専門家からのアドバイス・メッセージ(11)
子どもの発達への影響・伝え方について


2020年4月27日

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、不安・イライラが募る⋯⋯ 子育て中のみなさんから、さまざまな不安の声が番組に寄せられています。こうした不安の声や質問について、「すくすく子育て」でおなじみの専門家の方たちから、回答やアドバイス、メッセージを寄せていただきました。

外出自粛が続く中で、子どもの発達に影響が出るのではないか、と不安に思う方も多いかもしれません。今回は、子どもの発達や、子どもへの説明のしかたなどについて、愛着関係や心の発達に詳しい遠藤利彦さん(東京大学大学院 教授/発達心理学)に伺いました。


子どもにどうして外にいけないの? と聞かれます。どう伝えたらいいでしょう?

新型コロナウイルスの影響で、外に出ないで過ごすことが多くなりました。子どもは不満そうで、「どうしてお外にいけないの?」と何度も聞いてきます。これまでと同じような生活ができなくなっていることを、幼い子どもにどう伝えたらいい?

回答:遠藤利彦さん

親の不安な気持ちを感じ取ったり、保育所に行けなかったりなどの事情から、子どもたち自身も、ふだんとは違う状況だと感づいています。ですので、新型コロナウイルスの問題を隠して伝えないのは、すごく不自然だといえます。子どもにとって、極端なものでない限り、怖いことに接すること自体はそう大きな問題ではありません。極力、子どもを怖いものから遠ざけ、怖い思いをさせないようにすることよりも、むしろ、怖いものに接して「怖い」という感情を持ったり、「不安」という感情を持ったときに、ちゃんと大人が「怖い」「不安」という感情をうまく調節して立て直して、安心感を与えてあげることが重要なのです。だから、「今、怖いことが世の中に発生しているけど、大丈夫だよ」という感覚を、親御さんやご家族の方がしっかりと子どもに与えてあげるようにしてください。

例えば、「世の中にバイ菌のようなものがはやっていて、それで病気になってしまうことがあるんだよ、でも、気をつけていれば病気にならないよ」「触ったときは、ちゃんと手を洗えば大丈夫だよ」「いろんなものにベタベタ触ったりしないように気をつけようね」など、「怖いものは避けられる」ということを伝えてください。また、ふだんの生活と同じように友達と遊んだり、保育所の先生と会ったりするのは、今は少し難しいんだという現状も、「怖いけど避けられる」こととあわせてであれば、ちゃんと伝えていいと思います。


友達との関わりや外遊びが少なくなりました。子どもの発達に影響はありますか?

登園しなくなったので、友達との関わりや外遊びなどが少なくなりました。こういうことで、子どもの発達に影響が出るのではないかと心配です。子どもの発達のために、親ができることは何かありますか?

回答:遠藤利彦さん

子どもの発達を、長期的な視点で見ていく必要性があると思います。例えば、半年とか1年という期間で見たとき、今は家族との関係性が主になっているけども、いつになるかはわかりませんが、この状況が好転していけば、やがてまた友達との関係や保育所の先生との関係が持てるので、そこでバランスを取っていけると考えていただければと思います。今は、これまで時間がなくて十分に持てないでいた、親子の関わりや家族内の関わりなどを、逆にもっと充実させるための絶好の機会だと発想の転換を図ってみるとよいかと思います。

今できることとしては、ときどき家庭で友達や先生の話をしたり、スマホやタブレットなどを最大限いかして友達同士のコミュニケーションをとってみることも考えてみてはいかがでしょうか。例えば、親御さんがオンラインで友達のお父さんお母さんとつながって、そこに子どもたちを呼んであげる。そうすると、子どもたちも対面で顔を合わせながら、やりとりすることができます。


外出自粛になってから乱暴に⋯⋯。どう対応したらいい?

外出自粛になってから、上の子が下の子に暴力をふるうようになりました。いままではかわいがってくれていたのに⋯。見つけるたびに叱ったり、なだめたりしますが、おさまりません。私もつい厳しくなってしまいますし、こんな毎日が続くことがしんどくなってきました。どう対応すればいいですか?

