子どもにいちいち指示を出してしまう、心配でつい口を出してしまう。これって過干渉なのでしょうか? 過干渉・過保護について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
柴田愛子(保育施設代表)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授/発達心理学)

子どもに指示を出し過ぎ?

例えばごはんのとき、娘(3歳9か月)に「お魚を食べたら餃子を食べていいよ」「行儀が悪いから手を出して」など、嫌がられているだろうなと思いつつ、つい口うるさく指示を出してしまいます。最近、この「指示ぐせ」が娘にうつっているかもしれない、と思えて気になっています。例えば、おままごとをするとき、自分で決めたストーリー通りにしたいようで、親や周りの人に、どんなセリフを言うのかなど、全部指示をします。私が指示しがちだから、言い過ぎだからそうなるのではないかと心配ですが、干渉せずに見守るのも難しいです。
(お子さん2人のママ)

食事はおいしくいただくことを考える

回答:柴田愛子さん

つい「あれを食べろ、これを食べろ」と口を出してしまいますよね。でも、好きなものを先に食べたり、最後にとっておいたり、子どもにも食べる順番に好みがあります。いろいろ言われると、楽しくなくなり自分の思うようにできなくなっていきます。
やはり、せっかく手をかけて作った食事を、おいしく食べることがいちばんではないでしょうか。ママも口を出しながらだと味に気がいきませんよね。いろいろと言い過ぎず、「今日の餃子はおいしいね」「ママ上手でしょ」と声をかけながら、一緒においしくいただこうという空気ができれば、親子ともホッとできると思います。

子どもに関わるときの3つの「W」

回答:遠藤利彦さん

子どもと関わるときには、3つの「W」を考えてみましょう。1つ目は「Wait(ウエイト)」で、子どもを待つこと。次が「Watch(ウォッチ)」で、見ること。最後が「Wonder(ワンダー)」で、「この子はどうしてこんなことをするのかな」と考えることです。このように、余裕を持って子どもに働きかけることを少し考えてみてください。

食事を一緒に楽しむ

回答:遠藤利彦さん

「〇〇ちゃんはこれが好きなのね。これが食べたいんだね」のように、まずは子どもの気持ちを受け止めて、「だけどお母さんはこっちを食べてほしいな」と伝えてみてはどうでしょうか。そんなやりとりを楽しんでいくと、食事は栄養のためだけではなく、食べることで家族の感情的な絆が深まるものになります。

子どもは日常を模倣して、ごっこ遊びにする

回答:柴田愛子さん

子どもは、日常の暮らしを模倣して、ごっこ遊びをします。おままごともそうですね。保育現場で子どもたちの遊びを見ていると、家族のありようがわかってくるのですよ。もし、子どもの遊びを見て、「こんなに言っているの?」と感じるなら、少し考えてみるといいかもしれません。

「言い過ぎ」と感じたら、目をそらす・人に聞く

回答:柴田愛子さん

自分で「言い過ぎかもしれない」と思ったら、子どもから目をそらしてみましょう。子どもを見ているから口が出てしまうわけです。それから、周りの人に「私、言い過ぎ?」と感想を聞いてみるのもいいですね。子どもはなかなか言わないので、例えばパパの客観的な意見を聞いてみる。「ちょっと言い過ぎかもしれないね」と言われたら、素直に「そうですね」と納得することが大事です。


心配と過干渉の境目はどこ?

長女(5歳6か月)はもうすぐ小学生です。入学までにいろいろと身につけてほしくて、ドリルをはじめました。でも、子どもがドリルをするとき、つい口を出してしまいます。例えば、間違い探しで、「どこが間違ってる?」「ちゃんと見て読んで」「何て書いてある?」「6個違うって書いてよ」など、子どもが考える前に、次々と言ってしまいます。
ビーズで遊んでいるときも、子どもがほっぺの青い動物を作っていたら、「青いほっぺは具合悪そうよ」と口を出してしまいます。「具合悪そうって言わないで」と言い返されても「ピンクのほっぺのほうがかわいいよ」と言ってしまいます。
心配と干渉は境目がわからず、どの程度からが干渉になるのか加減が知りたいです。
(お子さん3人のママ)

会話のテンポをゆるくしてみる

回答:柴田愛子さん

お子さんが3人もいるのに、よく気がついていると思いますよ。おそらく頭の回転が速くて、会話のテンポも速いですよね。それだけに、ママから家庭教師のように「これやって、あれやって」と言われて、子どもの心が動かなくなってしまったのかもしれません。もう少し余裕のあるテンポにしてあげるといいでしょう。

