ライブ動画配信に適した動画ビットレート制御技術

当所では,インターネットを活用した動画配信の研究に取り組んでいる。今回,視聴端末の接続数が増加しても,配信サーバーの混雑を回避することで,より安定してライブ動画を配信できる動画ビットレート制御技術を開発した。

動画配信の課題

インターネットでは,時間や場所によって回線の混雑状況が変動する。そのため,回線が混雑しても視聴端末が動画を途切れさせずに再生する方法として,アダプティブストリーミング方式が利用されている。この方式では,ビットレートが異なる高品質や低品質などの動画を配信サーバーに複数用意しておき,各視聴端末が回線の混雑状況に応じて自動的に動画品質を選択する。

しかし,視聴端末だけでは混雑の原因を特定できない。そのため,視聴端末の接続数が増えて配信サーバーが混雑した場合も,各視聴端末は回線が混雑したと判断して一斉に低品質動画を選択し始める。その結果,配信サーバーの混雑は解消されるが,その後,今度は視聴端末が一斉に高品質動画を選択することにより,再び配信サーバーが混雑する。この現象が繰り返されると,動画品質の切り替えが頻繁に発生するため,体感品質*1 が低下する。

提案する制御技術

今回開発した技術では,配信側が視聴端末の接続数に応じてリアルタイムに動画ビットレートを制御することで,配信サーバーの混雑を回避する。具体的には,動画ビットレート制御サーバーにおいて,動画配信サーバーに接続している視聴端末数を監視し(1図の(1)),動画配信ビットレートの合計が配信サーバーの送信容量未満となるように,高品質動画のビットレートを調整する(1図の(2))。こうして,視聴端末数が増加しても,各視聴端末は低品質に切り替わることなく高品質動画の受信を継続できる(1図の(3))。高品質動画のビットレートを下げることで動画品質は下がるが,きめ細かくビットレートを調整するため,動画品質の切り替えが抑制され,体感品質が維持される。また,開発した技術は,同時にエンコードする動画品質の数が増えないため,小規模な配信システムにも導入しやすい技術である。

今後は,光回線やモバイル回線などさまざまな回線で検証実験を行い,いつでもどこでも安定して視聴可能な技術の開発を目指す。

1図 動画ビットレート制御の流れ