No.110 2008年7月発行

'08技研公開 講演・研究発表 特集号1

※概要のみ公開しています。

巻頭言

  • はじめに ↓概要

    概要
    2008年度の技研公開は「技術のチカラがテレビを変える」をテーマに開催しました。このテーマは,当研究所が設立以来,いつの時代も「その次の時代」の放送の基幹を担う新たなメディアを開拓してきた伝統と,今も,地上・衛星デジタル放送の更なる高度化や将来のメディアとなるスーパーハイビジョンの開発などに取り組み前進を続ける姿勢を表現したものです。公開では「放送メディアの開拓」ゾーンにおいて,このような新たな技術による新たな放送の可能性を育む研究についてご覧いただきました。
  • 2008年度 技研公開より 技術のチカラがテレビを変える ↓概要

    概要
    NHK放送技術研究所では一般公開(技研公開)を5月22日(木)から25日(日)までの4日間開催しました。最新の研究成果を5つのゾーンとポスター展示に分けてわかりやすく展示しました。海外の放送関係者を講師に招いて講演会を開催したほか,技研の研究者による研究発表も行いました。期間中,約21,000人の来場者の皆様に技研の研究に触れていただくことができました。 『放送メディアの開拓』『高質感・空間再現メディア』『ユースフル・ユニバーサル』『高度コンテンツ制作環境』『放送技術の活用と展開』『ポスター展示』

解説・報告

  • 薄型光ディスク
    小出 大一 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    次世代の放送番組保存(アーカイブ)用記録メディアを目指して,薄型光ディスクの研究開発を行っている。光ディスクは磁気テープに比べランダムアクセス可能,保存耐久性が高い,コストが安価などのメリットを持ち,また,ハードディスクに比べ省電力化の可能性を持つ。しかし,現在の光ディスクは記録レート・容量共に放送番組アーカイブ用として十分な性能を持たない。そのため,更なる記録レートの高速化や大容量化が求められる。
  • スピン偏極電流を利用した超高精細光変調素子
    青島 賢一 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    地上デジタルテレビジョン放送が全国の県庁所在地等で開始され,大型ハイビジョンディスプレーの普及に伴いテレビの高精細化が急速に進んでいる。一方,NHKでは将来の更なる高臨場感放送を目指したスーパーハイビジョンや3次元立体映像などの研究を進めている。これらにおいては膨大な量の映像信号データを取り扱うために,高速かつ大容量な記録装置が求められる。高速・大容量な記録技術として光の干渉を利用したホログラム記録技術が注目されており,そのキーデバイスとして高精細・高速な光変調素子の実現が求められている。また,3次元立体映像に用いる表示デバイスとして,画素サイズ1μm以下の高精細な超多画素デバイスが必須である。我々は従来の表示デバイスでは実現が困難であったサブミクロンサイズの高精細で数十ナノ秒(ns)程度の高速駆動を期待できる新規な光変調素子を提案している。これはスピン注入磁化反転技術と磁気光学効果を組み合わせて動作させるものである。
  • 宅内機器の連携が可能な新しいデジタル放送プラットホーム
    馬場 秋継 / システム
    ↓概要

    概要
    近年のネットワーク技術の進歩により,家庭内にLAN(Local Area Network)環境を構築し,さまざまな情報家電機器をLANに接続して利用することが珍しくなくなった。例えば,パソコンに蓄積した映像や音声を他の機器で再生するなど,家庭内のLAN(宅内LAN)に接続された機器が持つ機能を互いに連携させて利用することなども可能になっている。一方,現在のデジタル放送は映像・音声・データなどの提示要素を1つの画面上で再生することを前提としてコンテンツを提供しており,受信機のみで完結したサービスである。もし,デジタル放送受信機を宅内機器と連携させることができれば,受信機の機能を柔軟に拡張することができるようになると考えられる。例えば,話速変換機能を使って高齢者向けにゆっくりした音声で聞き取りやすくするといったサービスを,受信機自身にはその機能がなくても,宅内LAN上に話速変換機を追加することで利用することが可能になる。このようにコンテンツをさまざまな方法で視聴できるようにするといった利便性の高いサービスを提供することを目指し,我々は宅内LANに接続されたさまざまな機器を連携させる宅内機器連携サービス用プラットホームの研究を進めている。
  • 高性能有機TFTアレイの作製とフレキシブルディスプレーへの応用
    藤崎 好英 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    デジタル放送による移動体サービスの拡大や高速・大容量ネットワークの発達に伴い,「いつでも・どこでも・だれでも」高画質の動画やデータを入手できるようなユビキタス社会が現実化してきている。薄い柔軟なディスプレー(フレキシブルディスプレー)が実現できれば,「軽い・割れない・曲げられる」といった従来にない特徴を生かし,将来のユースフル・ユニバーサルな放送サービスに適した携帯ディスプレーとして利用できる。
  • スーパーハイビジョン符号化システム
    井口 和久 / 人間・情報
    ↓概要

