新型コロナウイルスとこれからの子育て(6)
ママたちは自分の疲れに目を向けて


2020年6月17日

新型コロナウイルスの影響で、「人との距離をとる」「オンラインでのやりとりが増える」など、暮らしが大きく変化しています。子育ては今後どうなっていくのでしょうか? 子育てをどう乗り切っていったらいいのでしょうか? 専門家とともに考えます。

今回は、産前産後の母子支援が専門の市川香織さんに伺いました。
(2020年5月22日 インタビュー)


市川香織さん
東京情報大学 准教授/助産師

新型コロナウイルスの影響で、子育ては変わるのか? というと⋯⋯ 子育ての環境って実はあまり変わらないのではないかな、と思うんです。子どもを産むこと、それから育てることは、周りの事件や状況によって壊滅的になる、ということがほとんどありません。東日本大震災の時も震災が起きた直後に生まれた赤ちゃんもいて、それが希望の光になったことを思い出してみてください。特に、生まれたばかりの赤ちゃんとママの生活というのは、新型コロナの影響がなくても、家の中で母子で過ごすということが多いと思うので、特別に何かをしなきゃいけないとか、これを変えていかなければいけないということはないんですね。だから、これまでと同様に、赤ちゃんの状況を近くで見てあげられるママが健康であることが一番大切なんだと思います。ママがいつも通りちゃんと食欲があるか、眠れているか、ニコニコしているか。周りの方はママのそういったところを丁寧に見てほしいですし、ママ自身もそのことに気を配ってほしいなと思います。

でも、中にはつらい気持ちになったり、つらい状況におかれていたりするママもいるかと思います。今回のことは、誰のせいでもなく、感染症のせいなのですが、見えないものと戦うのは本当につらいことです。涙が止まらなくなる、自分を責めてしまう、そんな時には、積極的に自分をケアすることを考えていただければと思います。

私は産後ケアを研究テーマにしているのですが、産後ケアを受けたママたちに、ケアを受けた体験をどのように感じているか、調査したことがあります。そういうママたちの声の中で共通していたのは、「ケアしてもらうことで初めて自分の疲れに気づいた」というものでした。お産を終えた後というのは、ママたちは興奮している状態で、そのまま休みなく育児に突入します。右も左も分からないまま、必死で赤ちゃんと向き合って育児をする。そちらを優先しているので、自分自身を癒やす時間というのが取れずに、とにかくまっしぐらに走っているという感じですよね。そんな中で助産師などにケアをしてもらって、「とにかく今は休みなさい」「あなたには今、休息が大事だと思いますよ」ということを伝えてもらったことで、ママたちが「ああ、私、ずっと走ってきちゃったんだ」「ああ、私は疲れていたんだ」など、そういうことを深く実感したというお話をたくさん伺いました。人間は本当に大変な時、渦中にいる時というのは自分のことはあまり見えない。他からケアされて初めて自分の疲れにもやっと気付くことができるということです。そして、その調査の結果から、それだけママたちが頑張っている状況が、いまの子育てそのものなのではないか、と感じました。だから、子育て中のみなさんには、いま自分が頑張りすぎていないか? ということに注意して、頑張りすぎにならないように気をつけてほしいなと思います。

そして、大変な子育ての時期を、家族や友達と助け合って乗り切っていっていただければと思うのですが、それにぜひ専門家も加えていただきたいと思っています。みなさんが、専門家にも遠慮なく助けを求めることができるようになってほしい。場所によって、まだサービスに差があるのですが、ぜひ「いいサービスを受けて助かった」「こういうサービスをしてくれるとよかったのに」という声を、みなさんもあげてほしいと思います。妊婦さんや小さい子どもがいる家庭は、どうしても社会的弱者になってしまいがちなので、そういうニーズを社会や行政にきちんと届けるためにも、ぜひぜひ声をあげてほしいなと思います。ママが声をあげる余裕がなければ、パパや周りのかたがぜひ代わりに伝えてほしいです。


みなさんへのメッセージ

妊産婦さんや子育て家庭をどう支援していくか、ということを考えるときに、「人間関係」がカギになるのではないかと思っています。今回、外出自粛の時期を経て、つながることの大切さがよりはっきりしたような気がするんですね。オンラインの画面を通じて、あるいは電話で、などというように手段は変化したかもしれませんが、人とつながることで自分の気持ちが安定するとか、人に話を聞いてもらうことで落ち着くとか、そういったことは昔から変わらないのだと思います。つながり方に変化があるにしても、人と人とのつながりは、これまで以上に大切になっていくだろうと思います。支援する側も、オンライン助産師相談、オンライン両親学級など、プラスの面を活かしながら、新しい支援の方法を模索している最中です。みなさんが必要としている支援のかたちについて、どんどん教えてほしいと思います。

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