新型コロナウイルスとこれからの子育て(1)
自分に目を向ける「自分の時間」を


2020年5月30日

新型コロナウイルスの影響で、「人との距離をとる」「オンラインでのやりとりが増える」など、暮らしが大きく変化しています。子育ては今後どうなっていくのでしょうか? 子育てをどう乗り切っていったらいいのでしょうか? 専門家とともに考えます。

今回は、子ども、親の心理に詳しく、子育て家族に寄り添ってきた大日向雅美さんに伺いました。
(2020年5月15日 インタビュー)


大日向雅美さん
恵泉女学園大学 学長/発達心理学

「すくすく子育て」で「自分の時間」というテーマでお話ししました。自分の時間を持つということは、子育て中の永遠のテーマなのですが、それにしても、この3か月間ほどは、外出自粛や登園自粛で自分の時間がとれず、みなさん本当に大変だったのではないかと思います。

この新型コロナウイルスの問題は、一気に終息するとは言えないようですね。むしろ、ウイルスと共存することも必要と言われている中、これから、新しい暮らし方にみんなが慣れていく段階を迎えるわけですが、そうした生き方に向けてソフトランディングするひとつのきっかけになるのが「自分の時間」を探すことなのかなと思っています。

子育て中は、自分の時間をとろうとしても、そもそも工夫すらできない場合だってありますね。「つらい気持ちや状況を分かち合ってくれる人がいない」とか、「朝から晩まで子どもにまとわりつかれて、どうやって自分の時間を作ったらいいの?」というママもいらっしゃるでしょう。ますますつらい気持ちになってしまいますよね。

でも、そのときに3分でも5分でもいい。心を自分のことだけに向けてみてはいかがでしょうか。今から5分だけでも、トイレに入る時間だけでも、「私は自分の時間を大事にしよう」と思って、心をこう解き放つところからまずスタートしてみるのです。ほんの少しでいいから、フッと自分だけのことを考える自分の時間を持っちゃう。言ってみれば、自分に閉じこもっちゃうような感覚かもしれません。そのことで、不思議と心は解放されることがあります。

どうしても自分のことだけに心が向かない、というときは、もしかして、「そういうことをするのはわがままだとかぜいたくだ」という心の壁が、自分の心の中にあるのかもしれません。その壁を取り払ってみていただければと思います。
心理学で、「マズローの欲求5段階説」というのがあるんですが、いちばん基本は、食事などの生理的な欲求。その次に、安全の欲求、人や社会と関わっていきたいという社会的欲求、自分のことを認めてほしいという承認欲求が続いていきます。そういうことを全部整えられたときに、自分の力をもっともっと高めていこうという自己実現欲求が出てきます。自分の時間を持つということは、こうした欲求のすべてにつながること、人が人として生きていくうえで、当然の欲求です。息をするように自然な欲求なのです。自信をもって、ご自分やご自分のもつ欲求を認めていただきたいなと思います。


みなさんへのメッセージ

子育てではイライラすること、つらいこと、いろいろな葛藤があります。そんなとき、「こうすれば楽になる」とわかっていても、うまく行かないこともあります。どうしても自分の時間をとるなんて無理、ということもありますし、自分がずっと同じところにとどまっていて、少しも進んでいないような感覚になることもあるかと思います。
そういうとき、私が一番申し上げたいのは、「完璧を目指さないこと」です。みなさん、子育てでは、もっとハードルを下げていいんじゃないかしら。目標を立てたとしても、実際に今日1日、できたことは半分しかできなかった。4割、3割だったとしても、「これでいいんだ」と思っていただきたいですね。

子育てって完璧じゃなくていいんですよ!って、常々、私は言い続けてきました。新型コロナウイルス感染拡大予防のために思うように外に出られなくなったり、人に頼ることも会うこともできなくなったりするこういう状況では、もっと、もっと声を大きくしてお伝えしたいと思います。完璧なんて目指さなくていいんです!