写真:後藤 正英

3次元構造撮像デバイスの研究

新機能デバイス研究部 後藤 正英

技研では、将来の立体映像などの撮影に期待できる高性能なカメラの実現に向けて、新しい概念の撮像デバイスの研究開発に取り組んでいます。

3次元構造撮像デバイスの特徴

撮像デバイスの性能は、精細さに関わる画素数や、動きの滑らかさに関わるフレームレート*1などで表されます。従来の撮像デバイスでは、画素の列ごとに1つの信号処理回路があり、多数の画素の信号を1つずつ順番に処理して出力するため(列並列信号処理)、画素数を増やすと信号出力に時間がかかり、フレームレートを高めることが難しくなります(図1a)。とりわけ立体映像の撮影には、現在のデバイスをはるかに超える画素数が必要になるため、フレームレートを維持できなくなることが懸念されます。

3次元構造撮像デバイスは、受光部や信号処理回路を備えた複数の基板を積層した構造で、画素ごとに信号処理回路を持ち、並列して信号処理を行います(画素並列信号処理)。画素数に関わらず1回の信号処理で1画面を出力できるため、多画素化と高フレームレート化の両立が可能です(図1b)。

図1:撮像デバイスの構造

撮像デバイスの試作と動作実証

これまでに、受光部と信号処理回路を備えたそれぞれの基板を直接接合する技術を開発しました。画素ごとに微細な金の電極を埋め込んだ基板を平坦化し、接合させることにより、電極を介した画素単位の信号伝達が可能になります(図2)。

画素数が128×96のデバイスを試作し、画素並列信号処理により動画像を撮影できることや、信号処理回路の工夫により、96dBの広いダイナミックレンジ*2にわたる16bitのデジタル信号出力が得られることなどを確認しました。

今後は、多画素化や多層化を進めて、従来のデバイスの性能を抜本的に改善できる撮像デバイスの実現を目指します。

*1 フレームレート:1秒間に撮影する画像の枚数
*2 ダイナミックレンジ:撮影できる明るさの範囲

図2:基板の直接接合技術(一画素の断面図)