新型コロナウイルスとこれからの子育て(5)
時間がたってからの疲れにも気をつけて


2020年6月13日

新型コロナウイルスの影響で、「人との距離をとる」「オンラインでのやりとりが増える」など、暮らしが大きく変化しています。子育ては今後どうなっていくのでしょうか? 子育てをどう乗り切っていったらいいのでしょうか? 専門家とともに考えます。

今回は、子育て家族のメンタルヘルスにくわしい立花良之さんに伺いました。
(2020年5月21日 インタビュー)


立花良之さん
国立成育医療研究センター こころの診療部 乳幼児メンタルヘルス診療科 診療部長

新型コロナによる影響が続いています。こういう時期に、お母さんやお父さんご自身が不安になったり、ストレスを感じたりするのは、異常なことではなく、どんな人でもあり得ることかと思います。

今回の新型コロナウイルスによる影響で、いってみれば通常の状態ではない“非常事態”になったわけですが、自然災害などでも、“非常事態”が起こります。新型コロナと自然災害による影響は、共通のところもあれば、異なるところもあります。

新型コロナの影響が、自然災害と異なるのは、社会的には「このウイルスがどういうふうに収束していくのか」「社会にどんな影響を及ぼしていくのか」ということが見えないということです。そして、個人の心理でも、「自分が感染してしまうのか」「家族が感染してしまうのでは」「周りの人がどれくらい感染しているのかわからない」など、さまざまな面が不透明なまま進んでいくため、不安を抱きやすいという特徴があります。これは、一般の災害の影響とは性質が違うところかなと思います。

新型コロナと自然災害の影響で共通するのは、発生直後に、これまでと状況ががらっと変わることから人々の不安がかきたてられる、精神的に調子を崩す方が多い、というような部分です。こういった災害後の心の反応は、発生からの時期によって違います。災害の急性期・中期・晩期などといいますが、時期によって周囲の状況や人々のメンタルヘルスが違ってきます。今は、東京はまだ緊急事態宣言が解除されていない時期ですが、私がお話しした回が放送されるころには中期に移行しているかもしれません(1)。中期になると、ストップしていた社会機能がだんだん回復してきます。そうすると、人々の状況も変わってきて、今までの生活を取り戻していきます。でもその一方で、周りの人はもとに戻って以前のように元気にやっているのに、自分はまだ大変な状況で取り残されているような気がするなど、とつらい気持ちを抱えることになる方もいらっしゃるかもしれません。そういった場合、ぜひひとりで抱え込まずに、相談できる場所(2)や信頼できる方に話をするなどのことが重要になってくるのではないかなと思います。

本当に心が疲れてしまうと、ご自分で相談の電話をしたり、アクションを起こしたりすることが難しくなりますので、ぜひ周りの方は、表情の変化などをみて、様子がいつもと違うようであれば声をかけるなど気にかけてあげて、必要があれば相談にのるなどサポートをしていただけるといいなと思います。

急性期に一生懸命まわりの方のためにがんばってきた方は、その疲れが出やすくなるともいえます。今までがんばってきたお母さんたちは、特にご自身のセルフケアを心がけていただければと思います。

また、このコロナ禍はネガティブな部分だけでなく、ご家族にとってポジティブな面も持ちうると思います。ご家族で過ごす時間が増えることで、これまで以上に時間をかけていろいろなことを話し合ったり楽しんだりする機会が増えるかもしれません。そのようなポジティブな面を日々の生活に意識されることも良いのではと思います。「ポジティブなことなど考えられない」ようであれば、心が疲れている時かもしれません。そのようなことは誰にでもおこりえます。そのような時こそ、ご自身のセルフケアが大切です。無理をしないこと、あまり頑張りすぎずに、手を抜けるところは手を抜くことなど、一人で抱え込まずに周りのひとに相談することが大切です。

1) 2020年5月21日時点のインタビューです。立花良之さん出演の回「子育て家族のメンタルケア」はこちらへ
2) 相談先:保健センター、子育て包括支援センター ※最寄りの相談先については母子手帳を交付されたところへおたずねください
*参考資料:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する提言(日本精神神経学会 精神保健に関する委員会)※専門家向けの文書です
https://www.jspn.or.jp/modules/advocacy/index.php?content_id=84


みなさんへのメッセージ

発生から時間がたってくると、それまでがんばってきた人、困っている人を支援する側にいた人などに疲れがたまってくることがあります。まさにお母さんは、家庭の中で、家族のいちばんの支援者となっていることも多いのではないでしょうか。今まで気持ちを張り詰めてがんばってきたお母さんが、中期以降の時期に疲れがたまって、ぐったりしてしまったり、体のさまざまな症状が出てきたりすることもあり得ます。そういったサインに目を向けていただいて、何か心身のサインが出たときには、「自分は疲れてきたんだな」と気づき、自分をいたわってあげるようにしてほしいと思います。「がんばりすぎない」ということが、発生直後を抜けた時期に、ますます大切になってきます。