“ほめて育てる”とはいうけれど・・・

すくすく子育て
2016年4月9日 放送

「子どもはほめて育てる」とよく聞くけれど、「ほめすぎて自信過剰にならない?」「いいほめ方、悪いほめ方ってあるの?」「単純にほめているだけではダメ?」のように、ほめ方についてわからないことってありますよね。今回は、ほめ方に関するギモンにお答えします。

「すくすく子育て」“ほめて育てる”とはいうけれど・・・

専門家:
大日向雅美(恵泉女学園大学学長 発達心理学)
大豆生田啓友(玉川大学大学院教授 乳幼児教育学)

ほめすぎて、打たれ弱い子にならない?

我が家の子育ては、娘をほめて育てる方針です。たとえば、離乳食を食べさせるときは、1口食べただけでも「すごい、すごい!」と少し大げさなくらいにほめます。離乳食だけでなく、「あんよ」や「たっち」のように、何か新しいことができるとほめるようにしています。
でも、ほめられることに慣れて、怒られることに慣れていないため、打たれ弱い子にならないか心配です。ほめすぎても大丈夫なのでしょうか?
(10か月の女の子をもつママより)

ほめることで子どもの「安全基地」を作っている

回答:大日向雅美さん

人生において、心が傷つくことや、めげることはたくさんあります。めげること自体は悪いことではありません。ただ、めげても、あきらめずに生きていけるように、力をつけないといけません。
このような生きる力をつけるためには、家庭が子どもにとって安心できる場所になるように、「安全基地作り」をすることが必要です。
子どもにとって、「愛されている」「守られている」という安心感は、自信につながります。その自信があるからこそ、子どもは傷つくことを恐れず、外に出られるのです。
子どもをほめることは、「安全基地を作っている」のだと思ってください。

ただ、ほめるときに、オーバーアクションをする必要はありません。言葉で言わなくても、自然体で大丈夫です。ニコっと笑いかけてあげるだけでも、安全基地は作られますよ。
子ども自身が「認められている」と感じられているかどうかが大切です。

ほめる回数よりも、子どもが「認められている」と感じているかが大切

回答:大豆生田啓友さん

「社会で生きていく」ということは、「自信がつく」ということだと思います。
自信がつくには、誰かに自分のやっていることをわかってもらったり、認めてもらったりすることが必要ですが、ほめられた回数は必ずしも重要ではありません。
「ほめたときに、子どもがうれしそうな表情をしている」のを確認するようにしましょう。子ども自身が「自分は認められているんだな」と感じられているかどうかがポイントになります。


ほめ続けて、自信過剰な子にならない?

息子を1日中ほめています。子どもが小学生や中学生になっても、このままほめ続けると、自信過剰な子どもになるのではないかと心配です。
(1歳1か月の男の子をもつママより)

ほめるだけではなく、子どもが「できない」ときに認めてあげることも大事

回答:大日向雅美さん

ほめることは自信につながります。「自信」とは自らを信ずると書くように、生きていく上でとても大事なため、ほめ続けても大丈夫です。しかし、子どもが大きくなるにつれて、言うことを聞かなくなったり、お願いしたことができなくなったりすることも必ずあります。そのように、子どもが「できない」ときにも、認めてあげることが大事です。

また、ママはほめることに一生懸命になると、「次はどういう言葉でほめようかな」と、ほめることを考えてしまい、子どもをちゃんと見なくなることがあるかもしれません。
ただ一方的にほめるだけではなく、子どもの行動を見て、うれしそうな顔をしたら、「やったね!」「できたね!」と、子どもの達成感に共感してあげることが大切です。
先回りしてほめないようにしましょう。

社会の中ではうまくいかないこともあるため、自信家にはならない

回答:大豆生田啓友さん

子どもは家庭だけでなく、社会の中でも育ちます。例えば、子育て支援施設で他の子と遊んだときに、「他の子におもちゃをとられる」というように、うまくいかない経験をすることもたくさんあります。
そのような家庭の外での経験で、うまくいかないことを乗り越える力がついていきます。
家庭内でほめ続けて自信をもって社会に出て行くけれど、実際には、社会の中ではうまくいかないこともたくさんあるため、自信家になることはないと思いますよ。


良いほめ方・悪いほめ方がある?

孫に甘い祖父母にほめられ、私にもほめられ・・・。周りがほめすぎて、甘やかしになっているのではないかと心配です。もっとメリハリのあるほめ方にしたほうがいいのでしょうか。
良いほめ方があれば教えてほしいです。
(1歳6か月の男の子を持つママより)

ほめることは、感動と自然体。子どもの存在を丸ごと受け入れる。

回答:大日向雅美さん

ほめるときに、まず大事なのは「感動」です。「すごいな~」「いいな~」というような気持ちが「ほめる」のスタートなのですが、そこでピリオドをうってください。感動した気持ちだけを伝えることが大切です。「ほめて伸ばそう」とか「おだてると良くなる」などの成果は期待しないようにしましょう。
ほめることにテクニックのようなものはありませんが、「何かができるから、いい子」というほめ方はしない方がいいと思います。ほめるときは、パーツではなく、子どもの存在を丸ごと受け入れてあげるようにしてください。
子どもにはできないこともたくさんあります。「これができたからいい子だね」と限定的にほめてしまうと、子どもにとっては、「次も親の期待に応えなければいけない」というプレッシャーになってしまいます。
逆に、叱るときは、「これはダメだよ」と、何がダメなのかをしっかり伝えることが大切です。

子どもの思いをくみ取る

回答:大豆生田啓友さん

ほめるときは、自然体がいいですね。子どもにとっては、自分のやっていることを認めてもらう、共感してもらうことが大事なのです。
大人の立場で考えてみてください。常にほめられても、そんなに元気はでないと思います。しかし、自分ががんばっているときに、ちゃんと誰かにそのがんばりをわかってもらえたり、声をかけられたりすると、「その一言で元気になった」ということがあると思います。子どもも同じです。
例えば、おいしそうにご飯を食べていたら、「おいしかったね」と声をかけてあげるなどのように、子どもの思いをくみ取ってあげることが、良いほめ方につながるのではないかと思います。


「おりこうさん」という言葉でほめていいの?

