子どもが生まれて変わってしまった夫婦関係に、どう向き合ったらいいのでしょうか。家族関係について研究している専門家と一緒に考えます。
倉石哲也(武庫川女子大学 教授/社会福祉学)
白鳥久美子(たんぽぽ)(お笑いタレント/1児のママ・第二子妊娠中)
今回のテーマについて
子どもが生まれてからパパにイライラするのはなぜ?
まずは、白鳥久美子さんのお悩みです。
白鳥久美子さん
夫である芸人のチェリー吉武さんとは、「これ以上すてきな人はいない」と私からプロポーズして結婚し、2年後に娘が生まれました。お互い仕事が忙しくても、協力しながら子育てできると思っていましたが、最近夫へのイライラが増えています。
例えば、子どもの預け先の登録や調整は私で、丸投げされます。食事だって一緒に作ってほしいのに、気づくと私がしています。以前は夫のために料理を作るのがとても好きで、もぐもぐ食べてくれるのが気持ちよかったのですが、今では食べる音にイライラします。こんなふうに感じるとは考えもしませんでした。
でも、ママ友の話を聞くと、夫は育児をしているほうだと思います。お風呂に入れたり、ごはんを食べさせたり、着替えや歯みがき、寝かしつけや夜泣きの対応、保育園の送迎など、いろいろとしてくれます。それでも、夫の育児は子どもと接するところだけだと感じます。例えばごはんのメニューを決めたり、買い物にいったり、作ったり、食べさせるまでの道筋は私なんです。
子どもが生まれてから夫にイライラするのは、どうしてなんでしょう?
夫のチェリー吉武さんにも話を聞いています。
チェリー吉武さん
子どもが生まれる前、妻はおおらかで、よく料理を作ってくれました。海外の仕事から帰ってくると、「日本食、食べる?」と言って、肉じゃがや豚汁を作ってくれたんです。今は私にイライラしていると思います。こんなに変わるんだと感じました。
―― すくすくファミリーのみなさんは、子どもが生まれてから夫婦関係は変わりましたか?
- 「好きな部分が嫌になる」がわかります。
- 夫婦で仲よく何気ない会話をすることがなくなり、業務連絡のようなやりとりばかりになりました。何かを頼むときは「できそうかな?」と空気を読むことからはじまるので疲れますね。
- 家事をしてくれても、洗い物に汚れが残っていたり、ごみの捨て忘れがあったり。やりきっていなくてイラッとすることが多々あります。
―― 倉石さん、どうして子どもが生まれると夫婦関係が変わってしまうのでしょうか?
ママは大きく変化するのに、パパは変わっていない
回答:倉石哲也さん
子どもが生まれると、ママは四六時中子どもの命を守る作業をしています。まず「赤ちゃんを守らないといけない」という意識があり、子どもと本能的と言っていいほどの関係ができます。そのとき、パパが手を差し出しても、「その方法じゃない」「そんなふうにされると困る」となってしまうことがあり、パパもどうしていいのかわからなくなってしまいます。
また、ママには大きな変化があります。例えば、体の状態や、外出の機会が少なくなるなどの生活が一変します。一方で、パパはこれまで通り仕事に行くことが多く、変わりにくい。ママからみれば、「私はこんなに変わっているのに、なぜパパだけ変わらないの?」と感じるわけです。
―― 例えば、パパが育休をとって子育てを担っていくと、パパもイライラするでしょうか?
「育休を取ったパパ」のモデルがなくて試行錯誤している
回答:倉石哲也さん
パパもイライラすると思います。今の子育て世代は「仕事に行くのが自分の役割」と考える父親を見て育っている人が多く、自分の父親は育休を取っていないから「育休を取ったパパ」のモデルがありません。パパもどうしていいのかわからず、試行錯誤しながら一生懸命やっていると思います。
ママがイライラしているとき、パパにどうしてほしい?
自分がイライラしてるとき、相手にどうしてほしいのでしょうか。みなさんに話を聞きました。
話は気持ちを「聴く」つもりで
結論のないままの話を聴くのは、聴く側に心構えが必要
よかれと思ってしたことが妻を怒らせてしまう
ここで、白鳥さんの夫・チェリー吉武さんにも、夫婦関係の変化についてどう思っているのか、話を聞いてきました。
チェリー吉武さん
妻が母親になり、「こんなに変わるんだな」と思いました。「ダラダラしないで」と言われたり、お風呂の掃除をしては「水カビが落ちてないよ、気づいてなんでしないの?」と言われたり、細かいところに気づいてと言われますね。
日々妻に合わせて家事・育児をしているのですが、先日妻を怒らせてしまったことがあります。妻が子どもと昼寝をしているときに、玉ねぎとにんじんとジャガイモとカレー粉があったので、「カレーを作るんだな、僕が準備をしよう」と思って、野菜を切ったり、皮をむいたりしていました。そこで妻が起きてきて「やめてよ!カレーは明後日、今日は南蛮漬けを作るつもりだったの」と怒られてしまって。よかれと思ってやったことですが、もめそうになったのですねました。どうすればいいのかわかりません。難しいですね。
―― 倉石さん、みなさんの話を聞いていかがですか?
