ママも赤ちゃんも気持ちいい、だっこ
2016年4月23日 放送
赤ちゃんが生まれてから、毎日欠かせないだっこ。でも、だっこのしかたをしっかり習うことはあまりないですよね?
今回はだっこを大特集!「ママも赤ちゃんも気持ちいい、だっこ」の秘訣をご紹介します。
加部一彦(埼玉医科大学総合医療センター新生児部門 小児科医)
加藤祐見江(川口市役所保健センター母子保健係 保健師)
正しいだっこのしかたは?
息子は3か月で、まだ首がすわっていません。
横抱きすると、息子の右腕が私の体に挟まれて変なところにあるように見えます。
その状態で、息子の右手を触った主人に、「手が冷たくなっている」と言われたことがあります。
縦抱きもやってみるのですが、反り返って動くため、だっこが安定しません。
どの程度、力を入れたらいいのでしょうか。正しいだっこのしかたが知りたいです。
(3か月の男の子をもつママより)
回答:加藤祐見江さん
だっこ講座
<はじめに>
だっこをする前に、赤ちゃんに声をかけ、今からだっこすることを赤ちゃんに知らせてください。赤ちゃんにも心の準備が必要です。
<横抱きの場合>
まずは、頭と首のさかいあたりとお尻をしっかり支えて、持ち上げ、体に密着させる。
つぎに、ひじの内側に頭を持っていき、横にした姿勢でだっこします。
<縦抱きの場合>
まずは、頭とお尻をしっかり支えて、持ち上げ、体に密着させる。
首がすわっていないときは、頭と首のさかいあたりをしっかり支えましょう。
もう片方の手で、しっかりとお尻を支えてください。
だっこしながら、ときどき、子どもの顔を見てあげるといいですよ。
だっこが安定しない場合は、もう少し首と体をしっかり支える
回答:加部一彦さん
だっこのしかたは、生まれてからの月齢によって違います。首がすわっていると、赤ちゃんの方から、お母さんの方に寄りかかってくれるのですが、首がすわってないと、手や足が垂れ下がってしまいます。なかなかだっこが安定しない場合は、首と体をしっかり支えてみてください。
しかし、赤ちゃんはだっこされながら、だんだん自分で動くようになっていくため、手や足が垂れ下がっているからといって、そこまで気にしなくても大丈夫です。
また、だっこをするときに、子どもの背中が丸くなってしまうことを心配される方も多いですが、それで背中を痛めることはないと思います。
新生児の場合は、体が少し丸くなっていると、おとなしくなる傾向があります。お母さんのお腹の中では丸くなっていますからね。
だっこばかりしていると抱きぐせがつく?
子どもが泣いたらすぐだっこしてしまうため、だっこが習慣になっています。
だっこばかりしていると、抱きぐせがついてしまい、わがままになったり、自立が遅れたりするのかと心配です。
「抱きぐせ」ではなく「だっこ好き」
回答:加藤祐見江さん
抱きぐせに関する相談はとても多いですね。
赤ちゃんが泣いたから、泣き止ませるために抱くことで、「抱きぐせ」がついたのではなく、「だっこ好き」な赤ちゃんの個性と捉えてください。だっこが好きだから、だっこを泣いて求めているのです。そのため、わがままになったり、自立が遅れたりする心配をしなくても大丈夫です。
だっこは、安心感と信頼関係を育むものです。赤ちゃんが泣いて、だっこを求めるのであれば、だっこしてあげましょう。
「抱きぐせ」を気にせず、赤ちゃんが泣いたら、時間がある限り、だっこしてあげてください。
「わがままになってしまう」などの心配は赤ちゃんがもう少し大きくなってから
回答:加部一彦さん
「わがままになってしまう」や「自立が遅れる」などの心配は、赤ちゃんがもう少し大きくなってからの問題です。
赤ちゃんのうちは、だっこしてスキンシップをとってあげるのが一番いいと思います。
だっこのときに赤ちゃんを揺らす加減は?
息子をだっこしながら、あやすときに、わりと体を揺らしてしまいます。先輩ママから、「揺らし方が強いよ」と言われたことがあり、自分の揺らし方が強いことを意識するようになりました。
赤ちゃんをだっこしているときは、どの程度、揺らして大丈夫なのでしょうか?
(4か月の男の子を持つママより)
揺らし加減は子どもを見て調整する
回答:加藤祐見江さん
揺らし加減は子どもを見て調整するようにしましょう。
揺らしているときに、お子さんが笑っているようであれば、問題ありません。
お母さんは生まれたときからずっと、子どもを見てきているため、良い揺らし加減を体得できると思いますよ。
揺らすときには首をしっかり支える
回答:加部一彦さん
揺らすときには、首をしっかり支えることが大事です。揺らすことで、首が大きく振られないように支えてあげてください。
揺さぶられっこ症候群(英訳:Shaken Baby Syndrome)がありますが、これは頭が左右前後に過度に揺さぶられることで発症します。頭が“シェイク”されるような、本当に過度に揺さぶられた状態の話のため、子どもをあやす程度の揺らしであれば、問題ないとは思います。しかし、首と体が別々に動くほど激しく揺らすと危険です。気をつけてください。
また、お子さん本人が嫌がっていないかどうかも見るようにしましょう。嫌がっていたら、揺らし加減を調整してください。
一日中だっこで大変!疲れにくい工夫は?