子どもが少しやる気になる工夫を

回答:柴田愛子さん

子どもは、やらされる勉強があまり好きではありません。そのため、例えば間違い探しであれば、「ママは同じに見えるな」と、ひとこと入れてみましょう。親がそう言うと、子どもから「これとこれは違うよ」と教えてくれるかもしれません。そんなひと工夫で、少しやる気になってくれると思います。

子どもの横で親も同じもので遊ぶ

回答:柴田愛子さん

子どもが遊んでいるところを見ていると、模範解答をさせたくなるものです。そうならないように、例えばビーズ遊びであれば、親の分も用意してみましょう。子どもの横で、親も同じもので遊ぶわけです。すると、「あなたのほっぺは青いの? 私はピンクにしたよ」といった話ができます。一緒に遊ぶと楽しくて、結構はまってしまいますよ。
同じもので遊ぶことが難しい場合は、「できたらママのことを呼んでね。できあがったら見たいよ」と声をかけて、家事などほかのことをしましょう。そのときは目をそらしておくことも大事です。

自分の主張を親に伝えている

回答:遠藤利彦さん

ビーズ遊びのやりとりの中で、お子さんが「具合悪そうって言わないで」と言っていましたね。自分の意見を、きちんとお母さんに自己主張できています。その意味では、とても健康な形で親子の関係ができていると思います。

子どもがじっくり考えることが大事

回答:遠藤利彦さん

子どもにとって、じっくり考えることは大事です。幼少期では、「〇〇が言えるようになる」といった、目に見える結果以上に、頭を使う経験そのものが大事なのです。そのことが成り立っているかについて、少し目を向けてみましょう。
もしかすると、お子さんがじっくり考えつつあるときに、「あれじゃない? こっちは?」と口を出すことが、少し子どもの邪魔になっていることもありえます。じっくり考えることができる余裕を与えてみてはいかがでしょうか。

「やりたい」「おもしろい」を大切にする

回答:遠藤利彦さん

「叱られるからしないといけない」「褒められたいから頑張る」といった傾向が強くなると、「おもしろい」「やってみたい」という気持ちが低下してしまいます。ぜひ、子どもの「やりたい」「おもしろい」を大切にしてあげてください。その意味では、勉強ではなく、遊びのようにしていくことが大事かもしれません。

子どもの内側からのやる気や、一緒に楽しむことも大切だと思いますが、小学校入学を考えると、例えば「字が書けたほうがいいかな」と焦ってしまいます。

目先の心配より将来の幸せを考える

回答:遠藤利彦さん

親としては、小学校に入って困らないか心配になりますよね。ただ、目先の心配と、将来、大人になってからの幸せについて、少し考えてみてください。自分の気持ちを持って、自己主張して、自分のやる気で動いていける状態が、子どもにとって生涯を通した幸せにつながるように思えます。その意味では、小学校で困らないための準備だけに、乳幼児期を使わないほうがいい。乳幼児期だからこそできる経験といえば「遊び」です。子どもは、遊んでいる最中に、いちばん頭を使います。そんな経験を尊重してみてはいかがでしょう。


子どもが自分で考えて行動するのが苦手… どう接したらいい?

小さいころから子どもに先回りして口出ししてしまったせいか、娘は親の顔色をうかがって指示を待つようなところがあります。学校の先生からは「明るく友達も多く、クラスのリーダー的な存在ですが、失敗を気にしすぎて、自信がないようなところがある」と言われました。自分で考えて行動することが苦手かもしれません。今後どう接していけばいいでしょうか?
(お子さん7歳のママ)

小さいときからちゃんとしている子は評価されないと落ち着かなくなる

回答:柴田愛子さん

おそらくお子さんは賢い子で、「やってね」と言われると、それができる子なんでしょうね。最初から失敗だらけの子であれば違ったかもしれません。小さいときにちゃんとしている子は、わりと幼稚園・保育園でもちゃんとした子で、評価されないと落ち着かなくなってしまいます。それを崩してあげたほうが、楽に生きることができると思います。

子どもの成長には自己主張と自己抑制の両方が必要

回答:遠藤利彦さん

「褒められたい」は、子ども共通の思いですよね。ただ、「褒められ中毒」と言われるように、褒められてばかりいると、褒められないことを怖がります。チャレンジして可能性を広げていけるところで、守りに入って自分でそれを狭めてしまうようになりがちだといわれることもあります。
ただ、自分を抑えて「いい子でいる」といった「自己抑制」と、自分の本当にしたいことを伝えていく「自己主張」は1つの軸の両極、相反したものではなく、両方独立した力です。自己主張と自己抑制、両方できることが健康だと考えてください。

接し方など、親としてできることはありますか?