それは違うと思っても、何回かに1回は感謝を伝える
回答:倉石哲也さん
カレー作りは、本当に残念でしたね。ただ、せっかくやろうとしているので、違うと思っても何回かに1回は「ありがとう」と感謝を伝えてみてはどうでしょうか。これは練習でもあるわけで、「ダメ」と否定されたらどうしていいのかわからず、「もういいや」となってしまいます。「実は、そうじゃない」ことがあっても、感謝を伝えれば、次の家事・育児の参加がしやすくなると思います。
―― 余裕がないとき、夫が邪魔する人のように見えてしまうことがあります。「チーム」という感覚が大事でしょうか?
良いチームになる目標は「子どもをきちんと育てていくこと」
回答:倉石哲也さん
良いチームになる目標は「子どもをきちんと育てていくこと」ではないでしょうか。その目標のためには、パパがやろうとしていることを、ママが頭ごなしに否定するだけでなく、褒めたり感謝したりしながら、パパも参加するようにしていく。その様子を、子どもは見ています。チームになって一緒にやることは、子どものためにもなる、大事なところです。
何もしてくれないパパに困惑… どうすればいい?
番組のアンケートには、「子どもが生まれてもパパが何もしない」という声がたくさん寄せられています。
私は1人で全てやっているのに、仕事で疲れて帰ってきたとはいえ、ダラダラ・ゴロゴロしている夫を見て、「気楽でいいな、私はこんなに大変なのに…」と日々のイライラが積もります。
私は育児をしているのに、夫がスマホを眺めているのにイライラ。夫婦仲が悪いわけではないけど不満もある。異性として見るほどには愛せません。
―― このように、家事・育児をしようとしないパパをどうすればいいですか?
話し合いを重ねて、自分の思いをしっかり伝える
回答:倉石哲也さん
子育てはチームだといわれますが、チームになるには練習が必要で、いきなり良いチームにはなりません。これから先、夫婦や家族をつくっていく上で、話し合いを重ねて、思いをしっかり伝えることが大事です。頻繁でなくてもよいと思います。「大事な話をしましょう」「あなたには〇〇をしてほしいけど、どうだろう」と話してみてください。
子どもを1日パパに預けるなど、行動に移してみる
回答:倉石哲也さん
例えば子どもをパパに預けて、「私は1日時間をもらいます」と言って、お出かけしたり、友達と会ったり、行動に移すのも1つの方法です。いろいろなバリエーションで、練習を積んでいくことが必要だと思います。
「二者関係」をそれぞれ作っていくと、家族として落ち着く
こどものホンネ
寝るときはひとりで寝たい? それとも誰かと一緒に寝たい?
子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!
「こどものホンネ」のコーナーでは、SNSの子育て動画で人気の木下ゆーきさんがホンネハンターになって、「こどものホンネ」に迫ります。今回は「ひとりで寝ること」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました!
―― 「誰かと寝る」のと「ひとりで寝る」の、どっちが好き?
- ひとりで寝るほうが好き。ひとりで寝るときはお人形と遊べるんだもん。
- ひとりで寝る。ひとりで寝たほうがすごく寝られるから。
でも、みんなに「ひとりで寝てるか」を聞いたところ、「いつもひとりで寝ている」と答えた子は17人中2人だけ。誰かと寝ている子が多数でした。では、どうしてひとりで寝られないのでしょうか。
―― どうしてひとりで寝るのが嫌なの?
- 怖い。
- おばけが来たら捕まるかもしれない。
- きのうはひとり寝の練習してみた。おばけが怖かったけどがんばった。
何と、ひとりで寝られない理由は「おばけ」にありました。ひとり寝には不安や恐怖がつきものですね。
―― ひとりで寝られるようになるために、パパ・ママはどんなことをしたらいい?
- 寝るまでママが絵本を読んでくれる。
- 絵本を読んでもらえるのはうれしい。いい夢が見られそうだから。
―― どうやったら、ひとりで寝られるようになりそう?
- ぬいぐるみを離さなかったら寝れる。
- 今日、ひとりで寝ようと思ってる。お兄ちゃんになりたいから。パパとママに怒られたくないから、勉強もちゃんとしたいし、全部いいことをしたい。
こうやって子どもはどんどん成長していくんですね。うれしいけれど、少し寂しい気もします。そんなことを気づかせてくれたホンネでした。
最後に
―― 白鳥さん、まだまだ話し足りないと思いますがどうでしたか?
※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです