写真:村山 研一

地上デジタル放送を支える技術(4回/全5回)

安心安全のための緊急警報放送・緊急地震速報

放送ネットワーク研究部 専任研究員 村山 研一

連載「地上デジタル放送を支える技術」では、2011年以降の放送サービスの高度化に向けた取り組みなどを、技術的な側面から紹介します。

NHKでは、「緊急警報放送」と「緊急地震速報」という2つの緊急放送を行っています。緊急警報放送は、東海地震の警戒宣言や津波警報、地方自治体の長からの要請があったときに受信機の起動信号と併せて放送されます。これに対して緊急地震速報は、気象庁が地震発生直後の小さな揺れ(P波)をとらえて大きな揺れ(S波)の前に震度や震源などを予測して情報を発表するものです。震源の近くでは情報が間に合わないこともありますし、予測震度でプラスマイナス1程度の誤差があるといった技術的な限界もあります。しかし、わずかな時間を生かして地震の被害を減らすことができるものと期待されています。

NHKでは番組の中で自動的に気象庁からの緊急地震速報を放送しています。しかし、番組を視聴していない場合には緊急地震速報を受信することができません。緊急地震速報が発表されたときに、テレビの受信機を素早く、自動的に起動できる仕組みを作ることが課題です。緊急地震速報が発表されてから、地震が到達するまでの時間は数秒~数十秒といわれているため、より短い時間で受信機に情報をお知らせする技術が求められています。

技研では地上デジタル放送のワンセグの電波を使って受信機を自動的に起動し、緊急地震速報を素早くお伝えする研究を進めてきました。ワンセグの電波の中のAC*1 と呼ばれる特殊な伝送路を使って緊急地震速報を伝送するので、屋外でワンセグ受信機を持っている方々にも素早く情報をお知らせすることができます。しかし、受信機を自動的に起動させるには、受信機が緊急地震速報の起動信号を常に監視している必要があります。携帯受信機の電池の消耗を考えると常にワンセグを受信し続けていることは困難です。そこで、ACの中で緊急地震速報の起動信号の有無を間欠的*2 に送ることで、電池の消耗を抑えながら受信機を素早く起動できる技術を開発しました。今後、関係各所と調整しながら本サービスの実現を図ります。

*1 AC(Auxiliary Channel)放送に関する付加情報の伝送路
*2 この場合231msec間隔

図1 緊急警報放送と緊急地震速報
図2 受信機の自動起動