8Kケーブルテレビ配信の実現に向けた複数搬送波伝送方式

袴田 佳孝 倉掛 卓也 中村 直義

8Kスーパーハイビジョン放送のケーブルテレビ配信の実現に向けて,ケーブルテレビ伝送技術の研究開発を進めている。我々は,大容量の8K放送をケーブルテレビで配信するために,8K信号を分割して複数の搬送波で伝送する複数搬送波伝送方式を開発した。この方式を標準化機関に提案し,国内標準規格および国際勧告が発行された。本稿では,複数搬送波伝送方式の概要,および本方式を適用した8K伝送実験について述べる。

1.はじめに

8Kスーパーハイビジョン(以下,8K)は,現行のデジタル放送をはるかに上回る臨場感を提供する次世代の放送システムである。8Kは,現行のデジタル放送の16倍となる7,680×4,320個の画素を持つ。2015年7月に総務省から公表された「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合 第二次中間報告」においては,2016年に4K・8Kの試験放送,2018年に実用放送を開始するという目標が示されている。2014年には,衛星による8K放送の開始を目指して,約100Mbpsの伝送容量を持つ高度広帯域衛星放送方式が標準規格として策定された1)

8Kの普及に向けては,ケーブルテレビ伝送技術の確立も重要な要素である。8K信号を家庭にケーブルテレビで配信するためには,大容量のデータ伝送方式が必要になる。現在,ケーブルテレビ事業者は,現行のデジタル放送の番組を64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)の搬送波を用いて1チャンネル(帯域幅は6MHz)で伝送している。また,2015年12月にスタートした124度/128度CS(Communications Satellite)による4K実用放送のケーブルテレビによる再放送(以下,ケーブルテレビ再放送)は,256QAMの搬送波を用いて実施されている。

現行のケーブルテレビにおいては,1チャンネル当たりの伝送容量は64QAMで約30Mbps,256QAMで約40Mbpsであり,1チャンネルで大容量の8K信号を伝送することはできない。そこでNHKは,8K信号をケーブルテレビで伝送するために,既存の伝送方式を拡張し,大容量の8K信号を分割して複数の搬送波で伝送する方式(以下,複数搬送波伝送方式)を開発した2)3)。この方式では,ケーブルテレビのヘッドエンド*1 で大容量の8K信号を分割して,複数の搬送波で伝送する。

NHKは,本方式の詳細仕様を検討し,(一社)日本CATV技術協会(JCTEA:Japan Cable Television Engineering Association)の民間標準規格の策定に向けて提案を行った。この提案は,JCTEAのケーブル伝送方式高度化ワーキンググループにおいて議論され,2015年3月に,関連する省令・告示が改正された4)5)6)。その後,JCTEAの国内標準規格が発行された7)8)9)。さらに,国内標準規格の内容をITU-T SG9(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector Study Group 9)に提案し,審議の結果,2016年3月に方式を構成する3つの国際勧告が承認された10)11)12)

本稿では,複数搬送波伝送方式の概要と,本方式に準拠した試作装置を用いて実施した8K伝送実験について報告する。

2.8Kケーブルテレビ伝送方式の要件

8Kケーブルテレビ伝送方式の開発にあたっては,次の要件を想定した。

  • 要件1 8Kの圧縮信号を伝送するために,100Mbpsの伝送速度に対応可能なこと。
  • 要件2 導入コストを低減するために,所要C/N比(Carrier to Noise Ratio)などの,既存の伝送路への要求条件は変更しないこと(既存の伝送路を活用できること)。
  • 要件3 高度広帯域衛星放送方式の多重化方式として採用されたTLV(Type Length Value)信号(可変長のパケット形式の信号)の伝送に対応可能なこと。

3.複数搬送波伝送方式

3.1 伝送方式の概要

前章の要件を考慮して開発した複数搬送波伝送方式の概要を1図に示す。

本方式では,ケーブルテレビ局のヘッドエンドにおいて,大容量の8K信号をケーブルテレビの1チャンネル分の伝送容量以下に分割し,それぞれの信号を多重フレームTSMF(Transport Streams Multiplexing Frame)10) を用いて多重化し,複数の搬送波で伝送する。各搬送波は,それぞれ1つのチャンネルで伝送される。各搬送波の変調方式は,現在のデジタル放送のケーブルテレビ再放送で採用されている64QAMまたは256QAMとし,既存の伝送路を活用できるようにしている。256QAMは64QAMよりも伝送容量は大きいが,雑音や歪みの影響を受けて信号のビット誤りが起こりやすいため,チャンネルの雑音・歪み特性によっては64QAMでないと伝送が困難な場合がある。そこで,各チャンネルの伝送品質に応じて,64QAMと256QAMが混在する組み合わせも可能とした。ケーブルテレビ事業者は,現行の商用サービスで使用していない任意の複数のチャンネルを選択して,各チャンネルの伝送品質に応じて変調方式を選択し,8K信号を伝送することができる。

受信側では,各搬送波を復調した信号からTSMFを取り出して同期合成し,8K信号を再生する。

1図 複数搬送波伝送方式の概要

3.2 8K信号の分割・合成

本節では,大容量の8K信号を送信側で分割して複数の搬送波で伝送し,受信側でTSMFを活用して,複数の搬送波の信号を同期合成する仕組みについて説明する。

まず,現在のデジタル放送のケーブルテレビ再放送で使われている多重フレームTSMFについて簡単に説明する。TSMFの構造を2図に示す。TSMFの1フレームは,53個のスロットで構成される。各スロットをMPEG-2 TS(Transport Stream)パケット(以下,TSパケット)と同じ大きさ(188バイト)とすることで,MPEG-2 TS伝送用に開発された変調方式と組み合わせて利用することができる。TSMFの先頭の1スロットはフレームヘッダーとし,TSパケットの配置を示す情報などを格納している。残りの52スロットがTSパケットを配置するパケット配置用スロットとなっている。最大15個のMPEG-2 TSを1つのTSMFに多重化することができる。

64QAMの搬送波の信号と256QAMの搬送波の信号は情報伝送速度が異なるため,TSMFの1フレームの情報を伝送するために必要な時間は64QAMと256QAMで異なる。この時間は,64QAMでは約2.73ミリ秒,256QAMでは約2.05ミリ秒である。複数の搬送波の変調方式が同じ(例えば,256QAM×3搬送波)であれば,各搬送波の情報伝送速度が等しいため,受信機でTSMFのフレームヘッダーを同期の基準信号に用いて複数の搬送波の信号を同期させ,大容量の8K信号を再生することができる。一方,複数の搬送波の変調方式として64QAMと256QAMが混在している場合は,TSMFのフレームヘッダーを用いてフレームを同期させることができず,受信した信号を合成することができない。そこで本方式では,64QAMと256QAMの搬送波の信号を受信機で同期合成するために,64QAMと256QAMの伝送速度の整数比(3:4)によって決まる複数の多重フレームを単位とするスーパーフレームを定義した。

3図に64QAMと256QAMの信号を同期合成するためのスーパーフレームの構成を示す。送信装置では,スーパーフレームを用いて,複数の搬送波に分割した信号を伝送する。そして受信機では,スーパーフレーム単位で複数の搬送波の信号を合成することで,8K信号を正しく再生することができる。このとき,同期合成に必要となる「スーパーフレーム内のTSMFフレーム数情報」および「スーパーフレーム内のTSMFフレームの位置情報」を,TSMFのフレームヘッダー内の,現在のデジタル放送のケーブルテレビ再放送では定義されていない拡張領域(extension_data領域:680ビット)に追加する。

2図 TSMFの構造
3図 スーパーフレームの構成

3.3 既存の伝送方式との後方互換性

複数搬送波伝送方式において,大容量の8K信号とともに既存のデジタル放送をTSMFに多重化することができれば,より効率の良い伝送を実現することができる。4図に,複数搬送波伝送方式の信号と既存のデジタル放送を多重化する例を示す。TSMFの機能を活用することで,1つの搬送波に,現行のデジタル放送で使われるMPEG-2 TSとともに,8K信号を分割した信号を多重化して伝送することも可能である。従来のデジタル放送のTSMFを拡張した多重フレームを用いているため,既存のデジタル放送の部分を現行受信機で受信することが可能であり,後方互換性を確保できる。