大人が自分の失敗談を笑って話す

回答:柴田愛子さん

おそらく「頑張らなくていいんだよ」という言葉は通じないと思います。頑張ることが常だからです。そこで、親が「私が子どものころは、こんなことがあったのよ」と自分の失敗談を、笑いながら話すのはどうでしょうか。子どもたちは、親や大人の失敗した話が大好きなんです。うまくいった話には興味を持ちません。
例えば、外泊でのおねしょが心配なとき、「私ね、4年生までおねしょしてたの」と言うと、子どもたちはホッとするわけです。ほかにも、「こんなことをしてたら食器を割ってしまった」「小さいときは〇〇が食べられなかった」のように、大人もいい子だと評価されない姿を持っていたことに安心するのです。
そんな話を、明るい雰囲気で話すと、子どもたちのガードがゆるくなって変わっていきます。お風呂のときなど、気持ちがリラックスしているときに、一緒に笑いに巻き込みながら話せるといいですね。


こんなときどうする? 砂場でシャベルを横取りされたとき

砂場で子どもと遊んでいると、わが子が使っていたシャベルを横取りする子がいました。公園で遊んでいると、よくあるシチュエーションですね。こんなとき、どうしますか? 子育て中のご家族と、専門家に聞きました。

子どもの気持ちを優先させて、「今はこの子が使っているから取らないでね」と言いたいですが、なかなか言えないというのが正直なところですね。
(お子さん2人のママ)

その子の保護者が近くにいたら、同じ年の子ぐらいだろうし、きっと「一緒に遊ぼうね」と言って、大目に見て貸してあげるかもしれません。
(お子さん3人のママ)

以前は、「どうぞ」と言って貸してあげるような考えでしたが、今は「嫌だったら嫌って言っていいよ」のように、子どもの気持ちも大事にしたいと思っています。別のシャベルをあげたりして、相手の子の気持ちも傷つけないように意識しています。親同士の関係も考えると難しいですね。
(鈴木あきえさん/MC)

最近「これだな」と思ったのは、そこで起こってる状況を、大きい声で周りに知らせることです。「この子が持ってたシャベルを貸して欲しい。さあ、2人はどうするのか」のように実況するわけです。すると、周りが2人の関係性に注目して、公共の場になります。みんなが「どうなった」と気にして、見てくれます。
(古坂大魔王さん/MC)

子どもの反応をみる

回答:遠藤利彦さん

まずは、子どもがどう反応するかを見ることが基本になります。子どもにとって「嫌だ」という気持ちが強い場合もあるし、「この子だったら、貸してもいいかな」と思う場合もあります。そのときどきの子どもの様子と気持ちを見てあげるのがいいですね。

一緒に遊びたいから横取りすることもある

回答:柴田愛子さん

おもちゃの取り合いは、よく問題になりますね。でも、様子をよく見ていると、おもちゃが使いたくて取り合いになるときと、おもちゃを持っている子と遊びたいから近づいて取り合いになっているときがあります。一緒に遊びたい場合は、ほかのおもちゃで「これはどう?」と言ってもだめなんですね。
もちろん、おもちゃそのものの取り合いもあります。でも、少し大きくなってくると「一緒に遊ぼう」と素直に近づかないで、その子のものを取り上げることで近づくこともあります。そういった、子ども同士のコミュニケーションの形もあるわけです。

子どもたちに任せて見守る

回答:柴田愛子さん

古坂さんの実況中継は、仲裁をせずに子どもに任せているところがいいですね。私の場合は、取り合いが長くなってくると、「あなたも使いたい?うん。あなたも使いたいの?うん。困ったね」と言います。「困ったね」と言っていると、なんだか子どもたちも疲れてきて、「それでいいや」など、自分たちで折り合うことを見つけていくんです。
また、「困ったね」と言っていると、まわりの子が聞いて別のおもちゃを持ってきてくれるなど、思わぬ方向に転換して解決することもあります。いつも大人が解決する必要があるわけではなく、子どもの思いを見守っていてもいいのではないかと思います。

自分で育つ力がある子に親の願いや評価が入ると、育つものも育たなくなる

コメント:柴田愛子さん

長い間、子どもたちを見ていると、みんな自分でその子らしく成長していくと思えます。その子なりに、自分のカリキュラムを持っているように感じるのです。子どもに育つ力があるのに、親の願いや評価などのいろんなものが入ると、自分の本来の心の動きを否定してしまいがちで、育つものが育たなくなる。親の思い描くような成長と違いがあっても、「この子はこういう子なのね」と考えてほしいと思います。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです