国際規格の音響特性を実現する小型・大出力のモニタースピーカーを開発

技研では、次世代の音声サービスの開発を目指して、新たな音響システムの研究を進めています。音響システムの実用化には、制作装置、音声符号化装置などさまざまな機器の開発が必要になりますが、開発の過程では機器の性能を検証するため、音質の主観評価実験が不可欠です。主観評価実験では、信頼性の高い評価結果を得るために、モニタースピーカーと呼ばれる周波数特性*1や指向特性*2などの音響特性に優れたスピーカーを用いる必要があります。そこで今回、音響評価のための特性を規定した国際規格*3を満たすモニタースピーカーを新たに設計・開発しました(図1)。

今回開発したスピーカーの仕様を表に示します。本スピーカーは、強力な磁石を採用して発音部にあたるスピーカーユニットを小口径化することで、体積を従来の大型モニタースピーカーのおよそ1/3に小型化しました(図2)。また、国際規格の2倍以上の最大音圧レベルや国際規格に準拠した再生周波数帯域を実現しました。本スピーカーの指向特性(図3)の広さを示す指向指数*4についても、スピーカーユニットの⼝径や周波数特性などの最適化によりスピーカーの国際規格に準拠させました。
そのほか、スタジオでスピーカーを設置する際の利便性を向上させるために、スピーカーとアンプを一体化して省スペース化を実現しました。また、低音増強用の音響構造であるバスレフポートをスピーカーの前面に設置することで、スタジオ壁面への埋め込み設置が可能な構造としました。

本スピーカーは、小型で大出力を実現したため、22.2ch音響など多数のスピーカーを用いる3次元音響システムの評価にも活用できます(図4)。今後も技研では、視聴者の皆さまにより便利で魅力的な音声サービスをお届けできるよう研究を推進していきます。

図1:試作した小型・大出力スピーカー
図3:スピーカーの指向特性
図2:試作した小型・大出力スピーカー(左)と従来の大型モニタースピーカー(右)
表:スピーカーの仕様
サイズ 322W×580H×412D(mm)
重量 29kg
最大音圧レベル 116dB
再生周波数帯域 40Hz ~ 20kHz
指向指数 6dB ~ 12dB
図4:22.2ch音響用にスピーカーを設置した音響実験室

*1 再生可能な周波数の範囲や、各周波数間のレベルの大小関係。
*2 スピーカーから再生される音の放射方向ごとの特性。
*3 勧告ITU-R BS.1116-3。音質評価に関する規格で、スピーカーの要求性能が規定されている。
*4 スピーカーの指向特性を示すパラメーター。指向特性が広くなると数値が小さくなり、全指向性で0dBになる。