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研究内容紹介

6.2.1 微小磁区記録デバイス

 可動部のない高速磁気記録デバイスの実現を目指して、磁性細線中の微小磁区の移動を利用した記録デバイスの開発を進めている。2013年度までに開発した、磁性細線内部で微小磁区を電流で駆動し(1)、その磁化状態を再生検出する技術(2)に加え、2014年度は、微小磁区を新たに形成する記録技術を開発し、微小磁区記録デバイスの基本動作原理を実証した(図1)。
 まず、記録・磁区駆動・再生を一連の動作として同一サンプル上で検証できるように、素子配置や電極構造の再設計およびそれに合わせた磁性細線作製方法の見直しを行った。これまでの作製方法では、Siウェハ基板の全面に堆積した磁性薄膜からリフトオフ法により細線形状に切り出して磁性細線を成型する際に、磁性細線の端部(加工断面)にバリができやすいという課題があった。このバリによって磁区を電流駆動しにくくなるため、バリのない磁性細線を形成するプロセスを開発する必要があった。そこで、電子線レジストと犠牲層レジストからなる2層レジスト構造を用いたリソグラフィー技術を採用し、オーバーハング型の特殊な断面形状を持つ切り出し成型用テンプレートを形成することにより、バリのない超平坦な磁性細線が形成できることを確認した。
 微小磁区の形成技術では、2013年度に開発したナノ磁区観察装置に用いるトンネル磁気抵抗効果型磁界センサーに近接して設置した記録ヘッドにより、電流磁界を発生させることで、磁化方向の異なる複数の微小磁区を磁性細線中に形成する技術を開発した。その際、磁性細線および電極構造の調整を行い、記録ヘッドと磁性細線との間の距離を11nmまで近接させることにより、安定に磁区が形成できることを確認した。
 また、磁区の電流駆動現象を詳細に検証するために、電子?磁性体間の相互作用を取り入れたナノマグネティックシミュレーション手法を開発した。これにより、駆動した磁区の安定停止に必要なトラップサイトの形状や大きさとそのトラップ強度の関係を詳細に検証できるようになった。
 これまでに開発した微小磁区の形成技術、高速駆動技術、磁区状態評価技術、超平坦磁性細線を組み合わせることによって、磁性細線中に磁化方向が異なる複数の微小磁区を記録し、それらをパルス電流で磁性細線中を駆動させた後、磁区の磁化情報を再生することが可能となった。これにより、微小磁区記録デバイスの基本動作の検証を完了した。

 

図1 磁性細線を用いた記録デバイスの動作原理

〔参考文献〕
(1) M. Okuda, Y. Miyamoto, E. Miyashita and N. Hayashi:“Behavior of Multiple Magnetic Domains Motion in[Co/Pd]Nanowires by Applying One Pulse Current,” J. Jpn. Soc. Powder and Powder Metallurgy, Vol. 61, No. S1, pp. S37-S40(2014)
(2) M. Okuda, Y. Miyamoto, E. Miyashita, N. Saito, N. Hayashi and S. Nakagawa:“Detection of current driven magnetic domains in[Co/Pd]nanowire by tunneling magnetoresistive sensor,” J. Appl. Phys. Vol. 117, No. 17, 17D516(2015)