No.119 2010年1月発行

高度衛星デジタル放送 特集号

※概要のみ公開しています。

巻頭言

  • 高度衛星デジタル放送特集号に寄せて
    甲藤 二郎 / 早稲田大学 理工学部 教授
    ↓概要

    概要
    2011年7月までに地上アナログ放送と衛星アナログ放送は停波され,テレビ放送は全面的にデジタルに移行する。また,衛星アナログ放送の空きチャンネルに加えて,WRC-2000(World Radiocommunication Conference 2000)において衛星デジタル放送に使用されるチャンネルの追加が認められており,衛星デジタル放送の更なるサービス展開が期待されている。

解説・報告

  • 衛星デジタル放送と将来展望
    正源 和義 / 研究主幹 工学博士
    ↓概要

    概要
    日本,ヨーロッパおよび米国などの衛星デジタル放送方式の規格をヨーロッパの第2世代の衛星デジタル放送方式であるDVB-S2(Digital Video Broadcasting- Satellite - Second generation)も含めて紹介する。更に,今後,高度衛星デジタル放送方式を用いた新しい衛星放送として有望なHDTVを超える超高精細映像放送,ダウンロード放送,新しいデータ放送 に向けた技術開発への取り組みについて述べる。
  • 高度衛星デジタル放送方式の概要
    田中 祥次 / 放送ネットワーク研究部
    ↓概要

    概要
    放送の高画質化・高音質化に伴う大容量伝送やダウンロード放送などの放送と通信が連携した新しい放送サービスへの対応が可能な高度衛星デジタル放送方式の概要を紹介する。また,本方式を12GHz帯衛星デジタル放送に適用した場合のサービス例を示す。

論 文

  • 高度衛星デジタル放送の伝送路符号化方式
    橋本 明記 / 放送ネットワーク研究部、 鈴木 陽一 /放送ネットワーク研究部、 小島 政明 /放送ネットワーク研究部、 木村 武史 /放送ネットワーク研究部、 田中 祥次 /放送ネットワーク研究部、 正源 和義 / 研究主幹 工学博士
    ↓概要

    概要
    高度衛星デジタル放送の伝送路符号化方式では,ロールオフ率の低い急しゅんな遮断特性を持つフィルターを採用し,帯域幅を拡大することなく高いシンボルレートによる伝送を可能としている。また,LDPC(Low Density Parity Check:低密度パリティー検査)符号を採用し,所要C/N(Carrier to Noise Ratio)を低減している。従って,現行のBSデジタル放送と同等のサービス時間率を確保した場合においても,情報ビットレートを30%以上増加でき,約70Mbpsの伝送が可能である。本稿では,フレーム構成,誤り訂正符号,変調信号形式などの伝送路符号化の要素技術と伝送信号点配置信号を用いた伝送特性の改善方法について述べる。また,ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:(社)電波産業会)で実施した実証実 験の結果についても報告する。
  • 高度衛星デジタル放送の誤り訂正技術
    鈴木 陽一 / 放送ネットワーク研究部 橋本 明記 / 放送ネットワーク研究部 小島 政明 / 放送ネットワーク研究部 田中 祥次 / 放送ネットワーク研究部 木村 武史 / 放送ネットワーク研究部 正源 和義 / 研究主幹 工学博士 
    ↓概要

    概要
    高度衛星デジタル放送の誤り訂正技術として,伝送フレーム構成の符号長に適したLDPC(Low Density Parity Check:低密度パリティー検査)符号について報告する。初めに,誤り訂正符号の要求条件を述べ,LDPC符号の符号パラメーターを導出する。次に,LDPC符号に用いる検査行列の設計指針として,サイクル4およびサイクル6の除去方法について述べ,計算機シ ミュレーションによる白色雑音下での伝送特性結果を示す。最後に,16APSK(Amplitude and Phase Shift Keying:振幅位相変調)および32APSKにLDPC符号を用いた場合に最適となる半径比の設計指針を示し,最適半径比を適用した場合の伝送特性結果を示す。
  • 高度衛星デジタル放送におけるIPパケット多重化方式
    青木 秀一 / 次世代プラットフォーム研究部 青木 勝典 / 次世代プラットフォーム研究部
    ↓概要

    概要
    放送においても,通信で広く用いられているIP(Internet Protocol)パケットを多重することで,送出システムや受信機での放送・通信の共通処理が進展し,放送・通信を連携させた新しいサービスの実現が期待できる。しかし,現在のデジタル放送に採用されている多重化方式であるMPEG-2 Systemsを用いてIPパケットを放送伝送路に多重する方式では,オーバーヘッドが大きくなるという欠点がある。そこで,放送伝送路におけるIPパケットの効率的な多重化方式として,IPヘッダー情報の圧縮方式,IPマルチキャストグループのリストを提供する伝送制御信号,可変長パケットのカプセル化方式から成る多重化方式を開発した。開発した多重化方式は高度衛星デジタル放送における蓄積型放送サービスのTLV(Type Length Value)多重化方式として採用された。本稿では,TLV多重化方式が他のIPパケット多重化方式と比較して低オーバーヘッドの多重が実現できることを述べる。更に,高度衛星デジタル放送の伝送装置を用いたIPパケットの伝送実験を行い,TLV多重化方式で効率的なIPパケットの伝送が可能であることを示す。

研究所の動き

  • 電界集束型冷陰極HARP撮像板~夜間緊急報道に不可欠な小型超高感度カメラを目指して~ ↓概要

    概要
    夜間に発生する災害や事件・事故などを視聴者により早く伝えるためには,持ち運びに便利で,わずかな明るさでも鮮明な映像を得ることができる小型超高感度カメラが必要である。小型超高感度カメラの大きさや性能は適用する撮像デバイスによって大きく左右されるので,冷陰極HARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)撮像板と呼ばれる新しいタイプの撮像デバイスの開発を進めている。
  • データ放送によるQRコード生成技術 ↓概要

    概要
    放送と通信の融合時代を迎え,当所ではデジタル放送受信機(以下,受信機)と携帯端末の連携手法の研究を進めている。近年注目されているQRコードは白と黒の2次元コードで,カメラ付き携帯端末でQRコードを撮影することにより簡単にインターネットにアクセスできるという利便性がある。これまで,データ放送でQRコードを表示するためには,放送局から画像ファイルを送る必要があった。しかし,この方法ではすべての受信機で同じQRコードが表示される。受信機ごとに個別の情報を含むQRコードが生成・表示できれば,地域に密着した情報など受信機と携帯端末との連携を更に高めることができる。そこで,データ放送のBML(Broadcast Markup Language:データ放送用の記述言語)にQRコード生成プログラムを乗せて送信し,受信機でQRコードを生成・表示する手法を開発した。

発明と考案

  • 符号化器及び復号器,並びに送信装置及び受信装置 ↓概要

    概要
    本発明は,高度衛星デジタル放送方式等における複数変調・時分割多重型伝送システムのスロット構造に最適な符号長44,880ビットのLDPC符号の検査行列に関するものである。周期的な構造を有する検査行列でエラーフロアが生じにくい検査行列をLDPC符号に適用することで,非常に長い符号長の検査行列を読み出すことが容易になると ともに白色雑音下においても非常に高い符号化利得の伝送が実現できようになる。
  • 受信装置及び伝送システム ↓概要

    概要
    本発明は,放送伝送路に多重するIP(Internet Protocol)パケットをIPアドレスで選択して受信するための技術に関するものである。アプリケーションは放送で伝送されるIPパケットと通信で伝送されるIPパケットを共通の受信制御プロトコルを用いて受信できるようになるので,放送と通信をシームレスに受信すること が可能となる。