【報道資料】 2024年5月21日

高画質なインコヒーレントデジタルホログラフィー撮影装置を開発

NHK放送技術研究所(技研)では、特別な眼鏡なしでリアルな3次元映像を楽しめるよう、被写体の高精細な3次元情報を取得できるホログラフィー撮影技術の研究を進めています。今回、新たな光学素子の採用により、高い画質が得られるインコヒーレント※1デジタルホログラフィー撮影装置の開発に成功しました(図1)。

デジタルホログラフィーは、光の干渉を利用して被写体の3次元情報を忠実に撮影・表示できる技術です。照明光にレーザーを用いることがデジタルホログラフィーでは一般的ですが、撮影できる場所や被写体に制限があります。一方、インコヒーレントデジタルホログラフィーは、自然光やLED照明光などを用いて、さまざまな場所で被写体を撮影できます。また、目に損傷を与えるおそれがあるレーザーを用いないため、人物も撮影できます。

技研の従来のインコヒーレントデジタルホログラフィー撮影装置は、反射型と呼ばれる光学素子を用いて光の干渉縞を生成し、カメラで撮影していました。しかし、この方式では強い照明光を用いないと明瞭な干渉縞が得られず、画質を高めることが難しいという課題がありました(図2)。

今回、液晶レンズ※2と呼ばれる透過型の光学素子を採用した撮影装置を、新たに開発しました。これにより、従来に比べてカメラに届く光量を4倍に増やすことに成功し、明瞭な干渉縞を得ることで、画質の改善とより大きな被写体の撮影を実現しました。この撮影装置により、撮影後であっても手前と奥に設置したそれぞれの被写体に自由に焦点を合わせた画像を出力でき、高画質な3次元情報を取得できることを確認しました(図3)。

この技術は、5月30日(木)~6月2日(日)に開催する「技研公開2024」で展示します。今後も、高精細な3次元情報を取得できる撮影技術の早期実用化に向け、研究開発を加速していきます。

※1 インコヒーレント:太陽光やLED照明光などのように、光の波長、進む方向やタイミングがそろっておらず、波どうしの干渉性が低いこと。

※2 液晶レンズ:液晶分子の向きを制御し、レンズのように光を集めることができるデバイス。

この研究の一部はシチズン時計株式会社と共同で進めています。

図1. 開発したインコヒーレントデジタルホログラフィー撮影装置
図2. 従来の撮影装置(反射型)と今回開発した撮影装置(透過型)の比較
図3. 開発したインコヒーレントデジタルホログラフィー撮影装置による撮影例