけたらいいの?

外に行くと、他の子どもにケガをさせてしまうのではないかと心配です。
家の中なら、子どもが親をたたいても対処できますが、外ではそうはなりません。
他の子どもに暴力をふるわないようにするためには、どのようにしつけたらいいのでしょうか?
(2歳の男の子をもつママより)

家庭の中でも根気強く伝える

回答:岩立京子さん

外で他の子どもをたたいてしまうのではないかと心配になりますが、その場合は、家にいるときに根気強く「暴力はだめだよ」と注意し続けるようにしてください。

「家ではかまわないが、外に出たらダメ」と注意するのは、2重基準となるため、家にいるときにいくら子どもに言い聞かせても、理解できず、混乱してしまいます。
そのため、家でも外でも同じように、「暴力はだめだよ」と言い聞かせる必要があります。

子どものいざこざは手加減や共感を覚える機会

回答:遠藤利彦さん

子ども同士のいざこざやちょっとした取っ組み合いというのは、手加減や、ケンカのあとに「やりすぎてしまったな」と反省することを覚える、とてもいい機会でもあります。
周りの子どもに乱暴なふるまいをしてしまうのは、自分の子どもだけでなく、他の子どもも同じような状態の可能性もあるため、不安に感じ過ぎず、ある程度までは「お互いさまだ」と考えるといいと思いますよ。

「子どもに『暴力はダメだよ』と家で言い聞かせ、理解できるようになるまでは、外で遊ばせられない」ということはありません。万一、他の子どもとケンカしてしまっても、親は、「これを機会に子どもは学んでいるんだ」と考え方を変えるのもいいと思います。


周りの子どもとのトラブルを避けるためにはどうすればいいの?

息子は警戒心が強いのか、他の子どもが息子のおもちゃに興味を持ち、「見せて!」と声をかけると、威嚇するように乱暴なことをしてしまいます。
このままでは友達ができなくなってしまうのではないかと心配です。
周りの子どもとのトラブルは、どのように対処すればいいのでしょうか?
(2歳8か月の男の子をもつママより)

言葉に置きかえて、安心させる

回答:岩立京子さん

子どもが周りの子どもを威嚇してしまったときは、親は、「そんな怖い顔をしなくても大丈夫だよ」と言葉に置き換えて、安心させる言葉がけをしましょう。
また、周囲の子どもにも「これは○○ちゃんのだよ。」などと言葉で伝えることも大事だと思います。

この年頃の子どものトラブルの原因は、「場」か「もの」です。「自分のものを取られそうになったら威嚇する」というのは、子どもにとっては普通の行動です。
どのような子どもでも、魅力的なおもちゃがあれば、みんながそれに寄ってしまうため、トラブルになってしまう可能性はあります。魅力的なおもちゃなどは、トラブルになる前に、「これは大事、大事だよね」としまっておく工夫もされると良いかもしれません。

ものに対する所有の意識がはっきりしてくる時期

回答:遠藤利彦さん

この年頃の子どもは、ものに対する所有の意識がはっきりしてきます。最初に使ったおもちゃに対しても、「最初だった」と言う理由から、自分のものという意識になってしまいます。
そういった意識の強い子の多くは、ときどき、警戒心が強くなってしまい、「周りの子におもちゃを取られるのではないか」と威嚇してしまうときがあります。


乱暴なことをした子どもに、どう注意すればいい?

以前、娘が友だちにおもちゃを取られてしまったときに、力ではかなわないと考えたのか、相手の子にかみついたり、顔をつねってしまいました。そのとき私は、相手の親のことを考えてしまい、乱暴なことをした娘を、いつも以上に強く叱ってしまいました。
しかし、娘からすると、「なぜ、おもちゃを取られた自分が怒られるのか」や、「ママは私の味方ではないのか」と考えるのではないかと思いました。
こうしたとき、どのように注意するといいのでしょうか?
(2歳7か月の女の子をもつママより)

子どもの気持ちを認めた上で、やり方はダメだとはっきり伝える

回答:岩立京子さん

「おもちゃを取られて嫌だったね」と、まずは子どもが思っている気持ちを認めてあげましょう。そのあとに、やり方については「でもたたくのはダメだよ」「お顔はなしよ」と、はっきり伝えるといいと思いますよ。

子どもは、おもちゃを取り返そうとして、相手の子どもに手を上げています。それは自然な流れです。
しかし、子どもが手を上げたことに対して、ママが叱ってしまうと、子どもは、「おもちゃを取られたから、たたいたのに、ママに怒られた。ママは私の味方じゃないのかな。」と感じると思います。
たたいたことに叱るよりも、まずは子どもの気持ちを認めてあげてから、注意することが重要です。

また、「こうやって叩いたら痛いでしょ?」などと親が子どもに痛い思いをさせてしつけるやり方は、一般的には、効果的な方法ではないと言われています。
親は子どもに対して、強くたたけるわけではありません。
たたくとしても、多少手加減をしてしまうため、子どもは、「あまり痛くないから、平気だ」と感じて、反省することはありません。
痛みで覚えさせるよりも、相手がたたかれて、どんな気持ちかを理解させ、納得させる言葉がけが大切です。

成長するにつれ、言葉で伝えたほうが効果的な方法だと分かってくる

回答:遠藤利彦さん

成長するにつれ、身体ではなく、言葉で相手に伝えたほうが効果的なのだと、子どもは徐々に気付くことができるようになるため、あまり心配する必要はありません。
今は、効果的なコミュニケーションの方法として、体で訴えています。しかし、それが大人の目線からすると、「相手の弱みを狙って乱暴している」ように見えてしまうだけなのだと思いますよ。


乱暴な言葉づかいをやめさせるには、どのように注意したらいいの?

