知りたい! 心の育ち

すくすく子育て
2016年6月25日 放送

まだまだ赤ちゃんと思っていたわが子が、「人形相手に優しいそぶりを見せる」「納得いかないことにかんしゃくを起こして自己主張する」のように、子どものこころの成長を感じることありませんか。
今回は、子どものこころと感情がテーマです。
こころの発達を知ると、子どもを見る目が少し変わりますよ。

「すくすく子育て 赤ちゃん・知りたい!心の育ち」

専門家:
汐見稔幸(白梅学園大学学長 教育学)
遠藤利彦(東京大学大学院教授 発達心理学)

かんしゃく泣きは放っておいても大丈夫?

息子は1歳前ぐらいから、かんしゃくがすごくなり、泣き始めると1時間以上も泣いていることがあります。
おやつの時間じゃないのに、「早くおやつが食べたい」とおねだりして泣く、おやつのおかわりがもらえないと泣くというように、食べることに関してのかんしゃく泣きが多いです。

泣いている気持ちはわかるため、「そうだよね」と共感しながら声かけをしているのですが、そうしたところで泣き止んでくれないため、最近は泣きやませることをあきらめて、放置しています。

かんしゃく泣きは放っておいても大丈夫でしょうか?
(1歳9か月の男の子をもつママより)

ある程度、放っておいても大丈夫。タイミングを見て気分転換をする。

回答:汐見稔幸さん

かんしゃく持ちというのは、生まれつきの「脳の活動のタイプ」で、そのようなタイプのお子さんはある一定の割合で生まれてきます。
わかりやすく言うと「おこりんぼう」です。
アメリカでは、「Difficult child」と言って、日本語に訳すときは「手のかかる子」といいます。
このタイプの子は、「我慢すればなんとかなる」ということを学習するのに、時間がかかると思います。

また、そういうタイプの子どもは泣きはじめると、泣いていることを自分でコントロールすることが苦手なため、ある程度泣かせておくのはひとつの方法だと思います。
そして、あるタイミングで、気分転換してあげると、泣き止むことがあります。そのタイミングはお子さんによって異なるため、様子を見ながら、考えていきましょう。

かんしゃく持ちになってしまったのは、自分のせいだと思うお母さんもいるかもしれませんが、そんなことは決してありません。
かんしゃくは、子どもの持つ特性で、一定の割合で生まれるものです。
またこのようなタイプのお子さんは感性が豊かな芸術家タイプともいえますよ。
自分の感覚にとても素直で、それを簡単には変えないぞ、というタイプだと思うといいですね。

かんしゃくは、「個性」のようなもの

回答:遠藤利彦さん

かんしゃく持ちなどのことを、心理学では「気質」という言葉で扱います。
これは、小さい子どもにおける「個性」のようなものです。

かんしゃくは、「眠い」「空腹」などの生理的状態に左右されやすいのだと思います。
大人でも、お腹がすいていると、無意識に機嫌が悪くなったり、疲れているときに声をかけられると怒ってしまったりすることがあると思います。
小さいころのかんしゃくは、よほど極端なものでない限り、大人まで続くことは少ないと言われていますよ。

外出先でかんしゃくを起こした場合はどのように対処すればいい?

回答:遠藤利彦さん

お子さんが外出先でかんしゃくを起こすこともあると思います。
そのようなときは、お気に入りのものを持たせたり、「今はダメだけど、おうちに帰ったら、もっとおいしいお菓子があるよ」というように、「今、我慢することで、先にもっといいことがある」といった声かけをするのがいいと思います。
このような、お子さんを先に導く工夫をすると、お子さんの発達にもプラスに働くのではないかと思います。

回答:汐見稔幸さん

人間は「我慢しなさい」と言って我慢できる生き物ではありません。

「我慢をしたらもっといいものが手に入る」というように、自分にとってプラスになることがあって初めて、我慢ができるのです。
「今、我慢することで、先にもっといいことがあることを示す」といった方法で、我慢を練習していくのがいいと思います。


子どもの悲しい気持ちにどのように向き合えばいい?