4図 複数搬送波伝送方式の信号と既存のデジタル放送との多重化例

3.4 TLVパケットへの対応

本方式の伝送信号の多重化方式は,従来のデジタル放送のMPEG-2 TSとともに,高度広帯域衛星放送方式で採用されたTLV13) にも対応している。TLVは,IP(Internet Protocol)パケットを放送伝送路で効率的に伝送するための多重化方式である。TLVパケットは,IPv4パケット,IPv6パケット,ヘッダー圧縮IPパケット,伝送制御信号,Nullの5種類のタイプを持ち,先頭にパケットタイプおよびパケット長の値を付加した可変長パケットである。一方,現行のデジタル放送のケーブルテレビ再放送では,長さが188バイトのMPEG-2 TSパケットをTSMFに多重化して伝送している。そこで,TLVパケットをTSMFに多重化するために,TLVパケットを分割し,MPEG-2 TSパケットと同じサイズのパケットにカプセル化*2 する。

5図にTLVパケットのカプセル化方式14) を示す。送信装置に入力されたIPパケットは,TLVパケット化された後に,分割TLVパケットへカプセル化される。ここで分割TLVパケットは,TSパケットと同様に,長さが188バイトで,先頭の1バイトの値が0x47のパケットであり,先頭の3バイトがパケットヘッダーである。分割TLVパケットは,TSパケットとともに(あるいは分割TLVパケットのみで)TSMFに多重化され,QAM変調されて伝送される。受信装置が分割TLVパケットからTLVパケットを復元するために必要な情報である「TLVパケットの先頭位置(5図参照)の情報」は,分割TLVパケットのヘッダーに格納して伝送する。

受信装置では,QAM復調して得られたTSMFから,所望のTLVパケットがカプセル化されている分割TLVパケットを取り出し,分割TLVパケットのヘッダーに格納されている「TLVパケットの先頭位置の情報」およびTLVパケット内の「TLVパケット長の情報」を用いて,TLVパケットを復元して出力する。

5図 TLVパケットのカプセル化方式

4.伝送実験

本章では,(株)日本ネットワークサービスおよび(株)ジュピターテレコムの既設のケーブルテレビ施設において,複数搬送波伝送方式を適用し,試作装置を用いて実施した8K伝送実験について報告する。また,高度広帯域衛星放送のケーブルテレビ再放送を想定した室内実験についても報告する。

4.1 伝送特性の評価 (実験1)

本節では,2013 年2月に,(株)日本ネットワークサービスのケーブルテレビ施設で行った実験15) について説明する。

実験実施時の(株)日本ネットワークサービスのサービスエリアを6図に示す。サービスエリアのうち大半のエリアでは,HFC(Hybrid Fiber and Coaxial)*3 の伝送施設が運用されていた。また,一部地区においてはFTTH(Fiber To The Home)*4 の伝送施設が導入されていた。HFCの伝送施設においては,伝送帯域は90~770MHz,商用サービスでの運用チャンネル数は53であった。一方,FTTHの伝送施設においては,伝送帯域は90 MHz ~2.6 GHz ,商用サービスでの運用チャンネル数はBS(Broadcasting Satellite)-IF(Intermediate Frequency)を含む64チャンネルであった。ヘッドエンドは甲府市内にあり,サービスエリアは山梨県内の7市3町をカバーする範囲である。

実験仕様を1表に,実験系統を7図に示す。本実験では,実験実施時に未使用であった5つのチャンネルを使用し,181.2Mbpsの8K信号(MPEG-2 TS)を5分割して,5つの搬送波で伝送した。5つのチャンネルのうち,4つのチャンネルの搬送波は256QAMとし,1つのチャンネルの搬送波は64QAMとした。そして,ヘッドエンドにおいて,複数搬送波伝送方式の5つの搬送波と既存のサービスで運用されている多チャンネル信号とを周波数分割多重し,HFCおよびFTTHの伝送施設に配信した。測定地点は,HFCで2地点(7図の①,②)およびFTTHで1地点(7図の③)とし,各々の受信点においてBER(Bit Error Rate)を測定して,伝送特性の評価を行った。7図で,E/Oは電気信号から光信号への変換器,O/Eは光信号から電気信号への変換器を表す。