上の子は、機嫌が悪くなると、言葉づかいが荒くなります。
弟が、自分のおもちゃを取ると腹を立て、手をたたくこともあります。
どうしてこのような言葉づかいになったのか考えると、父親が怒ったときに話す言葉づかいをまねしているのだと気づきました。
子どもの乱暴な言葉づかいをやめさせるには、どうしたらいいでしょうか。
(3歳7か月の男の子と1歳1か月の男の子をもつママより)

子どもは親のまねをするため、親の言葉づかいを改める

回答:岩立京子さん

子どもは親の様子をよく見て、聞いています。
親が乱暴な言葉づかいをしているのならば、子どもはそれをまねしてしまいます。
親は大人に対して言えないようなことを、子どもには言ってしまいがちです。
子どもの乱暴な言葉づかいを直したいのであれば、親も直すように意識してください。

弟が生まれたということもあり、上の子は少しばかり赤ちゃん返りするなど、様々な変化がある時期だと思います。
加えて、下の子は、お兄ちゃんのおもちゃを取ってしまうなどと、活発なため、上の子のパーソナルスペースに入っているようです。
上の子を注意するときは、上の子の気持ちをまずは認め、プライドを支えてあげるような注意のしかたをするといいと思います。

乱暴な言葉づかいは「お兄ちゃんの役割」の芽生えの面も

回答:遠藤利彦さん

上の子には、自分が「お兄ちゃん」としての自覚が上の子にはあるのかもしれません。弟が悪いことをしたら、「お父さんのように叱らなくては」と思い、お父さんの口調をまねしている可能性があります。

心理学では、「観察学習」や「モデリング」と言って、自分の好きな人ほど、あこがれの対象としてモデルにするというものがあります。子どもが、お父さんのことを大好きであればあるほど、お父さんの口調をまねするなどということもあります。
子どもが乱暴な言葉づかいをしているのは、「お父さんにあこがれているからなのだ」と考え、子どもを叱るときはその点も注意してあげるといいと思いますよ。


集団行動が苦手な子、幼稚園は大丈夫?

最近プレ幼稚園に通い始めましたが、集団行動が苦手なのか、泣いて手がつけられません。
園の中でもずっとママがだっこしているような状態で、来年から幼稚園に通えるようになるのか心配です。
(2歳10か月の男の子をもつママより)

ママがいっしょに楽しむ姿を見せる

回答:岩立京子さん

よくあることだと思います。
どちらかというと、集団が苦手なお子さんだと思いますので、集団の場所を楽しめないのだと思います。
プレ幼稚園などに通うのでしたら、ママ自身が楽しんで参加し、楽しんでいるモデルをしめすとか、無理に子どもだけを参加させるようにはしないほうが良いと思います。

お子さんによって順応するスピードが違う

回答:遠藤利彦さん

お子さんには、割とはやい段階からいろんな個性があります。
新しい場所にすぐ慣れてしまうという気質を持ったお子さんがいる一方で、新しい場所には最初警戒して、なかなか入り込めないというお子さんもいます。
それぞれ順応するスピードは違うと思いますので、少し時間がかかるのかもしれません。
ただ、時間がかかるだけであって、なじめないということでは絶対ないので、幼稚園に通いはじめると、幼稚園の中に安心できる場所や安心できる人など「安全基地」が出来てくると思います。あせる必要はないと思います。


すくすくポイント
「ちょっと乱暴な遊び」の意外な役割

子どもの乱暴な遊びといえば、「取っ組み合い」や、「戦いごっこ」などがあります。
危ないからやめさせたいと思っているママやパパも多いのではないでしょうか?

今回は、一見危なそうに見えるこの遊びが持つ、意外な役割を紹介します。

動物の赤ちゃんは、じゃれあったり、追いかけっこしたり、かみつきあったりしてよく遊んでいますよね。
実は、ほ乳類は「スキンシップのある、ちょっと乱暴な遊び」を通じて、さまざまな感情、感覚を制御する能力を培うと考えられています。
同じほ乳類である人間にとっても、子どものときの「ちょっと乱暴に見える遊び」は、豊かな感情表現や、行動の調整能力などを身につけるために必要だと言われています。

ある研究では、「くすぐり遊び」や「高い高い」などの、笑いながら、少し荒っぽいスキンシップを楽しんだ子どもたちは、そうでない子どもたちよりも、自分の気持ちや欲求、行動をうまく調整できる傾向があるという結果が出ています。
(名古屋市立大学大学院 中川 敦子教授の研究より)

親から見ると、ちょっと乱暴に見えてしまう遊びも、子どもにとっては、感情や行動をコントロールしていくための、学びの時間なのかもしれませんね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです