映像符号化方式VVCの国際標準化の取り組み

技研では、スーパーハイビジョン(以下SHV)映像伝送の高効率化に向け、映像符号化方式の研究開発に取り組んでいます。SHVは、優れた精細感や色・動きの再現により、高い臨場感や実物感を実現します。一方、SHVは情報量がハイビジョンの4~32倍あり、電波を使った放送など伝送可能な情報量に制限がある場合には、より高性能な映像圧縮技術が必要となります。

技研では、映像圧縮に関する技術開発を進めるとともに、開発した技術を国際標準化するため、映像符号化技術に関する2つの国際標準化会議MPEG※1および VCEG※2に参加してきました。

近年では、技研はMPEGおよびVCEGが組織した共同作業班JVET(Joint Video Experts Team)で進めている次世代映像符号化方式VVC※3の標準化に寄与しています。VVCは、新4K8K衛星放送の映像符号化方式であるHEVC※4に対し、映像の情報量を50~70%まで圧縮することを目標にした、次世代の映像符号化方式です。技研は、2015年の技術探索フェーズの標準化活動から参加し、HDR※5の符号化性能の改善技術などを提案しました。また、2018年には方式提案募集に対して、信号予測に基づいた符号化性能の改善技術などを提案し、VVCの標準化に寄与しました。その後も、VVCの要素技術の改善や実験条件の提案、他社提案技術の分析レポートなど60件を超える寄書を行いました。あわせて、VVCに関係するHDR放送のためのガイドライン※6や符号化・復号装置の入出力フォーマットに関するガイドライン※7の標準化にも寄与し、SHV放送の普及にも取り組んでいます。

VVCは2020年7月に規格案がまとまり、これから実用化のフェーズに入ります。技研では、これらの標準化活動への貢献を通して、地上放送の高度化などSHV放送の普及に向けた取り組みを続けていきます。

*1 MPEG (Motion Picture Experts Group):ISO/IEC JTC1/SC29傘下の符号化技術の検討グループ
*2 VCEG(Video Coding Experts Group):国際電気通信連合の電気通信標準化部門傘下の映像符号化専門家グループ(ITU-T SG16/WP3/Q6)
*3 VVC(Versatile Video Coding):ISO/IEC 23090-3|Rec. ITU-T H.266
*4 HEVC(High Efficiency Video Coding):ISO/IEC 23080-2|Rec. ITU-T H.265
*5 HDR(High Dynamic Range):テレビが表現できる映像の明暗の幅を拡大する技術
*6 ISO/IEC TR 23008-15|Rec. ITU-T H Sup.18
*7 ISO/IEC TR 23091-4|Rec. ITU-T H Sup.19

ITU本部で対面で最後に開催されたVVCの標準化会議(2019年10月 スイス ジュネーブ)