新型コロナウイルスとこれからの子育て(8)
たまには子どもにつきあってもらっては?


2020年6月27日

新型コロナウイルスの影響で、「人との距離をとる」「オンラインでのやりとりが増える」など、暮らしが大きく変化しています。子育ては今後どうなっていくのでしょうか? 子育てをどう乗り切っていったらいいのでしょうか? 専門家とともに考えます。

今回は、子どもの発達にくわしい久保山茂樹さんです。
(2020年6月5日 インタビュー)


久保山茂樹さん
国立特別支援教育総合研究所 上席総括研究員/臨床発達心理士

今回、新型コロナの影響でいろいろなことがありましたが、その時々のお子さんの興味とか関心とか、好きなものとか、そこにちょっぴりつきあうということを繰り返していけば、それでちゃんと育っていくと思います。
子どもの今後の発達について、「今こうしなくてはならない」とか、「こうしないと後から大変」っていうことは何もないと思いますから。そんなふうに思って今のこのちょっぴりつらい状況を乗り切っていってくれればなあと思います。

ちょっとつらいな、と思ったときの考え方として、「子どもに、親の趣味や興味・関心につきあってもらう」ってありだと思うのですがいかがでしょうか? こんなふうに言うと、いつも言っていることと正反対じゃないか! と言われそうですが⋯⋯。
私の趣味は鉄道。なのに、私の息子は「でんしゃ」よりも先に「ばす」と言い始めました。こんなに鉄道を愛している父親の息子なのに「ばす」とは何事!(笑)と思い、週末はいつも電車に乗せ続けました。すると「かんかん」(踏切の音)と言うようになり、息子のほうから電車を見にいきたいと訴えるようになりました。新型コロナが心配な中で、いつも子どものためになにかをするとか、子どもに合わせることが多くなってしまうとか、そんなことが続くとストレスがたまるかもしれません。でも、自分の趣味につきあってもらうことでストレスの発散にもなるし、子どもと共有するものができます。それは親子のコミュニケーションを豊かにします。そしてなによりも、子どもは何かに夢中になって目を輝かせている大人に魅力を感じます。大好きです。そうやって親子のつながりが太くなっていくのだと思います。

それでもストレスはたまるもの。そろそろ地域の子育て支援センターも開き始めているでしょうし、市役所などで健診を担当している部署では保健師や心理の専門家が相談に乗ってくれています。このような時期にストレスを感じてしまうのは誰にでもあります。「自分だけが⋯⋯」と思わずに、積極的に利用していいのです。

今このような状況で、パパ・ママはほんとうによくやっていると思います。いつも思うんだけど、自分がもし今1歳児、2歳児の親だったら、本当に大変だろうと思いますよね。その中で子育てをやっているのだから、とてもすごいことだと思います。だから、パパ・ママはもっと自分をほめていいと思うんです。大人同士でほめ合うということを考えてくれたらいいなあ。それしかない。お互いに「ボチボチでいいよね」って。「こんな状況だからさ、そんなに頑張らなくてもいいよね」って、それが一番と思います。


みなさんへのメッセージ

今回、私が「すくすく子育て」でお話しした回で、パパ・ママから寄せられた子どもの言葉の発達についてのご心配にお答えしましたが(*)、子どもの言葉って、その子の好きなものから入っていくんです。電車が好きならその関係のことば、歌が好きなら歌詞にあることば、というように。だから、その子の好きな世界を親がわかってあげることが大事です。
じゃあ、どうやったらお子さんの世界をわかってあげられるのか? 私は、「子どもが夢中になっている時に、その隣にちょっと座ってみる」ことから始めたらいいなと思います。まずは子どもと大人が並んで横にいる、それだけで十分だと思います。そうしているうちに、子どものほうがふと大人を振り返ってみたり、パパ・ママの手をとって“一緒にやろうよ”というように必ず何か発信してきます。こういう時、お子さんの視線の先を探してみましょう。お子さんの心を動かしたものがわかると思います。そして、大人が言葉をかけるチャンスです。「ニャンちゅういたね」とか「ボール、ポーンってしたいのね」などなど。この時、大人の側が話しかけすぎたり、先回りしてやりすぎたりしてしまうと、かえって子どもは引いてしまったり、発信の動きが止まってしまったりすることもあります。大人が子どもを邪魔しないように隣にそっと座っていると、子どものほうから働きかけてきますから、それを待ってみてください。

* 2020年6月5日時点のインタビューです。久保山茂樹さん出演の回「コミュニケーションとことばの育ち」はこちら