専門家からのアドバイス・メッセージ(5)
発達が気になる子どもとの過ごし方


2020年4月14日

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、不安・イライラが募る⋯⋯ 子育て中のみなさんから、さまざまな不安の声が番組に寄せられています。こうした不安の声や質問について、「すくすく子育て」でおなじみの専門家の方たちから、回答やアドバイス、メッセージを寄せていただきました。

今回は、子どもの発達に詳しい榊󠄀原洋一さん(お茶の水女子大学 名誉教授/小児科医)に、発達が気になるお子さんをお持ちのご家庭での過ごし方について伺いました。


発達障害の可能性を指摘されています。子どもが不安定にならないか心配です。

子どもは発達障害の可能性を指摘されていて様子を見ています。新型コロナウイルスで、家にいなければならないのはわかっていますが、子どもが不安定になったら⋯⋯と思うと不安です。この時期、子どもとどう向き合ったらいいでしょうか?

回答:榊󠄀原洋一さん

発達障害や発達に心配のある子どもは、日常とは違う環境に対して大きな不安を感じます。子どもと向き合うときの親の姿勢の第一歩は、これまでの日常生活をできるだけ変えないことです。
現在、子どもにとって最も大きな環境の変化は、園や小学校などが休園・休校していることです。さらに外出の自粛が求められているために、友達や先生に会えないことに加えて、狭い屋内で過ごさなければならないことは子どもにとって大きなストレスです。
休校や外出自粛の骨子は、他人との3密状態(密閉・密集・密接)を避けることです。親子での近所を歩いたり、人があまりいない公園などに散歩に出かけられてはいかがでしょうか。また、途中でサービスエリアや道の駅に寄らないということであれば、ドライブに出かけて気晴らしをするのも一案です。ドライブに出かけた先でも、3密になっていないかを注意してください。さらにインターネットに慣れている方であれば、お子さんのお友達とオンラインでお話をするなどの方法も良いと思います。
またNHKなどのテレビ局は、子ども向けの番組や教育的なコンテンツの配信を強化しています。お子さんの気に入ったコンテンツを一緒に視聴して、親子で話をしてみるといった過ごし方もいいと思います。

*「NHKキッズ」Eテレからセレクトした幼児・小学生向けの番組の動画が楽しめるアプリです
https://www.nhk.or.jp/school/kids/


子どものかんしゃく、どうしたらいい?

子どもがかんしゃくを起こしたときは、どう対応したらいい?

回答:榊󠄀原洋一さん

子どものかんしゃくには全部理由があります。コミュニケーションの苦手な子どもが、自分の思い通りにならなかったり、自分の意思が伝えられなかったりしたときにかんしゃくとして表現されているのです。
子どものかんしゃくへの対応法は大きく2つに分けられます。
1つが、子どもがかんしゃくを起こす理由を丁寧に探って、その理由を解消してあげる方法です。理由はいろいろありますから、一概にこうすれば良いという指針はここでは示せませんが。
もう1つの方法が、気分転換です。外出自粛で家の中で過ごす時間が多いので、「Q1」で述べたように、近所で3密状態がないところに、親子で散歩に出かけるなどの方法が有効でしょう。


この時期、療育や相談に行ってもいいのか心配⋯⋯

子どもの発達が気になってしまい、早めに相談に行ったほうがいいのかどうか迷っています。この時期に療育や発達相談に行くことをどう考えればいいでしょうか?

回答:榊󠄀原洋一さん

この質問への回答は簡単です。新型コロナウイルス感染症の流行が続いている間は、療育や発達相談はお休みしましょう。理由は3つあります。
風邪や下痢、ぜんそくなどの急性の病気と違って、療育を受けているお子さんの状態は急に変化するものではありません。ですから数か月お休みしても、お子さんの発達にまず影響は出ません。
2つ目の理由は、医院や病院には、発熱やせきの訴えで、新型コロナウイルス感染を起こした患者さんが受診する可能性があります。病院では、発熱のある患者さんの受付や待合室を分けるなどして対策をしていますが、それでも医院や病院はウイルス感染をしやすい場所なのです。
3つ目は、医療崩壊の可能性が心配されている現在、医療従事者の仕事量をできるだけ増やさないことが社会全体として必要である、という理由です。
療育や発達相談に限らず、鼻水や軽いせきなどのかぜや、軽症のアトピー性皮膚炎などは、可能であれば、薬局で購入した薬で済ませるなどの対応が賢明だと思います。


発達障害や発達に心配がある親御さんへのメッセージ

榊󠄀原洋一さん

発達障害の中でも自閉症スペクトラム障害や、発達に遅れ(知的障害)のあるお子さんは、世の中で起こっていることについてその意味を理解することが困難です。また、そうした出来事による世の中の変化にどのように対応して行けば良いのかわからず、それが不安のもとになります。
親御さんは、そうした世の中の変化への対応が下手なお子さんに対して、常日頃からお子さん本人の理解度に合わせてわかりやすく説明したり、あるいは理解の手助けをしてきたと思います。
ところが新型コロナウイルス感染症は、いつもなら、不安をもったお子さんに対して自信をもって対応のしかたを教えてあげることができていた親御さん自身をも不安な状態に陥れてしまっています。
世の中の仕組みや、人間関係のルールがわからない子どもたちは、自分のとるべき行動の道案内役の親の行動や感情に敏感です。親が子どもの前で不安な表情をすれば、子どもの不安はますます強まってしまいます。
このような世の中全体が不安状態に陥っている時、自閉症スペクトラム障害や、発達に心配があるお子さんの親御さんの最大の役割は、お子さんの前ではご自身の不安や恐れをできるだけ抑えることです。そしてそのためには、親御さん自身が、新型コロナウイルス感染症を「正しく恐れる」ための知識を信頼できる情報源から吸収することです。

なかなか難しいことですが、テレビ・インターネット・SNSなどでの発言について、すぐにその内容をうのみにせず、なるべく科学的裏付けのある発信元を選び、複数の情報の中からより確実な情報を見つけ出して欲しいと思います。