専門家からのアドバイス・メッセージ(7)
イライラが子どもに向かわないために


2020年4月16日

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、不安・イライラが募る⋯⋯ 子育て中のみなさんから、さまざまな不安の声が番組に寄せられています。こうした不安の声や質問について、「すくすく子育て」でおなじみの専門家の方たちから、回答やアドバイス、メッセージを寄せていただきました。

今回は、子どもの虐待問題に詳しく、多くの家族の相談にのってきた玉井邦夫さん(大正大学 心理社会学部 臨床心理学科 教授/臨床心理学)です。


イライラがたまって、子どもに手をあげてしまいそうになる⋯⋯

新型コロナウイルスの影響で子どもと家にこもりきりの毎日。イライラがたまって、子どもに手をあげたくなったとき、どうすればいい?

回答:玉井邦夫さん

まず、子どもが大人をイライラさせるのは当たり前のことだ、と考えてください。子どもは大人に比べて、日々の生活の中で物事を決めたり実行していく力が乏しいものです。子どもの生活は、大人(家庭生活であれば、ほとんどは親)の保護と判断がなければ成り立ちません。現在のように日常的な活動が制限され、経験したこともない生活状況に置かれれば、子どもが大人に対して「なんとかしてくれ」というSOSを発信することは当然です。子どもが困っていることを伝えようとするやり方は、子どもが幼ければ幼いほど、大人にとってはイライラするようなパターンをとります。そうでなければ大人からの救援を得にくいからです。子どもの泣き声がいつまでも聞いていたいような心地よいものだったら、誰も助けに行こうとしないのですから。

今のような生活ならば子どもはイライラし、それを大人にぶつけてくる。それは当たり前だと考えた上で、大人自身もイライラしているということを認めてください。それも当然のことです。ただ、大人が子どもと異なるのは、自分がイライラを感じる理由や経過、そして自分のイライラの程度を理解できることです。イライラはどこで感じるのでしょうか? どのくらいの強さでしょうか? イライラのメーターを、どんなイメージでもいいですから見つけるようにしてください。速度計でも温度計でも、スマートフォンのバッテリー表示でもいいです。自分のイライラが子どもに手をあげたいと感じるのは、速度でいえば何キロ、温度で何度、バッテリーの何%のところでしょうか。イライラしている自分を認め、その程度を判断することは、イライラとつきあい、先回りすることにつながります。

その次は、今度はイライラとは反対の、「くつろいだ」とか「安心できる」「ほっとする」という刺激や感覚を見つけましょう。バスタブの中? 大好きな絵や音楽? 食べ物? ひたすら洗濯物をたたむ作業? 冷蔵庫に残った食材を組み合わて作る一品? そこには、自分を癒してくれる感覚や行為があるはずです。自分のイライラの程度が自分で決めたところまできたら、自分を「安全」に導いてくれる感覚や作業に切り替えてみるようにすること。自分の頭の後ろに、「自分を見ている自分」を思い浮かべて、そのもう一人の自分が「あなた、イライラしてるよ。洗濯機でも回してみようか」と語りかけてくれるようなイメージを持っていていただきたいと思います。


どこに相談すればいい?

子どもへの暴力や暴言が止められない。どこに相談すればいい?

回答:玉井邦夫さん

通常、もっとも身近なのは家族や親族、友だちなど、自分のプライベートな領域での人間関係の中で自分の気持ちを吐き出して、助言や共感をもらい、励まされることです。しかし、そうしたプライベートでの支えがうまくいかず、はっきりと子どもに当たってしまう状態までいっているとしたら、プライベートを超えた範囲に助けを求める必要が出てきます。
どの自治体でも、母子保健の部局には子育て支援の相談窓口があるはずです。たいていはそれがいちばん気楽にアクセスできる窓口になると思います。自分が子どもにしていることが自分でも怖い、止められない、というほどに苦しいときには、「189」という虐待防止ダイヤルに電話すると、お住まいの地域の児童相談所に繋がります。

<相談窓口>

  • 地域の保健センター
  • 地域子育て支援拠点
  • 児童発達支援センター
  • 児童相談所
  • 子育て世代包括支援センター
  • 小児科
  • 産婦人科
  • 助産院 など

子育て中の方へのメッセージ

玉井邦夫さん

子どもを育てるということは、それだけで十分に大変なことです。現在、私たちの生活を襲っている新型コロナウイルスは、どんな人にとっても平常心を失わせて当たり前のような広範囲で見通しのつかない状況を作り出しています。ですから、ただでさえ大変な子育てが、より危機的な状態になることもあって当然でしょう。
イライラという心の状態は、足元で渦巻いている泥水のようなものだと思ってください。見つめていると引き込まれそうになります。飛び込んでしまったら、きっと泳ぎ切れず、のみ込まれてしまうだろうと怖くなります。渦巻く泥水にのみ込まれたくなかったら、まずはその渦巻きから離れることです。しっかりと立っていられる固い地面の上まで遠ざかること。それが、「Q1」でお伝えしたことです。
それでももう逃げられなさそうだ、飛び込んでしまいそうだ、というところまできていたら、ロープや、つかまる杭が必要です。それが、「Q2」でお伝えしたことです。
助けてくれと発信するのは恥ずかしいことではありません。人間の力は、助け合えること。あなたが誰かに相談することは、相談された人にとっても単なる負担ではなく、誰かの力になれているという救いにもなるはずです。