AIロボットカメラ

カメラマンによる自然なカメラワークを自動撮影で再現

番組を効率的に制作するために,当所では,熟練カメラマンのカメラワークを再現する自動撮影技術「AIロボットカメラ」の開発を進めている。熟練カメラマンは,被写体とそれを取り巻く状況から次の展開を予想し,視聴者が見やすい映像を撮影している。このようなカメラワークをAI(人工知能)ロボットカメラで再現するためには,映像から状況に関する情報を抽出する技術と,状況を理解してカメラワークを生成する技術が必要である。

スポーツ映像からの状況抽出技術

今回,スポーツ映像,特にサッカーを対象とした選手や試合の状況を抽出する技術を開発した。選手やボールの位置および速度,選手の顔の向きなどを,機械学習*1 によるDNN(Deep Neural Network)*2 などのAI技術を用いて自動的に抽出することが可能になった(1図)。

1図 スポーツ映像からの状況抽出技術

状況理解によるカメラワーク生成技術

NHKのスポーツ中継カメラマンが,どのような状況でどのようなカメラワークで撮影するのかといった撮影ノウハウをベースに,カメラワークを自動生成するソフトウェアを試作した。このソフトウェアは,選手・ボールの位置関係,顔の向きから推定した注目エリア,選手の移動速度から推定したチームの攻守の状況や試合に積極的に関与している選手を理解し,撮影すべきエリア(カメラの構図)をシーンごとに自動的に決定することができる(2図)。

今後は,カメラワークの自動生成にAIを導入することで,より自然なカメラワークを実現するとともに,処理の高速化・実時間化に取り組み,AIロボットカメラの実用化を目指す。

なお,本研究は,(株)イマジカ・ライヴ,(株)Jリーグと協力して進めている。

2図 カメラマンの撮影ノウハウに基づいて自動生成されたカメラワーク
(ボールに積極的に関与する選手とボールの動きから予測された未来のボールの位置を基にカメラの構図を決定)