子どもをほめるときに、「おりこうさん」という言葉を使います。例えば、自分で服を片づけられたときに、「ありがとう。おりこうさんですね。」というように使っています。そのせいか、娘自身が「おりこうさんだから、嫌いだけどミルクを飲む」というように、「おりこうさん」という言葉を使うようになりました。娘に無理に我慢をさせることになり、あまりよくないのかなと感じています。この言葉でほめてもいいのでしょうか?
(2歳1か月の女の子を持つママより)

がんばったプロセスを認め、肯定する言葉なら大丈夫。

回答:大豆生田啓友さん

「おりこうさん」という言葉を使っていても、能力だけをほめているのではなく、自分から服を片づけにいくという、がんばったプロセスをほめています。そのため、子どもが「自分は認められているんだ」と感じることができ、自信や元気につながっていきます。
子どもが「認められた」と感じられる肯定的なメッセージの言葉ならば、使う言葉を厳密に考えなくても大丈夫です。言葉を細かく気にしてしまうと、ほめる側も自然にほめられず、しんどくなると思いますよ。
自尊心を傷つける言葉でなければ、どのような言葉でも問題ないと思います。

ほめるときに使う言葉の意味を深く考えなくても大丈夫

回答:大日向雅美さん

「ありがとう。おりこうさんだね。」という言葉で、片づけてくれてうれしい、助かったというママの自然な気持ちを伝えているため、まったく問題ないと思います。○○という言葉や単語を使ったらダメということはなく、ほめるときに使う言葉の意味を深く考えなくても大丈夫です。
また、嫌なことに挑戦していくことは年齢的に必要なことです。そのときに、「おりこうさん」という言葉を、「嫌だけど、頑張ろう」と自発的な励みにしているのであれば、問題ないと思います。


子どものほめ方がわからない。どのようにほめればいい?

私自身、親にあまりほめられた記憶がないため、子どもをほめるタイミングやどの程度ほめればいいのかがわかりません。また、面と向かってほめると気恥ずかしくなるため、ほめるにしても、「すごいね!」といったハイテンションではなく、いつもどおりの落ち着いたテンションでほめています。先日、子どもの絵が町のコンクールに入賞した際に、言葉でほめてみたのですが、子どもはノーリアクションです。どのようにほめるのがいいのでしょうか?
(6歳と3歳8か月の女の子を持つママより)

「見守る」ことは「ほめる」ことと同じ

回答:大豆生田啓友さん

ほめ方には、「見守る」ことも含まれていると思います。
子どもがしていることを、「がんばっているんだな」とニコニコしながら見守ってあげることも、子どもにとっては「自分は認められている」と感じることができるのだと思います。
お子さんがお母さんになついていて、甘えているようであればまったく問題ありません。
がんばってほめたときに、お子さんがノーリアクションなのも、「私は大丈夫。見守ってくれていることはわかっているよ」ということなのではないかと思います。

ほめ方や認め方は十人十色

回答:大日向雅美さん

オーバーアクションでほめることが気恥ずかしい方もたくさんいると思います。無理にオーバーなアクションや言葉でほめなくても大丈夫です。例えば、絵が町のコンクールに入賞した場合は、絵を部屋の壁に貼ったり、楽しく絵を眺めたりするといいと思います。ほめ方や認め方は十人十色、さまざまです。お母さん自身が納得できて、しっくりくる方法でほめてあげてください。


すくすくポイント
いいほめ方・悪いほめ方に関する実験

どんなほめ方がいいほめ方? 悪いほめ方?
ほめ方の違いが子どもの意欲にどういう影響を与えるのか、スタンフォード大学 キャロル・ドゥエック教授が、小学生数百人を対象に行った実験を紹介します。

実験では、はじめに、生徒たちにテストを受けさせます。その後、生徒たちを2つのグループに分けます。

グループに分けたあとは、さきほど受けてもらったテストをほめるのですが、以下のように、グループでほめ方を変えます。

Aグループ:「よくできたわ。頭がいいのね」と能力をほめる

Bグループ:「よくできたわ。頑張ったのね」と努力をほめる

その後、2回目のテストを受けさせます。その際に、「1回目と同じレベルの問題」か「もっと難しい問題」を解くかを生徒に選ばせたところ、下記のような結果が出ました。

Aグループ:1回目と同じレベルの問題を選択
Bグループ:9割が難しい問題を選択

さらに、3回目のテストを受けさせます。テスト内容は生徒が解けないレベルの難しいものに挑戦してもらいます。その後、子どもの気持ちを聞いたところ、下記のような結果が出ました。

Aグループ:「本当は頭が悪いんだ」と思い込む気持ち
Bグループ:「もっと頑張ろう」と積極的に取り組む姿勢

この実験から、能力や結果より、努力した過程をほめると、子どもはより意欲的になるということがわかりました。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです