子どもが生まれて変わってしまった夫婦関係に、どう向き合ったらいいのでしょうか。家族関係について研究している専門家と一緒に考えます。

専門家・ゲスト:
倉石哲也(武庫川女子大学 教授/社会福祉学)
白鳥久美子(たんぽぽ)(お笑いタレント/1児のママ・第二子妊娠中)

今回のテーマについて

鈴木あきえさん(MC)

私は子どもが生まれてから、夫婦間で摩擦ばかり起きて何かとぶつかる時期がありました。

古坂大魔王さん(MC)

夫婦で話し合いを5~6回して変わったと思います。話し合いをして変わらないといけない、という自覚があります。

白鳥久美子さん

以前は夫を「明るくていい人、すてきだな」と思っていました。でも、子どもが生まれてからは、「のうてんきでイライラする」と感じるようになり、今まさにその時期です。

すくすくファミリー

やることが増え過ぎて、夫と仲よくしていくことが難しいと感じる場面が増えました。夫婦関係に関する本を読んだり、話し合ったり、関係をよくするために努力するようになりました。感謝や不満も、意識して言葉にしています。

すくすくファミリー

夫から「母になってキツくなった」と言われます。


子どもが生まれてからパパにイライラするのはなぜ?

まずは、白鳥久美子さんのお悩みです。

白鳥久美子さん

夫である芸人のチェリー吉武さんとは、「これ以上すてきな人はいない」と私からプロポーズして結婚し、2年後に娘が生まれました。お互い仕事が忙しくても、協力しながら子育てできると思っていましたが、最近夫へのイライラが増えています。
例えば、子どもの預け先の登録や調整は私で、丸投げされます。食事だって一緒に作ってほしいのに、気づくと私がしています。以前は夫のために料理を作るのがとても好きで、もぐもぐ食べてくれるのが気持ちよかったのですが、今では食べる音にイライラします。こんなふうに感じるとは考えもしませんでした。
でも、ママ友の話を聞くと、夫は育児をしているほうだと思います。お風呂に入れたり、ごはんを食べさせたり、着替えや歯みがき、寝かしつけや夜泣きの対応、保育園の送迎など、いろいろとしてくれます。それでも、夫の育児は子どもと接するところだけだと感じます。例えばごはんのメニューを決めたり、買い物にいったり、作ったり、食べさせるまでの道筋は私なんです。
子どもが生まれてから夫にイライラするのは、どうしてなんでしょう?

夫のチェリー吉武さんにも話を聞いています。

チェリー吉武さん

子どもが生まれる前、妻はおおらかで、よく料理を作ってくれました。海外の仕事から帰ってくると、「日本食、食べる?」と言って、肉じゃがや豚汁を作ってくれたんです。今は私にイライラしていると思います。こんなに変わるんだと感じました。

―― すくすくファミリーのみなさんは、子どもが生まれてから夫婦関係は変わりましたか?

  • 「好きな部分が嫌になる」がわかります。
  • 夫婦で仲よく何気ない会話をすることがなくなり、業務連絡のようなやりとりばかりになりました。何かを頼むときは「できそうかな?」と空気を読むことからはじまるので疲れますね。
  • 家事をしてくれても、洗い物に汚れが残っていたり、ごみの捨て忘れがあったり。やりきっていなくてイラッとすることが多々あります。

―― 倉石さん、どうして子どもが生まれると夫婦関係が変わってしまうのでしょうか?

ママは大きく変化するのに、パパは変わっていない

回答:倉石哲也さん

子どもが生まれると、ママは四六時中子どもの命を守る作業をしています。まず「赤ちゃんを守らないといけない」という意識があり、子どもと本能的と言っていいほどの関係ができます。そのとき、パパが手を差し出しても、「その方法じゃない」「そんなふうにされると困る」となってしまうことがあり、パパもどうしていいのかわからなくなってしまいます。
また、ママには大きな変化があります。例えば、体の状態や、外出の機会が少なくなるなどの生活が一変します。一方で、パパはこれまで通り仕事に行くことが多く、変わりにくい。ママからみれば、「私はこんなに変わっているのに、なぜパパだけ変わらないの?」と感じるわけです。

―― 例えば、パパが育休をとって子育てを担っていくと、パパもイライラするでしょうか?

「育休を取ったパパ」のモデルがなくて試行錯誤している

回答:倉石哲也さん

パパもイライラすると思います。今の子育て世代は「仕事に行くのが自分の役割」と考える父親を見て育っている人が多く、自分の父親は育休を取っていないから「育休を取ったパパ」のモデルがありません。パパもどうしていいのかわからず、試行錯誤しながら一生懸命やっていると思います。


ママがイライラしているとき、パパにどうしてほしい?

自分がイライラしてるとき、相手にどうしてほしいのでしょうか。みなさんに話を聞きました。

白鳥久美子さん

ただ「そうだね」と話を聞いて、最後に「ごめんなさい」と言って終わらせてほしいですね。夫もいろいろしてくれているので、「いや、俺だってやってるよ!」と言うのですが、口答えされると、どうしてもイライラしてしまうんです。

すくすくファミリー(ママ)

改善案や反論ではなくて、「うん」「そうだね」と共感してほしいです。

すくすくファミリー(パパ)

例えば、ママが子どもに対してイライラしているときは、私がおどけて子どもの世話を買って出て、ママと子どもが距離をとれるようにしています。

すくすくファミリー(ママ)

私が子どもにイライラしているとき、パパが間に入ってくれてるのはとてもありがたいです。

すくすくファミリー(ママ)

3分間でいいので、反論せずに真剣に話を聞いてほしいです。相づちも入れてもらえると、さらにうれしいです。どうしてもけんか口調になるので、まずイライラを吐き出してすっきりしてから、ゆっくり話し合ったほうがうまくいくと思います。

話は気持ちを「聴く」つもりで

倉石哲也さん

「話をきく」には2つ大事なことがあります。まずは忍耐です。「きく」はいくつか漢字がありますが、必要なのは「耳に十四の心」と書く、傾聴の「聴く」です。単に話を聞くだけではなく、気持ちを「聴く」つもりで、「いろんな気持ちがうごめいているのだろう」という思いで、しっかり聴くことが大事です。

結論のないままの話を聴くのは、聴く側に心構えが必要

倉石哲也さん

もう1つは、聴く側の心構えです。話を聴く側は、「どうすればいいか」と解決志向になりがちです。でも、そんな結論を求めていたわけではないかもしれません。結論のないまま話を聴くのは、聴く側にある程度の心構えが必要です。すぐにできる人と、そうでない人がいると思います。また、距離をとることも、とても大事なことです。


よかれと思ってしたことが妻を怒らせてしまう

ここで、白鳥さんの夫・チェリー吉武さんにも、夫婦関係の変化についてどう思っているのか、話を聞いてきました。

チェリー吉武さん

妻が母親になり、「こんなに変わるんだな」と思いました。「ダラダラしないで」と言われたり、お風呂の掃除をしては「水カビが落ちてないよ、気づいてなんでしないの?」と言われたり、細かいところに気づいてと言われますね。
日々妻に合わせて家事・育児をしているのですが、先日妻を怒らせてしまったことがあります。妻が子どもと昼寝をしているときに、玉ねぎとにんじんとジャガイモとカレー粉があったので、「カレーを作るんだな、僕が準備をしよう」と思って、野菜を切ったり、皮をむいたりしていました。そこで妻が起きてきて「やめてよ!カレーは明後日、今日は南蛮漬けを作るつもりだったの」と怒られてしまって。よかれと思ってやったことですが、もめそうになったのですねました。どうすればいいのかわかりません。難しいですね。

古坂大魔王さん(MC)

チェリーさんは「今日はカレーだから、作ってあげたら助けになる」と想像していたんですね。

白鳥久美子さん

そうなんです。まとめ買いした材料を冷蔵庫に入れていただけなのに、夫は勝手に「今日はカレーだ」と勘違いしてました。でも、私は鮭など傷みやすい食材を先に使いたかったんです。それに、夫の料理はあのときだけで、ふだんから料理をしていればもめることもなかったと思います。「よかれじゃない、迷惑になる」とけんかになりました。

すくすくファミリー(ママ)

助かると思う反面、消費期限、栄養、食費などを考えて計画しているので、それが崩れるとイラっとしてしまいますね。

すくすくファミリー(パパ)

「よかれと思って」は、すごくわかります。「少しでもママが楽になるといいかな」と考えてやっているつもりだけど、裏目に出ることがよくあるんですね。

古坂大魔王さん(MC)

食材の消費期限などは、ふだんからしていないと想像がつかないところがあるかもしれません。

鈴木あきえさん(MC)

ママの家事でやることが多すぎるからかもしれません。わが家でも「洗濯物が少ないのに、どうして夫は洗濯機を回してるの?」といったことなど、よくあります。

―― 倉石さん、みなさんの話を聞いていかがですか?

それは違うと思っても、何回かに1回は感謝を伝える

回答:倉石哲也さん

カレー作りは、本当に残念でしたね。ただ、せっかくやろうとしているので、違うと思っても何回かに1回は「ありがとう」と感謝を伝えてみてはどうでしょうか。これは練習でもあるわけで、「ダメ」と否定されたらどうしていいのかわからず、「もういいや」となってしまいます。「実は、そうじゃない」ことがあっても、感謝を伝えれば、次の家事・育児の参加がしやすくなると思います。

―― 余裕がないとき、夫が邪魔する人のように見えてしまうことがあります。「チーム」という感覚が大事でしょうか?

良いチームになる目標は「子どもをきちんと育てていくこと」

回答:倉石哲也さん

良いチームになる目標は「子どもをきちんと育てていくこと」ではないでしょうか。その目標のためには、パパがやろうとしていることを、ママが頭ごなしに否定するだけでなく、褒めたり感謝したりしながら、パパも参加するようにしていく。その様子を、子どもは見ています。チームになって一緒にやることは、子どものためにもなる、大事なところです。

白鳥久美子さん

これまで「練習期間」という考えを持っていませんでした。いつも「完璧に」と思って、夫にも完璧を求めてしまっていました。練習中に「何でできないの!」と言われたら嫌ですよね。夫のやる気を下げていたと、改めて思いました。


何もしてくれないパパに困惑… どうすればいい?

番組のアンケートには、「子どもが生まれてもパパが何もしない」という声がたくさん寄せられています。

私は1人で全てやっているのに、仕事で疲れて帰ってきたとはいえ、ダラダラ・ゴロゴロしている夫を見て、「気楽でいいな、私はこんなに大変なのに…」と日々のイライラが積もります。

私は育児をしているのに、夫がスマホを眺めているのにイライラ。夫婦仲が悪いわけではないけど不満もある。異性として見るほどには愛せません。

―― このように、家事・育児をしようとしないパパをどうすればいいですか?

話し合いを重ねて、自分の思いをしっかり伝える

回答:倉石哲也さん

子育てはチームだといわれますが、チームになるには練習が必要で、いきなり良いチームにはなりません。これから先、夫婦や家族をつくっていく上で、話し合いを重ねて、思いをしっかり伝えることが大事です。頻繁でなくてもよいと思います。「大事な話をしましょう」「あなたには〇〇をしてほしいけど、どうだろう」と話してみてください。

子どもを1日パパに預けるなど、行動に移してみる

回答:倉石哲也さん

例えば子どもをパパに預けて、「私は1日時間をもらいます」と言って、お出かけしたり、友達と会ったり、行動に移すのも1つの方法です。いろいろなバリエーションで、練習を積んでいくことが必要だと思います。

古坂大魔王さん(MC)

私は、主に次女(2歳)の面倒をみています。ある日、次女をだっこしていたら、長女がカメラで写真を撮って「パパと妹ちゃんの組み合わせ、かわいい」「ママ、かわいいよね、この組み合わせ」と言うんです。なんだか、とても報われたように感じました。

「二者関係」をそれぞれ作っていくと、家族として落ち着く

倉石哲也さん

古坂さんの話には、大事なところがあります。家族は「二者関係」の集まりです。例えば、パパとママ、ママと子ども、パパと子どもなどです。3人家族だと二者関係が3つ、4人だと6つになります。それぞれの二者関係が落ち着いていることがとても大事なのです。古坂さんの話でお姉ちゃんがしたことは、まさに二者関係を作っていくことだと感じました。
また、ママと子どもの二者関係が強すぎて、ママばかりになっているとき、パパと子どもの関係ができていけば、ママと子どもの関係が楽になると思います。

白鳥久美子さん

「子どもは私がみないといけない」と思っていましたが、子どもがパパとの関係をつくる時間と考えると、私が出かけてパパに任せてもいいかなと思いました。


こどものホンネ
寝るときはひとりで寝たい? それとも誰かと一緒に寝たい?

子育てでわからないことは、子どもに直接聞いてみよう!

「こどものホンネ」のコーナーでは、SNSの子育て動画で人気の木下ゆーきさんがホンネハンターになって、「こどものホンネ」に迫ります。今回は「ひとりで寝ること」について、保育園、年長さんの子どもたちに聞いてきました!

―― 「誰かと寝る」のと「ひとりで寝る」の、どっちが好き?

  • ひとりで寝るほうが好き。ひとりで寝るときはお人形と遊べるんだもん。
  • ひとりで寝る。ひとりで寝たほうがすごく寝られるから。

でも、みんなに「ひとりで寝てるか」を聞いたところ、「いつもひとりで寝ている」と答えた子は17人中2人だけ。誰かと寝ている子が多数でした。では、どうしてひとりで寝られないのでしょうか。

―― どうしてひとりで寝るのが嫌なの?

  • 怖い。
  • おばけが来たら捕まるかもしれない。
  • きのうはひとり寝の練習してみた。おばけが怖かったけどがんばった。

何と、ひとりで寝られない理由は「おばけ」にありました。ひとり寝には不安や恐怖がつきものですね。

―― ひとりで寝られるようになるために、パパ・ママはどんなことをしたらいい?

  • 寝るまでママが絵本を読んでくれる。
  • 絵本を読んでもらえるのはうれしい。いい夢が見られそうだから。

―― どうやったら、ひとりで寝られるようになりそう?

  • ぬいぐるみを離さなかったら寝れる。
  • 今日、ひとりで寝ようと思ってる。お兄ちゃんになりたいから。パパとママに怒られたくないから、勉強もちゃんとしたいし、全部いいことをしたい。

こうやって子どもはどんどん成長していくんですね。うれしいけれど、少し寂しい気もします。そんなことを気づかせてくれたホンネでした。


最後に

―― 白鳥さん、まだまだ話し足りないと思いますがどうでしたか?

白鳥久美子さん

実は、今回のインタビューから帰ってきた夫はとても機嫌がよかったんです。さきほど話してるところを見て「あぁ、私って夫の話を聞いてなかった」と気づきました。夫にそんな「はけ口」を用意したい、「私ばっかり」は違うとすごく思いました。今回のインタビューのように、話を聞き出していくのがいいですね。

鈴木あきえさん(MC)

夫婦関係は子どもの年齢によっても変化していくと思います。定期的に学んでいきたいですね。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです