写真:根本 慎平

次世代映像符号化方式VVC

地上放送高度化に向けた高効率映像符号化技術

テレビ方式研究部 根本 慎平 研究員

技研が研究開発を進めてきた、スーパーハイビジョン(SHV)放送の4K・8K映像は、解像度が高く膨大な情報量となるため、映像信号を高品質のまま圧縮する「符号化」の技術が不可欠です。技研は、2018年12月に開始された新4K8K衛星放送の実現のため、符号化方式High Efficiency Video Coding (HEVC)の研究および標準化に寄与してきました。現在は、衛星放送よりも伝送帯域が狭い地上放送の高度化によるSHV放送の実現に向けて、さらに高効率な符号化方式Versatile Video Coding (VVC)の研究および標準化に取り組んでいます。

VVCは、次世代符号化方式として世界中の企業や研究機関などが参加する国際標準化機関によって標準化が進められており、2020年7月に標準化が完了する予定です。同程度の画質になるように符号化した場合、VVCはHEVCに比べて伝送レートを40%程度削減できます。また同程度の伝送レートで比較した場合に、HEVCに比べてより高画質な復号映像が得られます(図1)。

符号化処理では、画像を8×8画素などの複数のブロックに分割し、ブロック単位で近傍画素の信号値を使って予測処理を行います。私たちは、色差を表す信号の予測処理において、従来技術に比べてより多くの近傍画素を利用する手法を開発し、予測精度を向上させることに成功しました。また、ブロック分割処理では、ブロックの境界部分の歪みにより画質劣化が生じることがあります。境界部分の画素の明るさによっては、この歪みがより強調されて見えます。そこで私たちは、画素の明るさに応じた適応的なフィルタ制御を導入することで、歪みの影響を軽減しています。

今後も、さらなる符号化効率の向上を目指して、符号化技術の研究開発を進めます。

図1 HEVCとVVCの画質劣化の比較

(一社)映像情報メディア学会の超高精細・広色域標準動画像を利用しています