専門家からのアドバイス・メッセージ(1)
緊急事態宣言下で、子育てを頑張っているママたちへ


2020年4月9日

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、不安・イライラが募る⋯⋯ 子育て中のみなさんから、さまざまな不安の声が番組に寄せられています。こうした不安の声や質問について、「すくすく子育て」でおなじみの専門家の方たちから、回答やアドバイス、メッセージを寄せていただきました。

今回は、いつも子育て中の親子に寄り添ってくれる、大日向雅美さん(恵泉女学園大学 学長/発達心理学)からです。


子育てとどう向き合っていったらいいの?

新型コロナウイルスの影響で、外出もままならず、押し込められたようで気分がふさぎがちになります。この時期、私たちは子育てとどう向き合っていったらいいのでしょうか?

回答:大日向雅美さん

ひと月近くの外出自粛は、これまで日本人のだれもが経験したことのないことです。
どう過ごしたらよいか、この緊迫した雰囲気が子どもにどんな影響を与えるのか、長い時間を家の中でどう過ごしたらよいのかと、大きな不安を抱えて、厳しい毎日を過ごしていらっしゃることでしょう。どんなに大変なことかと、皆さまのこと、心から案じています。

くじけないで! と願いつつ、こういうときだからこそ、こういうときでなければ持ちにくい時間をもってみていただけたらと思います。
そのひとつが「内省」の時間を大切にすることです。

「内省」とは、現実を冷静に、客観的に振り返りながら、自分自身を見つめることです。
<これまでにご自身が経験したこと> <今、目の前に起きていること> <これから起こるであろうこと> を考えながら、その中でご自身は何を思い、どう行動したのか、これからどう行動したいのかを考える時間を、わずかな時間で良いですから、細切れで良いので、繰り返し持ってみませんか。

それはもしかしたら、「孤独な作業」になるかと思います。
でも、人は孤独な環境に身を置いたとき、必ずや他の人を想うということは心理学の定説です。身近なご家族との関係、学校時代の友人、ママとなってから得た友人や知人⋯⋯。こうした人々への思いが、おそらくこれまで想像しえなかったほどに深く胸に湧き起こることと思います。
そうした方々とのご縁があって今の私がいると思えたとき、今度は子どもたちに、どんな未来を託そうかと考えられたら、すてきです。

新型コロナウイルス感染の恐ろしさは、感染ルートや治療法が見えにくいだけではありません。見えない敵と戦う恐怖が人間不信を呼び、混乱の中で露出する利己的な言動はウイルス以上の毒をもっています。

ウイルスとの闘いに勝つためには、まず、いたずらに不安に流されず、状況を的確に見極め、冷静な判断に基づいて行動することです。そして、一つひとつの行動が自分自身を、そして、他者を尊重する心に裏付けられているかを常に振り返ることが大切です。
「言うは易し」で、実際に行うのはなかなか難しいことです。私にそれができるかと尋ねられたら、恥ずかしいことですが、難しいです。でも、努力したいと思います。
新型コロナウイルスは私たちに与えられた極めて過酷な試練ですが、その試練に打ち勝つために、私たち一人ひとりが自分自身を見つめ、人としての知性と品性を大切にしようと努めたいと思います。そうした親の姿を間近に見ることができたら、子どもたちにとっても明日を生きる力になるのではないでしょうか。


夫婦関係、親子関係をどう保っていけばいいの?

家族で過ごす時間が増えたことで、夫婦関係・親子関係が煮詰まってしまうことも⋯⋯。この時期、夫婦関係、親子関係をどう保っていけばいいのでしょうか?

回答:大日向雅美さん

ウイルス感染拡大予防のために「3つの密」を避けるようにと、関係機関から繰り返し警告が発せられています。大切なことですね。
でも、外出自粛要請下での家庭がこの「3つの密」の危険性を避けることは容易ではありません。園も子育て広場も休館になっているところが大半です。こんな状況でママたちはどうしていらっしゃるかしら、子どもたちはお外にもなかなか出られず、どうしているかしら、と私は心配でなりません。なんとか皆で知恵を出し合って、乗り切っていきたいですね。

基本的な心の持ちようは【Q1】でお話しさせていただきましたが、それを確かなものとする具体策を2つほど、考えてみました(私からご提案するのはたった2つですが、あとはご自身で、ご夫婦で、ご家族で工夫をなさってみていただけたらと思います)

①この際、完璧主義を捨てましょう!

最近のママは子育てにもご自身にも、そして夫や子どもに対しても、とてもまじめに向き合っていらっしゃいます。それはとてもすてきなことです。
でも、あまり生真面目になりすぎると、とくに今のような非常事態下では、苦しくなりがちです。子どもや夫の言動のこまかいことが、いつも以上に気に障り、マイナスのことが目についていらだち、そういうふうにいらだつ自分にさらにいらだつことでしょう。
いらだちを感じたらとにかく目をつぶって、深呼吸をして、「まあ、いいか」と唱えてみてください。「これは夫が悪いわけでも、子どもが悪いわけでもない。今のこの環境がいけないの。いらだつのは、私が私にイエロー信号を発しているから。イエロー信号を発する力が私にはある!」とご自分の感受性の鋭さを認めることです。

②一日の生活リズムを“見える化”してみる

とはいえ、一日中、家に閉じこもっていると、家族の皆がだらだらしがちです。そんな姿を目の当たりにしたら、「まあ、いいか」の呪文も効力が消えてしまいかねませんね。
そこで、提案です。朝起きてから寝るまでの流れを紙に書き出してみませんか。
書き出すことは、たくさんではないほうがいいでしょう。

「〇時起床、〇時朝食、〇時おやつ、〇時昼食、〇時おやつ、〇時夕食、〇時お風呂、〇時就寝」
大体8本くらいの柱を立てて、その間に、「自分」「夫」「子ども」がすることを書きだしていく。

大切なことは、このプロットを家族の皆で作ることです。
子どもの意見もしっかり聞いてあげてください。2~3歳でしたら、一緒に作れます。というよりも、一緒に作っているんだという参画意識を持たせてあげてほしいと思います。ママやパパが何か大事なことを考えている、そこに自分も加えてもらえたという誇りをもたせてあげましょう。
そして、一日の終わりに、また皆でチェックして、今日のことをふりかえって明日のプロットを作る。
これを繰り返してみるのです。

もう一つ大切なことは、①でお話ししたこと、完璧主義を捨てることです。
計画通りに進まないことの方が多いと、ゆったり構える。むしろ、予定通りにできたら、すごいのです。シールを貼ってあげる⋯⋯のお楽しみがあるといいですね。

こうした作業を通して、家族で話し合う楽しさを増やしていけたらと思います。


こんな時期だからこそ ママたちへ伝えたいメッセージ

大日向雅美さん

未来は予測不可能だとか、一寸先は闇だとか、私たちは言葉の上ではよくこういうことを言ってきました。でも、今日のようなことをだれが予測できたでしょうか?
こうした日々の中で、幼い子どもたちの笑顔がいっそう貴重に思えます。泣き声にも愛おしさがこみあげてくるようです。
子育ては大変なことがいっぱいです。でも、それも含めて子どもが私たちのもとに生まれてきてくれたこと、そして、健やかに育ってくれていることは、宝だと改めて思います。 
ウイルスの猛威の前に私たちの力がいかに小さいかを思わざるを得ませんが、その一方で与えられている宝に気づかせてもらえたことは大きいことです。その恵みに感謝する心をいつも忘れないでいたいですね。一日も早く、平和で穏やかな日常が戻ることを心から願っております。