娘は叱られたあとに、悲しい感情を発散するためか、髪をひっぱったり、目をかいたりします。
子どもの中に悲しい気持ちも必要だとは思うのですが、親としては同調してあげるのがいいのか、気をそらしてあげるのがいいのか、どちらの方がいいのでしょうか?
(2歳2か月の女の子をもつママより)

回答:汐見稔幸さん

悲しみにもさまざまな種類があると思います。

お母さんに叱られて悲しそうにしている場合は、お母さん自身が「叱りすぎたな」と思ったら、子どもに謝り、お母さんの気持ちを伝えてあげてください。

また、ペットが死んでしまったときのような場合は、そっと見守りながら悲しみの時間を共有してあげましょう。
そして、その悲しみの解消法を子どもと一緒に考えましょう。

悲しさとしっかりと向き合うことで、子どものこころが成長していきます。

回答:遠藤利彦さん

子どもが体を触ることで、感情調節することは不自然ではありません。
例えば、ハイハイもできない時期の子どもでも、以下のような2つの方法で感情をコントロールしています。

(1)視線を動かす
違うものを見ることで、気分を晴らします。
初めに出てくる感情の調節方法です。

(2)体や髪を触るなどして、自分の体を刺激する
視線を動かすのと同時期に出てくる方法で、これらの動作で気晴らしをして感情を調節しています。

成長するにつれて、感情をコントロールする方法のバリエーションがどんどん増えていきます。


優しい心はどのように育つ?

娘は、自分のおやつのバナナを、くまの人形に分けて与えることがあります。また、人形の歯を磨いてあげることもあります。教えていないのに、突然このような「やさしい行動」をするようになりました。
少しずつ人に優しくする感情が芽生えてきているんだなと思うのですが、子どもの優しい心はどのようにして育つのでしょうか?
(1歳4か月の女の子をもつママより)

人に優しくしてもらうことで、さらに優しさが育つ

回答:遠藤利彦さん

人間は優しい気持ちを持って生まれてくるという「性善説」、いじわるな気持ちを持って生まれてくるという「性悪説」という2つの説がありますが、心理学における最近の研究では、「性善説」が主流になっています。

生まれながらに優しい気持ちは持っているけれど、自分が困って泣いているのに何もしてもらえなかったり、泣くことでつねられたり、ぶたれたりすることがあると、その優しい気持ちが徐々に薄れてしまうのではないかと思います。
人に優しくしてもらうことで、さらに優しさが育つのだと思います。

子どもがやりたいことにできるだけ共感してあげる

回答:汐見稔幸さん

優しさを育てるために、親ができることとしては、子どもがやりたいことにできるだけ共感してあげることです。
特別に何かをしてあげる必要はありません。

例えば、ものを投げたそうにしていたら、「投げたいんだね」と言いながら、ボールを渡してあげたり、「それが好きなんだね」と言いながら見守ってあげましょう。
危ないことをしそうな場合は、止めてください。
子どもがやりたいことにできるだけ共感してあげることが大切ですね。

優しさを育てる夫婦のありかたは?

回答:汐見稔幸さん

1歳前ぐらいの赤ちゃんの前で、夫婦が大声でケンカをすると、赤ちゃんが泣き出すことが確かめられています。
これは、「つらい」「やめて」ということを訴えるために泣いているのではないかと考える人もいます。

基本的に、子どもの前では、強い口調や暴力的な行為でケンカはしない方がいいと思います。

回答:遠藤利彦さん

子どもは、お父さんとお母さんのケンカなどの「自分の背後で起きていること」にとても敏感だと言われています。

お父さん、お母さんは、子どもにとって安心できる場所です。
そのお父さんとお母さんがケンカをすると、自分が直接叩かれたり、蹴られたりして痛い思いをしているわけではないけれど、自分のいる世界が危険なところだと感じるため、「絶対的安心感」が失われる場合もあります。


いつから人と協調できるようになる?

