専門家からのアドバイス・メッセージ(6)
産前産後のママのメンタルケアについて


2020年4月15日

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、不安・イライラが募る⋯⋯ 子育て中のみなさんから、さまざまな不安の声が番組に寄せられています。こうした不安の声や質問について、「すくすく子育て」でおなじみの専門家の方たちから、回答やアドバイス、メッセージを寄せていただきました。

今回は、産前産後の母子支援が専門の市川香織さん(東京情報大学 准教授/助産師)に、産前産後のママのメンタルケアについて伺いました。


安心して出産・子育てをするためにどうしたらいい?

新型コロナウイルスの影響で両親学級が中止されてしまい、夫の立ち合い出産も病院から禁止されてしまいました。こんな状況で出産するのかと思うと不安です。安心してお産、その後の子育てをするために、どんな準備をしておけばいいでしょうか?

回答:市川香織さん

新型コロナウイルスの影響で、予定されていた両親学級のほとんどが中止になっています。また、出産の時、病院へ行く妊婦さんへの付き添いが禁止になったり、立ち合い出産もできなくなったりと、さまざまな影響が出てきています。お産は、ただでさえ不安や心配が尽きないものなのに、妊婦さんたちにとっては、さぞ心細いことだろうと想像しています。

最近、少しずつ浸透してきている「産後ケア」をご存知ですか。出産後に助産師から心身のケアや育児支援が受けられる仕組みです。自治体によっては、やむなく中止されているところもありますが、「アウトリーチ型」と呼ばれる、利用者のお宅に助産師自身が直接出向く方式の産後ケアを継続している自治体は、まだあるようです。もちろん、お互いのヘルスチェックは入念にきちんと行ったうえでの訪問になります。この状況では、赤ちゃんのことも自分自身のことも不安でしょうから、医療の専門家とつながることができると、とても心強いですね。できれば妊娠中から、お住まいの自治体に「産後ケア」があるか問い合わせておくといいと思います。もちろん、出産後の方でも相談できる制度です。

「産後ケア」が中止されている、あるいはまだ制度が整ってない自治体であっても、保健師が電話相談での対応を増やそうとしています。もし、相談したいことがある場合は、まずはみなさんが母子健康手帳を交付されたところへ連絡をしてみてください。そこで、どんな相談先があるか教えてもらえると思います。
また、直接助産師に相談したい、不安な気持ちを聞いてほしいという場合は、助産師会でも無料電話相談を行っていますので、利用することをお勧めします。

妊娠中や出産直後は、精神的に不安定で、不安な気持ちが通常よりふくらんでしまうことがよくあります。そんな時、パパなど周りの方は心細そうにしているママをサポートしてあげてください。助産師など専門家の力はもちろん大きいのですが、親身になって支えてくれる方がいてくれることの力は、何より大きいと思うのです。

*公益社団法人日本助産師会 全国の相談窓口一覧
www.midwife.or.jp/general/supportcenter.html


気持ちが沈んだり涙が出たり⋯ どうしたらいいのかわかりません。

無事、赤ちゃんが生まれてきてくれて、うれしくてしかたないと思う一方で、突然、気持ちが沈んでしまったり、涙が止まらなくなることがあります。新型コロナウイルスへの不安のせいで、こんなふうに感じるの? 私が悪いのかしら、とも思うのですが、どうしていいかわかりません。

回答:市川香織さん

多くのママが、産前産後にこんなふうにつらい気持ちを抱えることがあります。さらにそのことから「私は母親失格だ」などと思い込むようになると、ますます自分で自分を追い詰めてしまうでしょう。まずは、十分に睡眠をとりバランスのよい食事をすることを心がけてください。そして自分ひとりで頑張りすぎないことを意識してみてください。気持ちが不安定になりやすい時期は、この意識を持つことがとても大切です。

とても残念なことですが、妊娠中から産後1年未満の妊産婦の死亡原因の第1位は自殺です。かなりショックなことですが、この事実をママはもちろん、パパや家族も知っておいたほうがいいと思います。
一緒に暮らしている家族、特にパパにお願いです。ママはギリギリまで頑張ってしまって、なかなか自分からはSOSを出せません。だから、ママがちゃんと食事をとれているか、眠れているか、最近笑わなくなってきているのではないかなど、しっかり見守ってあげてください。一日に一度は、一緒にごはんを食べる時間をつくれるといいですね。産前産後は、通常より不安な気持ちが強く出てしまう時期です。そして、もし症状に気がついた場合は早めに相談や受診をしましょう。

産後うつやうつ傾向は、多くのママが経験するものです。でも、ほとんどが一時的なもので回復してゆきます。産前産後はそんな時期なんだと家族みんなが知っておくといいですね。


イライラして子どもにあたってしまいそうです。どこに相談すればいい?

赤ちゃんがずっと泣いていると、自分が責められているような気持ちになります。新型コロナウイルスが心配でお出かけもままなりませんし、イライラして、赤ちゃんにあたってしまいそうな自分が怖いです。こんな時、どこに相談すればいいでしょうか?

回答:市川香織さん

イライラしたり、子どもに手をあげそうになったり、一人で抱えられないと思ったら、ちゅうちょなく相談しましょう。自治体の子育て世代包括支援センター(地域によっては「子ども家庭支援センター」「子育てピアサポートセンター」など名称が異なります)では、その地域の妊産婦、乳幼児を見守り、困りごとに寄り添って支援しています。スタッフは皆さんのSOSに真っ先に対応したいと思っていますので、遠慮せずに何でも相談しましょう。子育て世代包括支援センターがどこにあるかわからない、もしくは、まだ設置されていないという自治体では、保健センターが窓口になっています。

イライラしてしまったり、子どもにあたってしまったりするのは、ママ自身のせいだけではありません。誰もがこの閉塞した状況でがまんを強いられているせいなのです。まずは話を聞いてもらい共感してもらうだけでも、今この時をやり過ごすことができるのではないでしょうか。

地域の保健センターのほか、その他の相談窓口

  • 地域の子育て支援拠点
  • 児童発達支援センター
  • 児童相談所
  • 小児科
  • 産婦人科
  • 助産院 など

いま、さまざまな場で相談を行っています。また、病院の小児科などから、専門の相談機関につなぐこともできるので、ひとりで抱えず、まずは相談してみましょう。