回答:遠藤利彦さん

上の子が下の子につらくあたるようになったのは、親御さんにとってはすごくしんどいことですよね。でも、上のお子さんは上のお子さんですごくストレスを抱えているかもしれません。
子どもにとって、今の状況は、自発的に何かしたいのにすることができないのでフラストレーションがたまるものです。特に、上の子が幼児期・児童期であれば、どんどん興味・関心が広がる時期なので、それが制約されてしまうのはストレスが大きいと思います。
こういう場合の対応で気をつけたいのは、上の子の暴力行為をやめさせることだけに注意が向いてしまうとむしろ逆効果になる可能性があるということです。
「こんなことやめなさい」というように、ただ行為を禁止するばかりではなく、上の子は上の子ですごく感情を持て余して、つらい思いをしているかもしれないので、そのつらさに親御さんが気をつかってあげる。子どもは「自分がケアされている」という気持ちを持つことができると、その分だけ気持ちは和らいで、少し優しくなれるかもしれません。暴力をやめさせることだけに注意を向けてしまうと、逆にそれを禁止された上の子の行為がエスカレートしてしまうことがあります。

もちろん下の子もつらいんだけれども、上の子もつらい。それぞれの子どもの気持ち、つらさに寄り添うということを考えていただけるといいかなと思います。大人もそうかも知れませんが、子どもは、自分がやってしまった悪いことを、ただ「しかられる」だけではなく、自分の気持ちを受け入れてもらって「ゆるされる」ことを通して、「自分が悪かった、すまない、ごめん」という正当な罪悪感を持つことができるようになるのです。


子育てしているみなさまへのメッセージ

遠藤利彦さん

今は大人だけではなく、子どもも大変な時期で、ストレスを経験している状況です。この状況はふだんにはないことなので、お子さんの中には、すごく不安になったり、すごく怖いと思ったり、すごくイライラが高じてきたりと、いろいろな形でその兆候が出てくることがあります。そういうマイナスな感情、ネガティブな感情が生じたときに、子どもは感情の立て直しをはかろうとしますが、自分自身でうまく立て直すことができないときには、誰か他の人に立て直してもらおうと考え、親御さんや家庭の中にいる大人にくっついていって、その人たちから「もう大丈夫だよ」という安心感を与えてもらおうと働きかけます。この「安心感」というものが、しっかりとお子さんの中に経験されていれば、基本的にはお子さんの発達は健康な状態を維持できていると考えてください。

重要なのは、つらい状況の中で嫌な気持ちを持ったときに、嫌な気持ちをちゃんと立て直してもらえるという安心感です。安心感を持つことができれば、制約された状況であったとしても、お子さんの興味・関心というのはいろいろなものに向かっていきます。そして、大人の目にはそうは見えなくとも、狭い中でも、お子さん一人ひとりのやり方で探索や冒険ができるのです。できれば、ときどき、そういうお子さんの興味・関心を大人も共有してみてください。お子さんが関心を持っているものを話題にして、会話を交わしてみたり、表情でやりとりをしてみたり、そのような小さい積み重ねを心がけていただけると、お子さんの発達は、ずっと変わらず健康なものになるでしょう。

もうひとつ強調しておきたいのは、子どもの想像の世界は無限大だということです。今は物理的な世界を広げる、つまり、外に出て思いっきり遊ぶのは難しいかもしれません。しかし、お子さんの頭の中で、空想や想像は果てしなく広がっていきます。例えば、いろんなごっこ遊び、ふり遊びなどを通して、子どもは、いろいろな大切な心の要素を発達させていくことができます。時々、お父さんお母さんも、お子さんの想像や空想の世界に一緒に参加して、お子さんとともに楽しむことができれば、いままでにはなかった親子の関係を作れるかもしれません。
この状況は、ピンチではあるけど、親子関係、家族関係を見つめ直して、いいものに作り変えていく、そういうチャンスでもある。ピンチをチャンスにしていく、そう考えていただけるとうれしいな、と思います。