6図 (株)日本ネットワークサービスのサービスエリア (実験実施時)
1表 実験仕様 (実験1)
MPEG-2 TSの伝送速度 181.2Mbps
1チャンネルの帯域幅 6MHz
誤り訂正符号 RS (204,188)
チャンネル数 256QAM : 4チャンネル
および
64QAM : 1チャンネル
各チャンネルの
中心周波数(MHz)
256QAM : 695,701,707,713
64QAM : 719

※ Reed Solomon

7図 実験系統 (実験1)

(1)CN比対BER特性

7図に示す測定地点①~③において,雑音の大きさを変化させて, 5つの搬送波(4波の256QAMと1波の64QAM)のそれぞれについて受信CN比(Carrier to Noise Ratio)を測定し,5つの搬送波を平均した平均受信CN比を求めた。そして,この平均受信CN比に対して,試作受信機で合成された信号のBER(誤り訂正なし)を測定した。既存のサービスに影響を及ぼさないように,試作受信機の入力で雑音(白色ガウス雑音)を加える構成とした。

複数搬送波(256QAM×4,64QAM×1の合計5波)で伝送した信号のBERの理論値は,(1)式を用いて算出した。

ここで,CNR64QAMCNR256QAM,iは,それぞれ64QAMの搬送波とi番目の256QAMの搬送波の受信CN比を示し,erfcは誤差補関数を表す。(1)式は,各搬送波のCN比が28dBより高い範囲に適用することとした。

測定結果を8図に示す。測定地点①~③において雑音を加えない状態で測定した平均受信CN比は37~38dBであった。擬似エラーフリー(誤り訂正前のBERが1×10-4)とするための平均受信CN比は31.5dBであり,5.5dB以上の平均受信CN比の余裕値が得られた。この余裕値は,ケーブルテレビの加入者宅内における伝送特性劣化に対する余裕値と見なすことができる。また,室内実験とフィールド実験で同じBERを得るための平均受信CN比の差は,1.2dBより小さかった。以上の実験結果から,既設のケーブルテレビ伝送路において,現行のケーブルテレビの多チャンネル信号と複数搬送波伝送方式の信号とを周波数分割多重した場合でも,安定した品質で配信できる見通しが得られた。

8図 CN比-BER特性 (実験1)

(2)分割・合成機能の評価

複数搬送波伝送方式を適用する際に,大容量のMPEG-2 TSの分割・合成が正しく行われているかをBER測定により評価した。複数搬送波伝送方式の伝送チャンネルと同一のチャンネルにおいて,各搬送波のCN比-BER特性を測定し,各搬送波のBERの平均値をグラフにした。そして,その結果を複数搬送波伝送方式で伝送した信号のCN比-BER特性と比較した。本測定は,測定地点①において行った。測定結果を9図に示す。各搬送波のBERの平均値と複数搬送波伝送方式で伝送した信号のBERに差異はほとんどなく,MPEG-2 TSの分割・合成が正しく行われていると推定することができる。

9図 CN比-BER特性 (実験1の測定地点①)

4.2 8K映像・音声の伝送実験 (実験2)

2014年5月に,(株)ジュピターテレコムのケーブルテレビ施設で,高度広帯域衛星放送方式の伝送容量と同等の100Mbpsのビットレートを持つ8K信号をケーブルテレビ伝送する実験を行った16)

実験を実施したケーブルテレビ施設のサービスエリアは,全域HFCの施設形態であり,伝送帯域は90~770MHzである。伝送帯域のうち3チャンネルを用いて伝送実験を行った。実験仕様を2表に,実験系統を10図に示す。この実験では,ヘッドエンドにおいて,100Mbpsの8K信号(MPEG-2 TS)を分割して,64QAMと256QAMを組み合わせた3つの搬送波で伝送した。この8K用の3搬送波と,商用サービスで運用中の一部の下り信号12チャンネルを混合し,1.55µm帯の波長(1560.6nm)の光信号を強度変調した。さらに,この信号と商用サービスで運用中の残りの89チャンネルの下り光信号(1545.3nm)とを波長多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)し,合計104チャンネルの下り信号として伝送施設に配信した。

