新型コロナウイルスとこれからの子育て(7)
「情報」ではなく「人」を探して


2020年6月24日

新型コロナウイルスの影響で、「人との距離をとる」「オンラインでのやりとりが増える」など、暮らしが大きく変化しています。子育ては今後どうなっていくのでしょうか? 子育てをどう乗り切っていったらいいのでしょうか? 専門家とともに考えます。

今回は、産婦人科医で災害時の親子の支援などにも携わってきた吉田穂波さんです。
(2020年5月25日 インタビュー)


吉田穂波さん
神奈川県立保健福祉大学 教授/産婦人科医

新型コロナウイルスの影響で、まわりの状況が一変しました。これまでわが子のためにと積み上げてきたさまざまな取り組みが崩れてしまうような気持ち、子どもをどう守ればいいのかを模索する毎日、このような日々は親にとって、ものすごく大きなストレスです。

15年前に私が初めての子を産んだとき、母親が愛情をもって完璧に世話をしなくてはいけない、と思い詰めていて、自分ができないことに対するむなしさとか無力感とか、悔しさとかがないまぜになって鬱々していた時がありました。そして今 ―― 私は6人目の赤ちゃんを育てています ―― 感染防止という外的要因も加わって子育ての状況はさらに苦しいものになっています。

そんな時、頼りになる情報を得たい、と思うのは自然なことです。インターネットが発達し、「検索して調べれば何でも出てくる」と思ってしまいがちな現代においては、かえって生身の人間に相談しにくい環境になっているように思います。どこかにいい情報があるのではないか、自分が探し求めていた正確な情報があるはず、と、4時間も5時間も探してしまいがちです。しかし、玉石混交の情報の渦の中には、自分にぴったりの答えがあるという可能性はすごく低く、何か知りたいことがあって、キーワードを検索すると、そのキーワードに関連付けられた情報しか出てきません。でも、生身の人間同士で相談すると(とはいっても対面では難しいことも多いので、オンラインやメール、電話という手段かもしれませんが)自分の抱く「わたしは母親失格なんじゃないか?」「どうしていいのかわからない⋯」などの不安やうしろめたさといった気持ちまで、相手に感じ取ってもらうことができます。受け止めてもらえるだけでホッとしますので、まずは「情報」ではなく、「人」を探しましょう。100%の解決ではなくても、まず生身の誰かに話を聞いてもらう方が、早く、自分の知りたいことを得られ、安心できるのではないでしょうか。

私は、他人のサポートを受ける力は誰にも備わっている、生きていくための力だと思っています。「自分がつらいときに誰かに助けてもらうのがすごく苦手」そんなふうに思っている人こそ、助けてもらう必要があります。子どものために自分が元気でいたい、そう考えると、子どものためにもサポートを受けよう、という気持ちになりませんか? そう思ったら、サポートを受けるための小さなアクションを起こしてみてください。

まず、ひとりの支援者につながることができれば、そのひとりから輪が広がっていきます。まずはひとり、話を聞いてくれそうな人を見つけてみてください。
「あなただったら相談できるかもしれないと思って電話しました」と言って、相手に対して「あなただから頼れると思った」「話せる人がいてよかった、話を聞いてくれてありがとう」と、感謝の気持ちを込めて伝えましょう。そこから必ず道は開けます。


みなさんへのメッセージ

これまでの自然災害と今回の新型コロナでは、ストレスの受け方や生活への影響などが違っても、私たちには必ず回復していく力がある、必ず先の希望が見えてくる時がある、ということは共通しています。だから、苦しいときも、誰かと一緒に「ちょっとずつよくなってきたね」「少しずつ戻ってきたね」という部分を確認しながら、小さくてもいいので、感謝や喜び、希望などのポジティブな感情を持ち続けましょう。
これまでの災害に立ち向かってきた経験から、活かせることもたくさんあります。子どものストレスに対処するには、いつも以上に、「あなたはとても大事な存在だよ」と伝えることが重要です。難しいことではありません。一緒に遊ぶ時間をとる、子どものまねをする、子どもに決めさせる、など相手を尊重し承認することから始めてみてください。子どもも家族の一員、ということで、その子の年齢に合わせて家事を分担してもらうのもいいと思います。どんなに先が見えない状況でも、親は子どもの心のシェルターです。家族のメンバーで一緒に乗り切っていこうね、という親の愛情深い気持ちを伝えれば、子どもは必ず親の愛情を感じ取ってくれると思います。