    概要
    スーパーハイビジョンは7,680画素×4,320ラインの高精細映像と22.2マルチチャンネル音声の3次元音響による映像音響システムであり,視聴者に高い臨場感・没入感を与える。スーパーハイビジョンの映像・音声のデータ量は極めて大きいため,放送サービスを実現するためには高画質・高圧縮の符号化装置が必要である。我々は衛星放送で可能となるビットレートを目標値とし,映像をAVC/H.264方式で,音声をAAC方式で圧縮するスーパーハイビジョン符号化システムを開発した。本稿では主に映像を対象として,スーパーハイビジョンの概要,開発した符号化システムの詳細,符号化実験について報告する。
  • 有機撮像デバイス
    相原 聡 / 材料・デバイス
    ↓概要

    概要
    現状のスーパーハイビジョン(SHV)カメラでは,高画質なカラー映像を得るために,入射した光を3原色に分ける色分解プリズム光学系と3枚の撮像デバイスを用いている。そのため,持ち運びに便利な小型のSHVカメラを実現するには,色分解プリズム光学系と撮像デバイスの小型軽量化を図ることが重要となる。
  • 「良い音・感動する音」と感じる条件の分析
    大出 訓史 / 人間・情報
    ↓概要

    概要
    当所が進める次世代放送メディアの研究の1つの柱として,スーパーハイビジョンや立体テレビ,3次元音響システムなどの「高質感・空間再現メディア」の研究がある。それは,遠くの世界を見る窓でしかなかったテレビという概念を超えて,お茶の間とその世界を空間としてつなぎ,そこで起こった出来事を視聴者の皆様に自らの肌で感じ取っていただくことを目的としており,あたかもその世界の中にいるかのような質感と臨場感・現実感を実現するシステムである。

特別発表

  • 高度BSデジタル放送
    田中 祥次 / システム
    ↓概要

    概要
    日本のBS放送は1989年にアナログ放送の本放送として開始された。開始当初は3つのアナログ放送チャンネルであったが,MUSE-HDTVチャンネルが追加され,更に,2000年に新たに4つのデジタル放送チャンネル,2007年11月に1つのデジタル放送チャンネルを加え国民生活をより豊かにする放送メディアとして発展を遂げてきた。2011年にはアナログ放送を停波し,全面的なデジタル化を進めていくこととなっている。

研究所の動き

  • 高度BSデジタル放送技術
    ~高品質かつ多様な放送サービスを目指して~
    ↓概要

    概要
    2011年の7月24日に,地上およびBS放送のアナログ放送が終了する。BS放送については,現在アナログ放送に使用されているチャンネル(BS-5,7,11ch)と2000年に新たに日本に割り当てられたチャンネル(17,19,21,23ch)の計7チャンネルがデジタル放送に利用可能となる。(社)電波産業会(ARIB)では,これらのチャンネルに導入可能な放送方式について検討を進めており,今年1月にはARIBから情報通信審議会に暫定方式案が中間報告された。

発明と考案

  • コンテンツ信号とコンテンツ時間管理情報信号の記録方法,再生方法,記録装置,再生装置,相変化光ディスク媒体,光磁気ディスク媒体 ↓概要

    概要
    本発明は,現行の放送用VTRと同様の運用性を持つ,放送用途を目指した光ディスク媒体と装置用の記録再生方法に関する技術である。本発明を適用することにより,従来の光ディスクのフォーマットでは実現できなかった放送用に適した光ディスク装置を実現することができる。
  • 予測情報・量子化値制御圧縮符号化方法 ↓概要

    概要
    MPEG-4 AVC/H.264方式などの予測信号を用いる映像圧縮符号化方式では,復号画像の輝度レベルがフレーム間で変動することによりフリッカーに似たショックを伴う画質劣化が発生する場合がある。本発明は,映像の圧縮符号化装置の予測情報と量子化値を制御することで,このような画質劣化を低減する方法である。