子どもがスマホやタブレットに夢中になっていると、心配になることはありませんか? 「どれぐらい見せても大丈夫?」「ことばの発達に問題はない?」など、メディアとのつきあい方について、専門家と一緒に考えます。

専門家:
宮里暁美(お茶の水女子大学 教授)
遠藤利彦(東京大学大学院 教授)

テレビやタブレット、どのくらいの時間見せてもいいの?

息子(1歳)はとても元気で、おむつ替えのときも動きまわって困ります。そんなとき、テレビで幼児向け番組をつけると動きが止まっておとなしくなるので、つい見せてしまいます。パパは子どもと遊ぶことが日課ですが、疲れてくるとタブレットに頼りがちです。そうやって、お風呂あがりやごはんのときなど、トータルで1日2時間ぐらい見せているのかもしれません。1歳になったばかりですが、どのくらいの時間、見せてもいいのか気になります。
(お子さん1歳のママ)

幼児向け番組に注意を向けるのは自然な傾向

回答:遠藤利彦さん

赤ちゃんは、色のないものよりはあるものを、動きのないものよりはあるものを、そして、シンプルなものよりは中程度に複雑なものを好みます。幼児向け番組は、そのような特徴などに十分配慮されているようです。子どもが注意を向けるのは自然な傾向ですので、心配することはないでしょう。

生活に影響が出ないように気をつける

回答:遠藤利彦さん

スマホやテレビなどを見る、一般的にスクリーンタイムといわれることについて、たくさんの研究が行われています。脳への影響、目への影響、睡眠への影響、そのほか、運動や遊び、コミュニケーションなどへの影響です。その研究結果に基づいて、いろいろなガイドラインが出されています。長時間の視聴はいろいろな問題が起きるかもしれないということで、厳しめに警鐘が鳴らされています。例えば「睡眠に影響が出るようであれば、夜はできるだけ見せない」「運動不足が気になるなら、テレビを見ながら運動する、または、見たあとに体を動かす機会をつくる」などがあります。そのように、生活に影響が出ないように配慮していけば、大きな問題はないでしょう。

親の中でルールや基準を決める

回答:遠藤利彦さん

1歳の子どもに「何時間まで」というルールを決めて守らせようとしても、効果は期待できません。一方で、親の中でルールや基準を決めておくといいかもしれません。例えば「1~2時間ぐらいまでにしよう」と決めて、少し長めに見たときは「明日は注意して、少なくしよう」のように親のほうでバランスをとる。そうすれば、子どもの見る時間がほどよい時間になるのではないかと思います。

無理にやめさせないで、次の楽しいことを提案する

回答:宮里暁美さん

1歳のころは、「もっともっと」「もう1回」といった気持ちが大事なときです。それを上手に切り上げるのは、もともと無理があると思います。だから、何か「次の楽しいこと」を提案してみてください。例えば「これが終わったら、ごろんごろんしようか」のように伝えると、子どもの気持ちを変えられるかもしれません。

終わったこと・楽しかったことに共感する

回答:宮里暁美さん

スマホなどであれば、アラーム機能を使うのもひとつの方法です。「あと5分です」のように、機械側が自ら終わるわけです。そこで、「消えちゃったね」と、終わりになってしまった気持ちに共感してみてください。「いつまで見ているの? もうおしまい」と言われて終わるような後味ではなく、「いいのが見られたね」と楽しかったことに共感してもらえて終えられるといいですね。


見せていい動画とよくない動画は、どう判断すればいいの?

私は保育士ですが、やはり保育と育児は全く違うと痛感しています。今悩んでいるのは動画との向き合い方です。
2人の子どもはスマホが大好きで、すぐに「見せて」とおねだりしてきます。一緒に歌ったり踊ったり、ブロックなどを使って想像が膨らむようなものを、できるだけ一緒に見るように心がけていました。でも、教えていないのに、いつの間にかスマホの使い方を覚えてしまい、ひとりでいろんな動画を見るようになったんです。
今では動画を見たあとに、下品なことばや絶対に言って欲しくないようなことを口にしたりします。とはいえ、いろんなことを吸収する時期で、動画から学ぶことも多いと思います。見せてもいい動画とあまりよくない動画は、どう判断すればいいでしょうか。
(お子さん4歳・2歳のママ)

大人向けに作られた暴力的・性的な動画は避ける

回答:遠藤利彦さん

過度に暴力的なもの、性的な内容が含まれている動画はよくありません。そういった大人向けに作られたような動画は避けたほうがいいと思います。

子どもは残虐性のあるアニメが好きだったりしますが、問題ないでしょうか?

