写真:熊野 正

AIによるアナウンス

ラジオ気象情報番組の自動作成

スマートプロダクション研究部 熊野 正

技研では、地域放送局の番組制作を支援するために、人手を介さないラジオ気象情報番組の自動制作技術の研究開発を進めています。この技術では、コンピューターが、気象台などから配信される気象データから自動で番組の時間に収まる読み原稿を生成し、音声合成技術を用いてNHKのアナウンサーのように伝わりやすい音声で読み上げます。

NHKのアナウンサーは、伝える情報に優先順位をつけて、番組の時間内に情報が収まるように、話す内容を考えます。このノウハウを、アナウンス室と連携してルール化することで、コンピューターが、放送時間内に情報が収まるような原稿を自動的に生成します。

生成された原稿を、視聴者に分かりやすく読み上げる技術にも、NHKのアナウンサーのノウハウが生かされています。原稿を読み上げる際に、どの部分を強調し、どこに間を置いて、どのようなイントネーションで伝えるべきか、ルールを決めます。実際にアナウンサーが原稿を読んだ音声を収録し、これをDNN*技術を用いてコンピューターに学習させることで、NHKのアナウンサーのノウハウを生かした、伝わりやすい音声を合成することができます。

2019年3月に、甲府放送局のラジオ第1放送の気象情報番組で、このAIによるアナウンス技術を用いたトライアル放送を開始しました。その後も、原稿生成技術や音声合成技術の改良を続け、11月からは新潟放送局でもトライアル放送を開始しています。

今後は、AIによるアナウンス技術をより多くの地域や番組時間帯に適応させるため、システムの汎用性を向上させていきます。

* DNN:ディープニューラルネットワーク。人工知能(AI)が学習するための基盤技術の1つ。ここでは、アナウンサーの声の出し方を学習する

AIによるアナウンスを活用した気象情報番組制作