【お知らせ】 2021年5月12日

有機ELの電子注入機構を解明

NHK放送技術研究所(技研)は、巻き取りや折り曲げができる大画面フレキシブルディスプレーの実現を目指し、有機EL1)の研究開発を進めています。

これまでフレキシブルディスプレーの長寿命化・省電力化に向けて、陰極から発光層に電子を注入する電子注入層の材料を開発してきました2)。今回、世界で初めて電子注入の動作機構を解明するとともに、更なる高性能化が可能な新規電子注入材料を開発しました

有機ELでは、発光層に電子を注入するため、陰極と発光層の間に存在する約2eVのエネルギー差をゼロにする必要があります。今回、新たに開発した電子注入材料により、陰極や有機材料との化学結合を利用して、エネルギー差をゼロにできることに成功しました。さらに、従来の有機ELにおける電子輸送材料は、電子を輸送する役割よりも、エネルギー差を約1eV減らす役割が大きいことを解明しました。これらの発見によって、新規電子注入材料を用いれば、電子輸送材料を必要とせず、発光層に直接電子を注入できることがわかりました。

この新規電子注入材料は有機ELの長寿命化、省電力化に寄与できるだけでなく、従来必要とされた電子輸送材料が不要になることで有機ELの構造を簡素化できます。

今回の研究成果は、5月11日にNature Communications誌に掲載されました。今後も大画面フレキシブルディスプレーの早期実現・実用化に向け研究開発を加速していきます。

図1:有機ELの構造の違い(左:今回開発構造、右:従来構造)
図2:電子供給のイメージ図(左:今回開発材料、右:従来材料)