22.2マルチチャンネル音響方式の標準化動向

濱崎公男

将来の高臨場感放送を目指して研究開発を進めているスーパーハイビジョンの音響方式は22.2マルチチャンネル音響方式である。22.2マルチチャンネル音響方式は,現行のデジタル放送で採用されている5.1マルチチャンネル音響方式と比較して,我々が普段聞いている音により近い音響印象を再現できる3次元音響再生方式である。22.2マルチチャンネル音響方式の概要と,現在進めている国際標準化の動向について解説する。

1. はじめに

当所では,スーパーハイビジョン1) を開発し,高臨場感放送の実現に向けた研究を行っている。スーパーハイビジョンは視野角*1 100°を実現する走査線4,000本の超高精細映像システムである。映像システムにおける標準視距離とは視力1.0の人がその画素構造をぎりぎり検知できない距離と定義されている。画面のサイズおよび縦横比が一定の場合には,視野角は標準視距離で決まり,画素数を増やすほど視野角を大きくすることができる。臨場感は視野角100°で飽和する傾向にあり2),標準視距離で視野角100°を実現するシステムがスーパーハイビジョンである。スーパーハイビジョンの音響方式として研究開発している22.2マルチチャンネル音響方式3) は,超高精細映像と組み合わせて高臨場感映像音響コンテンツを制作・記録・伝送・再生することを目的としている。22.2マルチチャンネル音響方式の番組制作や放送を複数の国で実現させ,コンテンツの国際交換を可能とするためには,音響再生方式,音響機器,インターフェース,制作および再生環境などの互換性を維持することが必須となる。この互換性を国際的に保証する規格が国際規格であり,規格を策定する過程が標準化である。

現在,22.2マルチチャンネル音響方式の国際標準化が進められている。本稿では,22.2マルチチャンネル音響方式の概要,音響およびオーディオ技術に関する標準化組織について紹介するとともに,22.2マルチチャンネル音響方式にかかわる標準化の動向を解説する。

2. 22.2マルチチャンネル音響方式

2.1 高臨場感音響方式に求められる要求条件

スーパーハイビジョン用の高臨場感音響方式に求められる要求条件を以下のように設定した。

  1. スクリーン上の任意の位置に音像が定位可能なこと
    広視野・大画面での視聴環境では,映像と音像*2 の方向を一致させることが重要である。従って,スクリーン上の任意の位置に音像を定位できる方式にする必要がある。
  2. 視聴位置を取り囲む全方向から来る音が再現可能なこと
    実際の音場では全方向から音が到来する。従って,高臨場感を実現するためには,全方向から来る音を再現できる方式にする必要がある。
  3. 自然で高品質な3次元音響空間が再現可能なこと
    コンサートホールなど残響の多い3次元音響空間をできるだけ自然に,高品質に再現できる方式にする必要がある。
  4. 最適な聴取範囲の拡大
    マルチチャンネル音響再生では,各スピーカーから等距離の聴取エリア中央付近でコンテンツ制作者が意図した音響をほぼ忠実に再現することができる。しかし,複数の人が同時に視聴する環境では,できるだけ広い範囲で高品質な音響を再現できる方式にする必要がある。
  5. 既存のマルチチャンネル音響方式との互換性を有すること
    新しく開発するマルチチャンネル音響方式では,実用化されているマルチチャンネル音響方式や既に提案されている新しいマルチチャンネル音響方式との互換性が求められる。互換性には2つの側面がある。1つは,他のマルチチャンネル音響方式で制作されたコンテンツが新しく開発する方式で再生できることである。他の1つは,新しく開発する方式で制作したコンテンツが,何らかの処理を行うことによって,他のマルチチャンネル音響方式でも再生できることである。
  6. ライブ収録および生放送に対応できること
    放送を目的としている音響方式なので,ライブ収録や生放送に対応できる収音再生方式とする必要がある。放送用の音響方式に求められる条件として重要なことは,その方式を用いた放送番組が制作できることであり,番組制作に携わるエンジニアやディレクターの創造性を最大限に発揮できる方式にすることである。従って,音響空間再現性能以外に,従来の放送用の音響方式と同等あるいはそれらを超える高音質な制作および再生を可能とすることも必須である。

以上の要求条件を満たす音響方式が1図に示す22.2マルチチャンネル音響方式である。1図では,各チャンネルの位置を○印で示し,それぞれにチャンネルラベル名を併記している。チャンネルは音の到来する方向に対応し,1図で示す位置にスピーカーを設置して,対応するチャンネルの音響信号を再生する。22.2マルチチャンネル音響方式のチャンネルは1図に示すように上層,中層,下層の3層から成る。上層はスクリーンの上部または部屋の天井と同じ高さであり,9チャンネルを配置する。中層は垂直方向のスクリーン中央位置または聴取者の耳と同じ高さであり,10チャンネルを配置する。下層はスクリーンの下部または床面と同じ高さであり,3チャンネルを配置する。また,下層には2個のLFE(Low Frequency Effects:低域効果)チャンネルを配置する。

22.2マルチチャンネル音響方式には22個の広帯域のスピーカーと2個のLFE用のスピーカーが基本的には必要であるが,より少ないスピーカーで1図に示すチャンネル方向からの音の到来を再現することも可能である。ただし,その場合には最適な聴取範囲が狭くなる。

1図 22.2マルチチャンネル音響方式

2.2 22.2マルチチャンネル音響方式の特徴

22.2マルチチャンネル音響方式では,中層のチャンネルで最も主要な音源を再生する。既存の5.1,6.1,7.1マルチチャンネル音響方式*3 などの主要なチャンネルは中層にあるので,既存のマルチチャンネル音響方式で制作した音響コンテンツを22.2マルチチャンネル音響方式で再生することは容易である。

聴取者の側方には,左右それぞれに3チャンネル(前,横,後)を配置しており,側方における音像の前後移動が表現できる。また,側方チャンネルによって自然で高品質な音響空間を再現することができる。コンサートホールなどでの音楽演奏での広がり感や包み込まれ感には側方からの反射音が重要であり4),側方のスピーカーで反射音を適切に再生することで,ホールの自然な音響空間の印象を再現することができる。

上層のチャンネルは聴取者の上部の任意の位置への音像定位や,中層または下層のチャンネルとの相互利用によって音像の上下移動などに利用される。すなわち,従来のマルチチャンネル音響方式では不可能であった音像の上下感を再現することができる。また,上層のチャンネルは広い聴取範囲で良好な響き感や包み込まれ感を再現するためにも重要である。特に,上層のチャンネルで初期反射音や後部残響音を適切に再生することで,広い聴取範囲で良好な音響空間を再現することができる3)

スクリーン上部に配置した3チャンネル(TpFL,TpFC,TpFR),スクリーン下部に配置した3チャンネル(BtFL,BtFC,BtFR),中層の前方に配置した5チャンネル(FL,FLc,FC,FRc,FR)を用いることによって,映像スクリーン上の任意の位置に音像を定位させることができる。また,スクリーン下部に配置した2チャンネルのLFEは広がり感や包み込まれ感などの空間印象を向上させる効果5) がある。

3. 音響およびオーディオ技術に関する標準化組織

音響およびオーディオ技術に関する標準化を行っている代表的な組織を2図に示す。既に述べたように,22.2マルチチャンネル音響方式は高臨場感映像音響コンテンツを制作・記録・伝送・再生することを目的として研究開発を行っているが,2図では番組制作,伝送・符号化,家庭視聴という実際の放送における3つの過程に分類して各標準化組織の関係を示している。以下,2図に示した標準化組織について簡単に説明する。なお,ITU-Rは政府間の組織,その他の組織はすべて民間組織である。

  • ITU-R(International Telecommunication Union - Radiocommunication Sector:国際電気通信連合無線通信部門)
    電波を利用した放送やその他のメディアに関連した音響およびオーディオ技術の標準化を行っている。国際連合の傘下にあり,放送局にとっては重要な国際機関の1つである。
  • SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers:米国映画テレビ技術者協会)
    映画およびテレビジョンに関連した音響およびオーディオ技術の標準化を行っている。
  • EBU(European Broadcasting Union:ヨーロッパ放送連合)
    ヨーロッパの放送局で構成された連合であり,放送のオーディオ技術にかかわる標準化を行っている。
  • AES(Audio Engineering Society:米国オーディオ技術協会)
    プロフェッショナルオーディオ技術に関する唯一の国際組織である。標準化委員会では音響およびオーディオの収音・記録・伝送・再生にかかわる広範囲な標準化を行っている。特に,AESで標準化されたデジタルオーディオインターフェース規格(例えば,AES3-20096))は他の標準化組織におけるデジタルオーディオ関連規格で必ずと言ってよいほど参照されている重要な規格である。
  • IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)
    IECにおける技術委員会(Technical Committee)のTC100(オーディオ・ビデオ・マルチメディアシステムおよび機器)で,民生機器を中心としたデジタルオーディオ関連の標準化を行っている。
  • ISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)/IEC
    ISOとIECの合同組織であるISO/IEC JTC1/SC29/WG11*4,通称MPEG(Moving Picture Experts Group:エムペグ)でデジタルオーディオ信号の符号化に関する標準化を行っている。
  • ARIB(Association of Radio Industries and Businesses:(社)電波産業会)
    通信・放送分野における電波の有効利用に関する調査研究,研究開発,標準化などや,日本国内の放送に関連したオーディオ技術の標準化を行っている。

2図 音響およびオーディオ技術に関する主な標準化組織

4. 22.2マルチチャンネル音響方式の標準化動向

22.2マルチチャンネル音響方式に関する標準化作業は3図に示すように,複数の標準化組織で番組制作,伝送・符号化,家庭視聴の各技術要素について行っている。EBUは3図には示していないが,当所はEBUのオーディオ技術標準化のプロジェクトに参加し,22.2マルチチャンネル音響方式に関連する可能性のあるBWF(Broadcast Wave Format)*5 などの標準化に貢献している。以下,各標準化組織における22.2マルチチャンネル音響方式の標準化動向を紹介する。

3図 22.2マルチチャンネル音響方式の標準化

4.1 ITU-R

ITU-Rでは22.2マルチチャンネル音響方式を用いた放送を実現するための国際標準化を行っている。デジタル放送用のマルチチャンネル音響方式は勧告BS.775-27) で規定されており,その中の5.1マルチチャンネル音響方式は広く使用されている。ITU-Rで5.1マルチチャンネル音響方式を超える音響方式の研究を開始するために,研究課題の改訂提案を行い,研究課題135/68) が承認された。研究課題135/6に基づいて,水平面内だけでなく3次元的にスピーカーを配置するマルチチャンネル音響方式に関する研究を行っている。家庭および放送応用のマルチチャンネル音響技術などを研究するとともに,5.1マルチチャンネルを超えるマルチチャンネル音響方式の勧告化を進めている。

2009年には22.2マルチチャンネル音響方式を含めたマルチチャンネル音響方式に関する最新動向を記載したレポートBS.21599) が承認された。

また,2009年11月の会合で,新勧告案「3次元マルチチャンネル音響方式スタジオ規格」を提案した。この勧告案は22.2マルチチャンネル音響方式を最上位とする階層的な3次元音響方式のスタジオ規格を提案したもので,3層構造スピーカー配置や各音響チャンネルの名称およびチャンネルマッピングを記載している。現在,ITU-R WP6C内に設置されたラポーターグループで,勧告案を検討している。

4.2 SMPTE

SMPTEでは22.2マルチチャンネル音響方式を用いた番組制作にかかわる規格の標準化を行っている。SMPTEでのスーパーハイビジョンの映像および音響に関する標準化はUHDTV(Ultra-High Definition TV)の映像および音響として行われている。SMPTEではUHDTV1とUHDTV2が規定されており,画素数はUHDTV1が3,840×2,160,UHDTV2が7,680×4,320である10)。UHDTV2がスーパーハイビジョンと同じ精細度を持つ映像システムであり,UHDTVの映像方式はST2036-1-200910),音響方式はST2036-2-200811),インターフェース方式はST2036-3-201012) で標準化されている。

音響方式のST2036-2-2008では,デジタルオーディオのサンプリング周波数は48kHzまたは96kHz,ビット長は16,20,24ビットのいずれか,チャンネル数は24,プリエンファシス*6は無しと規定されている。また,音響方式として22.2マルチチャンネル音響方式が規定されており,1表に示すように,チャンネルマッピングとチャンネルラベルおよび名称が決まっている。なお,1図のスピーカー配置は参考例として示されている。

サンプリング周波数96kHzのデジタルオーディオ信号をHD-SDI(High Definition — Serial Digital Interface)*7 で伝送するための規格ST299-1-200913) が標準化されている。この規格は,サンプリング周波数48kHzのデジタルオーディオ信号をHD-SDIで伝送するための規格ST-299m-2004をサンプリング周波数96kHzに対応するように修正した規格である。

現在,SMPTEでは,MXF(Material Exchange Format)というビデオやオーディオを交換するための標準ファイルフォーマットにおいて,マルチチャンネル音響方式のチャンネルラベルや音響空間定義(スピーカー配置)をメタデータとして規定するための規格を検討している。

1表 SMPTE ST 2036-2-2008で規定された22.2マルチチャンネル音響方式のチャンネルマッピングとチャンネルラベルおよび名称
AES
Pair No./Ch No.
Channel
No.
Label Name
1/1 1 FL Front left
1/2 2 FR Front right
2/1 3 FC Front center
2/2 4 LFE1 LFE-1
3/1 5 BL Back left
3/2 6 BR Back right
4/1 7 FLc Front left center
4/2 8 FRc Front right center
5/1 9 BC Back center
5/2 10 LFE2 LFE-2
6/1 11 SiL Side left
6/2 12 SiR Side right
7/1 13 TpFL Top front left
7/2 14 TpFR Top front right
8/1 15 TpFC Top front center
8/2 16 TpC Top center
9/1 17 TpBL Top back left
9/2 18 TpBR Top back right
10/1 19 TpSiL Top side left
10/2 20 TpSiR Top side right
11/1 21 TpBC Top back center
11/2 22 BtFC Bottom front center
12/1 23 BtFL Bottom front left
12/2 24 BtFR Bottom front right

4.3 AES

AESではスーパーハイビジョンに対応したデジタルオーディオインターフェースの標準化を行っている。SMPTE ST 2036-1-2009で規定しているすべての映像フレームレートに対応してデジタルオーディオのサンプリング周波数を同期させるために,映像のフレームレートとデジタルオーディオの同期関係を規定しているAES11を改定し,AES11-200914) として標準化した。また,24チャンネルのデジタルオーディオ信号を75Ωの同軸ケーブル1本で伝送する規格としてMADI(Multichannel Audio Digital Interface)を利用することとし,1991年に標準化されたMADIの改訂作業を行い,2008年にAES10-200815) が発行された。

現在,AESではマルチチャンネル音響に関するメタデータや新しいデジタルオーディオインターフェースなどの規格化を検討している。また,後述するIECでの標準化はAESと共同で進めている。

4.4 IEC

IECではTC100で,22.2マルチチャンネル音響方式を家庭で再生するための民生用デジタルオーディオインターフェースの検討を行っている。デジタルオーディオインターフェースで24チャンネルの22.2マルチチャンネル音響方式の信号を伝送するためには,まず,SMPTE ST 2036-2-2008で規定したようなチャンネルマッピングとチャンネルラベルおよび名称の規格が必要である。そこで,22.2マルチチャンネル音響方式を含む,他のマルチチャンネル音響方式にも対応するマルチチャンネルマッピングの標準化作業を行っている。2011年中には新しい規格IEC62574として発行される予定である。また,AES3-2009の民生規格であるIEC60958-3に関しても,22.2マルチチャンネル音響方式の放送および家庭再生を視野に入れた検討を行っている。

4.5 ISO/IEC

22.2マルチチャンネル音響方式に適した3次元音響符号化方式の標準化活動を行っている。現行のデジタル放送で利用されているオーディオ符号化方式MPEG2-AACでは,22.2マルチチャンネル音響方式を含む3次元音響方式に対応したチャンネル構成が記述できない。そこで,MPEG2-AACの改定を提案し,2009年に修正文書が発行された。その結果,22.2マルチチャンネル音響方式を含む3次元音響のオーディオ信号をMPEG2-AACで符号化することが可能となった。

4.6 ARIB

ARIBでは日本国内における22.2マルチチャンネル音響方式を用いた放送を実現するための標準化活動を行っている。総務省令第26号「標準テレビジョン放送等のうちデジタル放送に関する送信の標準方式」の2003年の改訂に伴い,「高度BSデジタル放送および高度広帯域CSデジタル放送における最大入力音声チャンネル数は,22チャンネルおよび低域を強調する2チャンネルとする」という規定を追加した。これに対応して,ARIBではARIB STD-B3216) の改定を行い,「最大22.2チャンネルのマルチチャンネル音声モードに対応したMPEG2-AAC音声符号化方式規定」の追加を行った。

また,解像度1,080本を超えるテレビ放送を実現するために必要となる放送局スタジオ設備に関する標準化を行うために,2008年に「超高精細度テレビスタジオ設備開発部会」が設置された。この部会の傘下に超高精細度テレビスタジオ設備に必要な音響方式を検討するための「音響システム検討作業班」が設けられた。作業班ではARIB STD-B32に基づいて,上層・中層・下層の3層構造のスピーカー配置を持つ3次元マルチチャンネル音響方式のスタジオ規格案を検討している。規格案では,最大のチャンネル数を持つ音響方式を22.2マルチチャンネル音響方式としている。以下,規格案の要点を示す。

  1. 上層・中層・下層の3層構造スピーカー配置と設置角度(許容範囲)を規定する。4図に22.2マルチチャンネル音響方式のスピーカー配置と設置角度の例を示す。
  2. 22.2マルチチャンネル音響方式は12.2,10.2,7.1,6.1マルチチャンネル音響方式と階層的な構成を持つ。
  3. 22.2マルチチャンネル音響方式のチャンネルラベルおよびチャンネルマッピングを規定する。
  4. デジタルオーディオの品質(サンプリング周波数,量子化ビット数など)を規定する。
  5. スタジオ標準再生レベルを規定する。
  6. マルチチャンネル音響方式から5.1マルチチャンネル音響方式および2チャンネル音響方式への変換式を記載する。

4図 22.2マルチチャンネル音響における上層・中層・下層の3層構造のスピーカー配置と角度
(α1:45°~60°,α2α1/2,α3:110°~135°,α4:30°~90°,
β1:0°~5°,β2:0°~15°,β3:30°~45°,β4:15°~25°)

5. おわりに

22.2マルチチャンネル音響方式の概要を解説するとともに,音響およびオーディオ技術にかかわる標準化組織の概要と22.2マルチチャンネル音響方式の標準化動向を紹介した。

スター・ウォーズやインディ・ジョーンズのシリーズ作品のサウンドデザインを手がけ,アカデミー賞にノミネートされた12作品の音響効果を担当し,4作品がオスカーを受賞した伝説的な音響効果専門家であるBen Burtt氏は,2010年11月に米国サンフランシスコで開催されたAES第129回コンベンションでの招待講演17) で,音響が映像コンテンツの創造に果たす役割としては以下のようなことがあると述べている。

  • 音響は映像に真実性を与える。
  • 音響は異なる映像をつなぎ1つにまとめる。
  • 音響は場(プレイス)を創造する。
  • 音響は映像のフレームを超えた場(プレイス)を創造する。
  • 音響は感情を高める。
  • 音響は物語中の人物(キャラクター)を強調する。
  • 音響は時間の推移(ペース)をコントロールする。
  • 音響は転換を与える。
  • 音響は映像が与えるメッセージを明確にする。
  • 静寂は音響にインパクトを持たせる。

22.2マルチチャンネル音響方式の研究開発では高臨場感映像音響コンテンツ制作において,正に上記のような音響が果たすべき役割をより効果的に実現することを目指している。今後,22.2マルチチャンネル音響方式の国際標準化を進め,世界中の放送関係者やコンテンツ制作者が3次元音響方式による効果を新たなコンテンツの創造に最大限利用できるようにしたい。また,視聴者が魅力的なコンテンツをそれぞれの視聴環境に合った任意の音響システムで自由に楽しめるようにするための研究開発を進めていく。