専門家からのアドバイス・メッセージ(3)
子どもへの感染を防ぐために


2020年4月13日

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、不安・イライラが募る⋯⋯ 子育て中のみなさんから、さまざまな不安の声が番組に寄せられています。こうした不安の声や質問について、専門家の方たちから、回答やアドバイス、メッセージを寄せていただきました。

今回は、小児救急が専門で、日々の診療はもちろん、子育て支援活動にも取り組んでいる小児科医の坂本昌彦さん(佐久総合病院佐久医療センター/小児科医)です。


小さい子どもの予防はどうしたらいい?

子どもがまだ小さくて、マスクもできないし、きちんと手洗いすることができないので不安です。どう予防したらいい?

回答:坂本昌彦さん

子ども本人ができる範囲での手洗いでよいと思います。
外来でみていると、3歳くらいになると、自分で手洗いできる子も増えてくるようですが、1~2歳は、まだまだ難しいと思います。

親としては、どうしても「子どもが手洗いできない」ということに目が向きがちですが、子どもの感染予防には、まずは親が感染しないことが、とても重要です。中国など複数の研究で、子どもの患者の多くが、家庭内で親から感染していたと報告されているためです。

大人の行動範囲は、子どもよりも、はるかに広いです。子どもが何に触ったかということよりも、親が何に触ったか、ということの方が、より重要です。
子どもの手洗いには限界がありますし、まずは大人が気を付けることが大切です。

コロナウイルスに限らず、感染症予防として、手洗いはとても重要です。
ある研究(1)で、手洗い前に、手に100万個の菌やウイルスがいた場合、石けんを使って10~30秒洗うと、数百個に減ったという報告もあります。(水だけだと、1万個に減った)

手洗いは、食事の前、トイレ後、遊んだ後、マスクを触った後などにしましょう。
石けんを泡立て、20秒かけて洗います。「きらきら星」や「ハッピーバースデー」を1曲歌うくらいの間です。子どもと一緒に歌いながら洗うのも、いいのではないでしょうか。

洗った後は、しっかり乾かしましょう。手洗い後に乾かすと、ドアノブなどを触った場合に、菌やウイルスが付着するリスクが、ぬれたままの場合に比べ、1/10以下になるという研究(2)があります。

また、保湿も大切です。ガサガサの荒れた手だと、(無意識のうちに)手洗いの頻度が落ちるという報告(3)があります。夜寝る前などに、クリームを塗って保湿しましょう。

マスクについても、手洗いと同じようなことが言えます。
小さな子どもが毎回正しい方法でマスクをする、というのは、あまり現実的ではありませんので、親自身が感染しない、させないことが重要です。

日本小児科学会からも、そのようなコメントが出されています。

*公益社団法人 日本小児科学会:新型コロナウイルス感染症に関するQ&Aについて
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=326

1) 森功次,林志直ら.Norovirusの代替指標としてFeline Calicivirusを用いた手洗いによるウイルス除去効果の検討.感染症誌80:496-500.2006
2) D. R. PATRICK, G. FINDON etal.Residual moisture determines the level of touch-contactassociated bacterial transfer following hand washing. Epidemiol. Infect. (1997), 119, 319–325
3) R. D. McCormick, T. L. Buchman.Double-blind, randomized trial of scheduled use of a novel barrier cream and an oil-containing lotion for protecting the hands of health care workers.Am J Infect Control. 2000 Aug; 28(4): 302–310


公園の遊具は消毒したほうがいい?

公園の遊具などにウイルスがついているのではないかと心配です。子どもが小さくて、あれこれ触ってしまうので⋯。消毒などしたほうがいい?

回答:坂本昌彦さん

遊具で遊んだ後に、手洗いする、というのが現実的だと思います。
遊具が気になる気持ちは、とてもよく分かります。でも、例えば、大人も買い物をするときに、いろいろなものを触りますが、触るたびにいちいち手を洗うでしょうか? 親ができないことを、子どもに求めるのは難しいのではないかと思います。

もしも、どうしても遊具そのものが、ものすごく気になるのだとしたら、遊ぶ前に、アルコールや次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤などに使われているもの)の消毒液などで拭いてもよいと思います。
でも、全ての遊具を消毒するというのは現実的ではないですし、次亜塩素酸ナトリウムは金属腐食作用があるため必ず水拭きとセットで行う必要があります。労力も大変な割に、それらの努力で感染を減らせたという報告があるわけでもありません。こうしたことを徹底的にやりはじめてしまうと、子どもの遊びが損なわれてしまうことが心配です。パパママも追い詰められて苦しくなってしまうこともあるので、できる範囲でよいのではないでしょうか。

くどいようですが何度も繰り返します。現在分かっていることは、子どもは家族内で感染するケースが多い、ということ。子どもの行動範囲は非常に狭いのです。一方保護者の移動範囲は子どもと比べものにならないくらい広いのです。大切なことは親から子どもにうつさないために親自身が手洗いをこまめにし、移動を最低限に減らし、いわゆる3密(密閉空間・密集場所・密接場面)を避けることです。

子どもはいろいろな物を触るものです。そうやって体全体で形や色、においを覚えて成長していきます。すべてを消毒するのは現実的ではないので、それ以上に、パパママ自身が感染しないように、手洗いをする、極力出歩かない、ということが、子どもを感染症から守るために、大切ではないかと思います。