【報道資料】 2020年6月26日

有機膜を積層した3層カラー撮像素子を開発

~高精細な小型単板カラーカメラの実現に向けて~

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NHKは、高精細な小型単板カラーカメラの実現を目指し、光を電気信号に変換する有機膜を用いた撮像素子の研究開発を進めています。今回、有機膜を積層したカラー撮像素子を開発しました。

一般的な小型単板カラーカメラ用の撮像素子は、青・緑・赤のフィルターを取り付けた画素をモザイク状に並べて配置しています。この方式では、複数の画素からの色情報を集めてカラー映像を生成するため、素子が本来持つ解像度や光の利用効率が低くなることが課題でした。

そこで今回、青色のみ、緑色のみの光を検出する有機膜を、赤色の光を検出するCMOS*1イメージセンサーの上に垂直方向に重ねて配置した、3層構造のカラー撮像素子を開発しました。

入射した光は、最初に青色の成分のみが1層目の有機膜で検出され、緑色と赤色の成分が透過します。次に緑色の成分のみが2層目の有機膜で、最後に赤色の成分がCMOSイメージセンサーで検出されます。有機膜には透明な薄膜トランジスターを組み合わせてあり、各層から出力された信号を足し合わせると、カラー映像が出力できます。

1つの画素で青・緑・赤すべての色情報が得られる構造により、光をより効率的に利用しながら、高精細な撮像素子が実現できます。今後も、撮像素子の画素微細化や多画素化などに取り組み、高精細な小型単板カラーカメラの早期実現に向けて研究開発を加速していきます。

※青色用有機膜の開発は日本化薬株式会社と共同で進めました。

*1 Complementary Metal-Oxide-Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体

図1 開発した3層カラー撮像素子と動作原理
表1 開発した3層カラー撮像素子の仕様
素子構造 青色用有機膜(ガラス基板上に積層)
+緑色用有機膜(赤色用CMOSイメージセンサー上に積層)※
画素数 横320 × 縦240
画素ピッチ 20μm
フレームレート 60フレーム/秒

※ 青色用有機膜は、緑色用有機膜と向かい合わせて構成

図2 開発した3層カラー撮像素子の出力画像(a)と分光特性(b)