残虐なだけの映像は避ける。暴力的なシーンなどは親がフォローを

回答:遠藤利彦さん

基本的に、ストーリー性がなく、ただ残虐なシーンばかりの映像はよくありません。ストーリー性があって、問題が解決するような結末で、見終わったあとに明るい気持ちになれるのか考えてみましょう。途中に若干の暴力的なシーンがあったとしても、暴力的な行為に対して親がフォローできれば大きな問題にはならないと思います。

子どもが見ているものに関心を持って会話する

回答:宮里暁美さん

昔話には、もともと正と悪をあつかった物語があります。怖い目にあったり乗り越えたりすることで、物語が成り立っています。そういうもの全てを否定するのはおかしいと思います。
ただ、知らないうちに子どもが怖いものを見てしまうと、親はフォローできません。子どもが心の中にため込んでしまうかもしれません。常に子どもと一緒に見ることはできないと思いますが、子どもが「何かじっと見ている」「何か真剣な顔をしている」と感じたら、少し家事の手を止めて確認してみましょう。「何を見ていたのか教えてね」「何か感じたの?」のように声をかけると、子どもは「こんなことだったんだ」と教えてくれるでしょう。そのように、関心を持って会話していくことが大事だと思います。

保育士でも自分の育児には悩むもの

回答:宮里暁美さん

保育士は、集団で子どもを預かってはいますが、わが子のことでは世の中の親と同じ悩みがありますよね。いろいろな子どもを見ているので、逆にわが子にどうしてよいのかわからなくなるような、難しいところがあるのだと思います。


タブレットに集中してしまう… ことばの発達やコミュニケーション能力に影響はない?

息子(4歳)は、私が夕食の準備をはじめるとタブレットを見たがります。渡さないと準備ができないし、キッチンに来ていろいろしだすと危ないので、タブレットを渡してしまうことが多いです。パパは出張で家にいないことが多いので、家事に追われると、ついタブレットに頼ってしまいます。
でも、息子はタブレットに集中しすぎると、話しかけてもまともに返事をせず、会話にならないときもあります。以前は運動が大好きだったのですが、今はタブレットが見たいと言うようになり、「遊ぼう」と誘ってものってきません。ことばの発達や人とのコミュニケーションに影響が出ないか、とても心配です。
(お子さん4歳のママ)

3~5歳の子どもの平日のスクリーンタイムは平均で約2時間、ひとり使いも多い

回答:遠藤利彦さん

2021年に、所属する大学で子どものスクリーンタイムについてアンケート調査を行いました。約1600人の親に聞いたところ、3~5歳の子どもの平日のスクリーンタイムは、平均で2時間超でした。その中で、49.4%の子どもが1時間程度ひとりで視聴しています。全ての時間をひとりで視聴しているのは29.5%でした。多くの子どもが、ひとりで使っていることがわかってきています。

自発的な働きかけや会話の機会が減ることが影響することも

回答:遠藤利彦さん

子どもがひとりでスマホやタブレットを使い、映像や音などの情報をただ受け入れ続けていると、受け身になり、自分から働きかける機会が減ってしまいます。人との会話が減少するのであれば、コミュニケーションにも少し影響が出るかもしれません。
幼児期の心や脳は、自発的に働きかけ、冒険や探索して、何かを発見したり作ったりするような経験の中で、徐々に育っていくといわれています。また、友だちなどとの会話が、心や知性の発達に重要な働きをするともいわれています。
ずっと「ひとり使い」になってしまうと、そのような機会が減ってしまい、結果的にマイナスに影響してしまうことがあるかもしれません。少し気にかけておきましょう。


メディアとのつきあい方 ~ 親子で楽しむヒント

今回、メディアとのつきあい方について考えていますが、NHK Eテレには子ども向けコンテンツもたくさんあります。MCの古坂大魔王さんも関わった映像から、親子でたのしめるヒントを紹介します。

ピョンピョンアニマルパーティー

コメント:古坂大魔王さん(MC)

多くの人が知っているクラシックの名曲・ブラームス「ハンガリー舞曲第5番」を使うことで、みんなが踊りやすくなっていると思います。歌詞もいろんな動物の名前を歌っていて、楽しい気持ちになると思います。

コメント:遠藤利彦さん

みんなが知っている曲であることは、とても大切だと思います。お母さんが知っていても、お父さんが楽しめないのでは残念ですよね。みんなが知っていれば、家族みんなで歌って踊ることができます。

コメント:ラッキィ池田さん・彩木エリさん(振付)

子ども向けのダンスの振付で大切にしてきたテーマがあります。「こうしなさい」と形をつけるのではなく、自然にやってみたら楽しくなる、遊び心を育むことです。柔軟な感性が育ってほしいという思いで、踊りの遊び心を大事にしています。ダンスというより、音に合わせた「遊び踊り」ですね。

コメント:遠藤利彦さん

体の調子が合ってくる、同調することは、「私たち友だちだよね」「仲間だよね」という気持ちを強める効果があるといわれています。それぞれ違った踊りになったとしても、同じリズムに合わせて体を動かす中で、そのような楽しい気持ちになれるのは、とてもいいことだと思います。

コメント:宮里暁美さん

子どもが欲しいのは、どんなおもちゃよりも、一緒に遊んでくれる大人なのかもしれません。自由に、曲に合わせて、子どもと一緒に大人が体を動かして遊んだら、とてもうれしい時間のプレゼントになるのではないでしょうか。

※記事の内容や専門家の肩書などは放送当時のものです