厚さ0.07mm!紙よりも薄い有機ELフィルム光源を開発

当所では、折りたためる・丸められるなど、薄くて使いやすいディスプレーの実現を目指し、薄いフィルム上でも安定に発光する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)の研究開発を進めています*1。今回、厚さわずか0.07mmという紙よりも薄い有機ELフィルム光源を開発しました。薄く柔らかい基板上でも安定に発光する本技術を応用すれば、まるで新聞紙のように形状を自由に変えられるフレキシブルディスプレーが実現できます。

有機ELは非常に薄い自発光型のデバイスであるため、プラスチックのフィルム基板上に有機ELを形成することで、フレキシブルなディスプレーを作製できます。

有機ELを発光させるためには、陰極から発光材料を含む有機層に電子を注入する必要がありますが(図1A)、一般的な有機ELでは陰極と有機層の間にアルカリ金属等の水分に弱い材料を用いています。このため、一般的なプラスチックフィルムを使うと、大気中の水分がフィルム内に侵入してアルカリ金属が劣化し、発光しない部分が短期間で増加します(図1B)。このため、一般的な有機ELとフィルムを用いて、薄くて柔らかいディスプレーを実現することは困難です。

これまでは、水分からこのアルカリ金属を守るために厚く硬いバリア膜を使用していたため、ディスプレーをより薄くそして柔らかくするためのボトルネックとなっていました(図1C)。

これに対して、当所では水分に弱いアルカリ金属を使わずに有機層に電子を注入できる独自材料を開発し、長期間発光する新しい有機ELを実現しました(図1D)。新しい有機ELは水分が侵入しても劣化しにくく、水分存在下でも長期間安定に発光することを確認できています(図1B)。

この有機ELは水分を透過する薄くて柔らかいバリア膜を使った場合でも安定に発光するため、この特長を生かし厚さ0.07mmという紙よりも薄いフィルム光源を実現しました(図2)。

今後は水分耐性をさらに高めることによるさらなる長寿命化など、ディスプレー応用に向けた研究開発を進めていきます。

図1 (A)一般的な有機ELの構成とフレキシブル基板上における水分の影響のイメージ。(B)水分存在下における各種有機ELの発光面の画像。(C)厚くて硬いバリア膜を用いたフレキシブル有機ELのイメージ。(D)薄くて柔らかいバリア膜を使っても安定に発光する新しい有機ELのイメージ。
図2 (A)厚さ0.07mm、大きさ20mm角のフィルム光源。(B)紐状のフィルム光源。薄くて柔らかいため棒に巻き付けることも可能。
  1. 本研究開発は株式会社日本触媒と共同で進めています。