受信地点には試作受信機と,145インチ8K直視型ディスプレーおよびスピーカーを設置し,受信信号から8KのMPEG-2 TS信号を復元して,8Kの映像および音声の再生テストを行った。1日8時間の連続再生を7日間行い,安定動作を確認した。11図に受信信号スペクトラム,12図に実験の様子をそれぞれ示す。11図は,合計104チャンネルの下り信号が周波数分割多重されている様子を示し,横軸の周波数範囲は90~770MHz(中心周波数は475MHz),縦軸の1目盛りは10dBである。2014年のNHK技研公開では,本実験の概要を一般公開した。

2表 実験仕様 (実験2)
MPEG-2 TSの伝送速度 100Mbps
1チャンネルの帯域幅 6MHz
誤り訂正符号 RS (204,188)
チャンネル数 256QAM : 2チャンネル
および
64QAM : 1チャンネル
各チャンネルの
中心周波数(MHz)
256QAM : 273,447
64QAM : 635
映像符号化方式 MPEG-H HEVC※1
音声符号化方式 MPEG-4 AAC※2

※1 High Efficiency Video Coding
※2 Advanced Audio Coding

10図 実験系統 (実験2)
11図 受信信号スペクトラム (実験2)
12図 (株)ジュピターテレコムの施設を利用した実験の様子

4.3  衛星による超高精細度テレビジョン放送のケーブルテレビ再放送システムの室内伝送実験 (実験3)

高度広帯域衛星放送方式による超高精細度テレビジョン放送では,MMT・TLV形式の信号が採用される予定である17)。現在検討している複数搬送波伝送方式を適用した衛星による超高精細度テレビジョン放送のケーブルテレビ再放送システムの構成を13図に示す。

13図では,ケーブルテレビ局で衛星による超高精細度テレビジョン放送を受信し,復調して出力されたMMT・TLV信号を前述の分割TLVパケットへカプセル化する。そして,分割TLVパケット列を複数に分割し,それぞれをTSMFに多重化した後,256QAMまたは64QAMの複数の搬送波で伝送する。

試作装置を用いて,8K衛星放送のケーブルテレビ再放送に向けた室内実験を実施した。この実験では,8K衛星実験放送を受信し,複数搬送波伝送方式を適用してケーブルテレビ再放送を行った。その結果,MMT・TLV信号が安定して伝送され,試作受信機で8Kの映像および音声を再生できることを確認した。本実験の様子は,2015年のNHK技研公開で一般公開した。14図に,技研公開における展示の様子を示す。

13図 衛星による超高精細度テレビジョン放送のケーブルテレビ再放送システムの構成
14図 2015年のNHK技研公開における展示

5.まとめ

本稿では,8Kをケーブルテレビで家庭に配信するための複数搬送波伝送方式の概要について報告した。ケーブルテレビ実施設(HFC,FTTH)において,複数搬送波伝送方式を適用し, 大容量のMPEG-2 TSを, 既存の搬送波(64QAMまたは256QAM)と同様に,既設のケーブルテレビ伝送路で伝送できることを確認した。

今後は,衛星による超高精細度テレビジョン放送のケーブルテレビ再放送に向けて,複数搬送波伝送方式を適用し,ケーブルテレビ実施設でのMMT・TLV信号による8K伝送実験を実施する予定である。

謝辞 実施設での伝送実験の実施にあたり,全面的にご協力いただきました(株)日本ネットワークサービス(NNS)および(株)ジュピターテレコム(J:COM)の皆様に感謝申し上げます。

本稿は,ITE Transactions on MTAに掲載された以下の論文を元に加筆・修正したものである。
Y. Hakamada,N. Nakamura,T. Kurakake,T. Kusakabe and K. Oyamada:“ UHDTV(8K) Distribution Technology and Field Trial on Cable Television Networks,” ITE Trans. on MTA,Vol.2,No.1,pp.2-7 (2014)