3歳になる娘は、頑固な性格です。
自分のおもちゃを友だちが使っていたときも、「貸して」と言ってそれを取り返そうとしたのですが、貸してもらえず、娘が友達を攻撃しようとしたことがあります。
その際に、攻撃はしちゃダメだよと注意し、「ごめんねって伝えると仲直りできるかもしれないよ」「ごめんねって謝りたくなったら謝ろう」と優しく声をかけるのですが、なかなか謝ることができません。
子どもは、いつごろから人と協調できるようになるのでしょうか?
(3歳の女の子をもつパパより)

ルールの感覚が育っているからこそのケンカ

回答:遠藤利彦さん

「貸して」と伝えて、それでも貸してもらえなかったから、ケンカになっています。
これは、お子さんの中に、「貸してほしいときは、『貸して』と伝えると貸してもらえる」というルールができているということです。
今回は友だちの反応が思う通りではなかったので、怒りが出てきて、ケンカにつながったといえます。

これは、ルールの感覚が育っているからこそのケンカです。

このような経験を経て、4~5歳になると、だんだんと折り合いをつけられるようになります。

2~3歳は物にこだわる時期、社会性を身につけるチャンスにする

回答:汐見稔幸さん

2~3歳ごろは、自分の物だという感覚がうれしく感じるため、友だちが自分の物を使いにくると、それを守ろうとしたり、自分のものと同じようなものがあると、それを自分の物にしたくなったりします。
それほど、物にこだわる時期なのです。
これは、ありのままの気持ちを外に出しているということなので、自己主張ができているという面で、とても大事なことです。
この時期には、その気持ちをコントロールすることはまだできないため、どうしても友だちとケンカになることが多いと思います。

しかし、ぶつかることによって、こうやるとうまくいかないんだということを徐々に学んでいきます。
自己主張のぶつかり合いは社会性を身につけるチャンスです。

自己主張は強くても大丈夫?

回答:遠藤利彦さん

日本人は「自己主張」よりも「自己抑制」を大切なものだと考えがちです。
しかし、「自己抑制」を大事にするあまり、「自己主張」ができなくなる、自分のことを素直に表現できなくなるという問題が出てくると、さまざまな研究で言われています。

小さい頃は、「自己抑制」のスキルがありません。
その間に、「相手に伝わる表現のしかた」を子どもに伝えることが大切だと思います。


子どもの名前、愛称ではなく名前で呼ぶべきでしょうか?

息子の名前は「そうた」といいます。うまれてからずっと「そうちゃん」と呼んでいますが、義理の母から「そんな呼び方だったら、自分やお友だちが名前を覚えられないから、『そうたくん』とちゃんと呼ばないとダメ」と言われます。本当にちゃんと名前で呼んであげないといけないのでしょうか?
(7か月の男の子をもつママ)

回答:汐見稔幸さん

愛称で呼ぶと自分の名前を覚えない、覚えてもらえないということはないです。
友だち関係でも、愛称で呼び合っていると親しくなったりもします。
気にすることはありません。

回答:遠藤利彦さん

子どもというのは、この人との関係の中では自分は○○ちゃんで、先生との関係では名前で呼ばれるもので、というようにTPOを理解し、こういう場ではこの名前を使ったほうがいいなど、自分で学んでいきます。
ひとつだけの呼び方を全部で統一するという必要はないように思います。


すくすくポイント
子どもが毛布やぬいぐるみに執着するのは愛情不足?

子どもがいつも同じぬいぐるみや毛布、タオルなどを持ち歩いていて、ボロボロ。。。なんてことありませんか?

スヌーピーに出てくるライナスというキャラクターも、トレードマークはボロボロの青い毛布。
でも、このボロボロの毛布、ただの毛布じゃないんです!
「Security blanket = 安心毛布」と呼ばれ、子どもにとって大切な意味のあるものなのです。

子どもの心理カウンセリングを行っている、井原成男教授(小児心理カウンセラー/早稲田大学 人間科学学術院)によると、持つことで安心できるぬいぐるみや毛布は、ママやパパなどの育ててくれている人の身代わりのようなもの。
不安になったり、嫌な感情が起こったときに、ぬいぐるみや毛布を触ったり、においをかぐことで、気持ちの立て直しをしているのです。

子どもが成長し、心の中で大切な人をイメージできるようになると、ぬいぐるみや毛布を手放せるようになります。

かつて、日本では、ぬいぐるみや毛布を手放せない子どもは愛情不足が原因なのではないかと言われていましたが、欧米では、子どもが自分で感情を抑えようとする「自立のための一歩」だと考えられ、むしろ「もつことが当然」と認められているそうです。

お子さんが毛布やぬいぐるみなど、モノに執着し始めても、「成長の過程」と見守ってあげましょう!

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです