色域の新しい表現方法「Gamut Rings」

当所では、色域(ディスプレーで再現できる色の範囲)を表現する新たな方法「Gamut Rings(ガマットリングス)」*1を考案しました。

従来、色域(Color Gamut)は色度図上で原色(赤、緑、青)の色度点を結ぶ三角形の領域で表現していました(図1)。色度図は、紙面上など2次元で表現するのに便利ですが、本来、ディスプレーの色域は、明度も含めた3次元色空間(図2)で評価する必要があります。しかし、3次元での表示では、PCなどを用いてプロットの視点を変えないと、色域の大きさや形を把握することができないため、従来は簡易的に2次元の色度図を用いていました。

Gamut Ringsは、3次元の色域立体を2次元にリング状に表現したものです。見た目が木の切り株の年輪(annual growth rings)に似ていることから、Ringsと名付けました。色域立体を一定の明度間隔(10段階)で輪切りにして、右に示すように、明度の低い方から平面に引き延ばし、より高い明度の色域をその周辺にリング状に配置します。この変換と投影では、各明度範囲の色域体積の大きさが保たれ、リングの面積が色域の大きさを表します。また、中心からの角度は赤、緑、青などの色相を表します。

従来の色度図ではディスプレーAの方がディスプレーBよりも領域が広く、色域が広いように表現されますが(図1)、Gamut Ringsで見ると実際の色域はディスプレーBの方が広いことがわかります(図3)。従来の色度図では、ディスプレーAの明度が高い部分がくすんだ色になっていることを表現できませんでしたが、Gamut Ringsでは外側のリングが細くなることで表現できます。このように、Gamut Ringsは、ディスプレーの色域をより正確に評価することができます。

Gamut Ringsは、世界最大のディスプレー関連の学会The Society for Information Display(SID)で測定ガイドライン*2*3に掲載され、国際電気標準会議(IEC)*4と国際照明委員会(CIE)*5において国際標準として採用されました。ディスプレーだけでなくプリンターの色域評価にも役立つことが期待されています。

ソフトウエア“Gamut Rings Viewer”のスクリーンショット
図1 色度図での比較
図2 ディスプレーAの色域立体
図3 Gamut Ringsとサンプル画像の比較

追補

アニメーション — 色域立体からGamut Ringsへの変換

  1. K. Masaoka, F. Jiang, M. D. Fairchild, and R. L. Heckaman, “Analysis of Color Volume of Multi-Chromatic Displays Using Gamut Rings,” Journal of Society for Information Display 28(3), 273‒286, 2020
    https://doi.org/10.1002/jsid.852
  2. SID/ICDM Information Display Measurements Standard, v1.1, 2021
  3. K. Masaoka, “New Color Metrology Content in IDMS v1.1,” Information Display 37(6), 33–37, 2021
    https://doi.org/10.1002/msid.1259
  4. IEC 62977-2-1:2021 Electronic Displays - Part 2-1: Measurements of Optical Characteristics ‒ Fundamental Measurements
  5. CIE 246:2021 Colour Gamuts for Output Media