貴重な白黒フィルム映像がカラーでよみがえる

白黒映像の自動カラー化技術

自動カラー化のメリット

放送番組では,古い白黒フィルム映像を扱うことがあるが,この映像をカラー化することで,過去の様子をより鮮明に視聴者に伝えることができる。しかし,これまでのカラー化作業は,主に映像加工の専門家が手作業で行っており,膨大な作業時間が必要であった。そこで当所では,人工知能(AI:Artificial Intelligence)を活用した自動カラー化技術の研究を進めてきた。この技術を使うことで,これまでは数日かかっていたカラー化作業が,30秒~5分程度で行えるようになる。

自動カラー化の仕組み

自動カラー化では,大量の学習用カラー画像を使って,さまざまな物と色の組み合わせを覚えた人工知能(AI)を使う。しかし,AIは常に実際の色と同じように着色できるとは限らない。特に,洋服や自動車など,形状は同じであっても色のバリエーションが豊富な人工物は,正確な着色が非常に困難である。一方,放送番組では,史実に基づいた適切な色でカラー化されることが求められる。そこで当所では,AIが不適切な着色を行った場合に,簡単に色を修正できる「指示つきカラー化AI」を開発した(1図)。

1図 人間の指示に応じたカット全体のカラー化

放送に特化したワークフロー

例えば,ある映像のカットをカラー化した際に,本来は赤く塗るべき車が異なる色で着色されたため,色修正が必要になったとする。この場合,指示つきカラー化AIを用いたワークフローにおいては,人間はカットを構成する静止画の中から1枚を選び,選んだ静止画内で,色修正が必要になった車(修正領域)の一部を赤く塗る。次に,修正領域を含んだ静止画をAIに入力すると,AIはその静止画を基に,カット全体の車の領域を自動で見つけ出し,車の色だけを塗り直す。このような指示つきカラー化AIを用いることで,少ない作業量でカット全体の色修正が可能になった。

さらなる番組制作支援へ

当所では,今回紹介した映像カラー化技術だけでなく,さまざまな映像処理技術の研究を進めて,番組制作を効率化するシステムの開発を目指す。