フレキシブルな有機ELの省電力化を目指した材料を開発

NHKでは、巻き取りや折り曲げができるテレビの実現を目指し、フレキシブルな有機EL*1の研究開発を進めています。今回、省電力化を目指した新たな有機EL用材料を開発しました。

有機ELでは、発光に必要な電子を有機層に供給する電子供給層として、一般にアルカリ金属を利用します。しかし、アルカリ金属には、微量の水分と反応して酸化し、電子の供給ができなくなるという性質があります。一方、フレキシブルディスプレーに用いるフィルムは水分を通しやすいため、有機ELをフィルム上に作製した場合、アルカリ金属が酸化し、有機ELが短時間で発光しなくなることが課題でした。

今回、電子供給層としてフィルムを透過する水分の影響を受けず、安定して電子を供給できる新たな有機材料を開発しました。また、この材料の分子構造を変えることで、有機ELの明るさが制御できることを世界で初めて明らかにし、大きな省電力化が期待できることを確認しました(図2)。

今回の研究成果は、2020年7月24日発行のNature Communications誌に掲載されました。今後もフレキシブルなテレビの早期実現に向け、研究開発を加速していきます。

*1 有機EL:有機エレクトロルミネッセンスの略。ある種の有機化合物を用いた層状の構造体に電流を流すと発光する現象。

図1 フレキシブル有機ELの構造と発光機構
図2 電子供給材料の構造を変えた有機ELの発光の様子(3.5V印加時)