7か月になる息子は、体重が8キロあるのですが、息子が喜ぶため、「たかいたかい」をしたり、がんばってだっこしたりしています。寝かしつけるときもだっこし、降ろすと泣いてしまうため、お昼寝の間もずっとだっこしていることが多いです。そのため、体に疲れがたまり、肩などは本当に凝っています。マッサージや岩盤浴でほぐしたいのですが、子連れでは行くことができないため、なかなかほぐす機会がありません。
疲れにくくなるような工夫ができるのでしょうか?
(7か月の男の子を持つママより)
だっこのしかたを工夫する
回答:加藤祐見江さん
だっこをするときに、右側だけでなく左側も使うなどして、片方の腕だけに負担が偏らないように工夫するといいと思います。例えば、いつも赤ちゃんの頭を腕に乗せている場合は、肩に乗せてみるなどして、楽になる抱き方を見つけていけるといいと思います。
しかし、育児は24時間労働のため、本当に体がつらくなってしまったときは、自分で休憩時間を作って、体のメンテナンスやストレスを解消することも大切だと思います。
泣かせたくないから、ずっと「だっこ」。つらいと思うときはどうすればいい?
赤ちゃんが泣くのは当たり前
回答:加藤祐見江さん
お母さんは赤ちゃんが泣いていると、「自分が泣かせているのではないか」という気がして、追い詰められる方もいらっしゃると思います。
しかし、話ができるようになる前の赤ちゃんは、泣くことで自分の気持ちを伝えています。お母さんのせいで泣いているのではありません。「赤ちゃんが泣くのは当たり前」と考えて、まずは、気持ちを切り替えるようにしてください。
赤ちゃんが泣いているときに、家事などをしていて手が離せない場合は、「ママはここにいるからね」「もう少ししたらだっこしてあげるからね」と声をかけるだけでも大丈夫です。
用事が終わり、手が空いたときに、「さっきだっこしてあげられなかった分、いっぱいだっこしようね」と、だっこしてあげるといいと思います。
「だっこひも」は子どもの体に負担がある?
「だっこひも」を使うことに問題はないが、気をつけて使用する
回答:加部一彦さん
赤ちゃんは成長するにつれ、だっこされながらも動き回るようになるため、だっこが難しくなってきます。そのため、「だっこひも」自体を使うこと自体に問題はありません。
ただ、長時間使っていると、赤ちゃんもぐずってしまうため、ときどき姿勢を変えたり、おろしてあげたりするといいと思います。
また、「だっこひも」を使うときは、必ず説明書通りに使ってください。赤ちゃんが動くようになると、「だっこひも」のひもがゆるい場合、飛び出してしまうことがあります。このような落下事故もよく聞きますので、気をつけて使ってください。
回答:加藤祐見江さん
「だっこひも」を選ぶときは、お子さんの体に合ったサイズかどうかを確認してください。
また、「だっこひも」には、長さを調節するひもが付いています。使うときは、ひもの長さを調整し、抱きやすい長さにしてください。
おへそより上の位置でだっこすると、お母さんも楽で、お子さんも安定しやすくなると思います。
すくすくポイント
古武術的 体の使い方「ラクちんだっこ」
長い時間だっこをしていると、ママやパパは疲れますよね。子どもの体重が重くなってくると、さらに大変!
肩こりや腰痛、そして腱鞘炎などに悩まされる子育て中のママは少なくありません。
そこで、今回は古武術の動きを活用した「楽になるだっこ」のヒントを紹介します。
岡田 慎一郎(理学療法士)
古武術を応用し「筋力に頼らない介護」を提唱しています。
古武術とは?
剣術や柔術のように、日本に古くから伝わる武術の総称。
古武術的「ラクちんだっこ」のしかた
ポイントは、背中の肩甲骨。
腕だけでだっこするよりも、肩甲骨を広げて背筋を意識すると、だっこがラクになります。
まずは、縦抱きをしている状態で、お尻を支えている手の甲を、お尻の方に向ける。
こうすることで、肩甲骨が広がり、背中に適度な張りが生まれます。背中の力が腕に伝わりやすくなります。
そして、この背中の張りを保ちながら、さきほどお尻に向けた手の甲を、元に戻します。
次に頭を抱えている手も同じように、いったん手の甲を頭に向けて抱えてから、手のひらを返します。
見た目は普通なのですが、この方法でだっこすることで、背中から赤ちゃんを包みこむようなだっこに切り替わります。
古武術をマスターするのは難しいですが、疲れたときは手のひらを返して、肩甲骨をのばしてみてください。
※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです