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研究内容紹介

3.3 セキュリティー基盤

 安全で信頼できる放送・通信連携サービスの実現を目指し、暗号・情報セキュリティー技術の研究を進めた。


データベースのアクセス制御に用いる暗号システム

 2016年度までに開発した、自動車、携帯端末、テレビを連携させ、ユーザーが自身の嗜好情報、位置情報を事業者に渡し、個人の嗜好・位置に応じたコンテンツを受けるサービスにおいて、嗜好情報、位置情報を秘匿したまま、おすすめ情報を利用できる暗号システムについて、安全性解析と実装評価を行い、高い安全性を有し、サービスに影響を及ぼす程の遅延がないことを確認した(1)。さらに、データを提供する事業者にもメリットを提供できるように、ユーザーが利用したデータを提供した事業者には、ユーザーのアドレス等の識別子を提供する仕組みを提案した(2)


放送・通信連携サービス用暗号アルゴリズム

 放送・通信連携サービスの高度化に向けて、安全で確実なサービス提供に利用できる暗号技術の研究を進めた。
 2017年度までに開発した、視聴者の情報をクラウドに置く際に、その情報を読むことができる事業者の属性を指定しアクセス制御を行うことができる暗号アルゴリズムに関し、他の暗号アルゴリズムと安全性・効率性について比較を行い、提案方式の有効性を確認した(3)


耐量子コンピュータ用暗号アルゴリズム

 量子コンピュータが実用化された場合においても安全性を維持することが可能な暗号アルゴリズムの研究を進めた。
 秘密鍵を生成するためのハッシュ関数と、データの暗号化のための共通鍵暗号に対し、暗号化されるデータから秘密分散と呼ばれる手法により生成される複数の分割データ(シェア)を複数の計算機へ入力し、それぞれの計算機で独立に計算した結果をまとめることで一つの暗号文を出力するマルチパーティ計算方法を開発した。同手法は、個々のシェアからは元のデータを復元できず、耐量子コンピュータ性を持たせることができる。このアルゴリズムを利用して放送サービスを拡張し、耐量子コンピュータが実用化された場合でも個人情報保護が可能な、放送用秘密鍵持ち歩きシステムを考案した(4)


HEVC圧縮ストリーム用電子透かしアルゴリズム

 コンテンツの著作権保護を目的として、受信機の識別子をブロードキャストされた圧縮コンテンツに埋め込むことが可能な電子透かし技術の研究を進めた。
 2017年度までに開発したHEVCの圧縮ストリーム用の埋め込み方式に関し、計算の負荷、安全性検討を行い、その有効性を確認した(5)


 

〔参考文献〕
(1) 梶田,小川,大竹:“個人向けIBBサービスにおけるVABKSを用いたプライバシー保護システムの安全性解析と実装評価,”映情学年次大,14D-1(2018)
(2) 梶田,小川,大竹:“ユーザ・事業者へのメリットを考慮したセキュアな放送通信連携サービス,”SCIS2019, 1C2-3 (2019)
(3) N. Attrapadung, G. Hanaoka, K. Ogawa, G. Ohtake, H. Watanabe and S. Yamada, “Attribute-Based Encryption for Range Attributes,” IEICE Trans. on Fundamentals of Electronics Communication and Computer Science, Vol.E101-A, No.9, pp.1440-1455 (2018)
(4) 小川,縫田,“MPC: 放送サービスをもっと良くできる,”SCIS2019, 1C2-2(2019)
(5) K. Ogawa and G. Ohtake, “Efficient Watermarking scheme for Traitor Tracing Encryption Schemes,” Journal of Electrical Engineering, Vol.6, No.5, pp. 245-255 (2018)