ニュース映像自動要約システムの実用化

SNS(Social Networking Service)などのインターネットサービスでは、短時間で視聴できる映像コンテンツが好まれています。放送局においても、番組の重要なシーンを抽出した「要約映像」をネット配信することで、放送番組の接触率の向上が期待できます。

そこで当所では、放送局においてネット配信の要望が高まっているニュース要約映像の制作を支援するために、AI(人工知能)を使用した「ニュース映像自動要約システム」を開発しました。本システムにニュース番組映像をアップロードすると、AIによる自動要約処理が行われ、ニュース項目ごとにそれぞれ要約された映像が生成されます(図1)。生成された項目ごとの要約映像をつなぐことで、15~30分のニュース番組から2分程度の要約映像を自動で生成できます。処理時間は10~20分のため、ニュースの即時性を失わずに、要約映像をホームページやSNSに展開できるようになりました。

重要シーンならではの構図・カメラワーク・音声内容(キーワード)を学習したAIを利用して映像区間を選定しているため、ニュースの見どころを的確に捉えた要約映像を作ることができます。利用者である番組ディレクターや編集スタッフの個性とこだわりにもきめ細かく対応するために、自動生成された映像のカット構成などを簡単な操作で修正できる機能も実装しました。

本システムは2022年10月にNHKの全国版ニュースの制作現場で試用され、正午ニュースの要約映像が、放送終了後間もない13時にはNHKのニュースサイト「NHK NEWS WEB」やTwitterで公開されました。首都圏ニュースの制作現場でも同年11月から運用が開始されており、平日昼に放送されたニュースの要約映像が、その日の午後にTwitterで配信されています。同年12月中旬からは札幌放送局、2023年1月中旬からは徳島放送局での利用とTwitter配信が始まり、全国規模でのさらなる展開が期待されています。

今後も、視聴者に提供するコンテンツの充実に向けて、番組制作現場を支援するための研究を続けていきます。

図1 ニュース映像自動要約システムの概要