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2020年6月8日(月)

爆発的スピードで世界を制す!20km競歩・山西利和の強さ

マラソンとともに札幌開催となった競歩は、周回コースを独特の歩き方で歩いて、速さを競う競技です。スピードが重視される20km、スタミナも問われる50kmの2種目があり、日本選手は、いずれの種目でも金メダルが狙える実力を誇ります。この記事でご紹介するのは、世界ランキング1位で、2019年、カタールのドーハで行われた世界選手権の男子20 km競歩で優勝した若きエース、山西利和(やまにし・としがず 1996年生まれ)選手です。

山西利和 選手(2019世界選手権優勝)

山西選手が、陸上を始めたのは中学の時。当時は3000m走の選手でした。競歩と出会ったのは高校に入ってから。メキメキと実力をつけ、高校3年生で世界ユース選手権の10000m競歩で優勝、京都大学に通っていた大学生時代には、台北ユニバーシアード20km競歩で金メダルを獲得しました。身長164㎝の小柄な体のどこに、強じんなスタミナとスピードが隠されているのでしょうか。

山西利和 選手(中央)

スピード勝負を制する「強じんな脚力」

20km競歩は、1周1kmのコースを20周まわってタイムを競います。世界記録の平均時速は15.6km/hで、一般人が歩く速さの3倍以上。どうして、そんなに速く歩けるのでしょうか。

そもそも徒歩と競歩とでは、足の使い方が異なります。通常、歩くときは、まずひざを曲げて足を着き、地面を蹴って前に進みます。ところが競歩では、足が地面に接地したときから膝が垂直になるまで「ひざを曲げてはいけない」というルールがあるため、独特の歩き方になります。

競歩では、かかとから頭までを、一直線に少し前に傾けて軸足に体重をのせます。そして、お尻から太ももの裏にかけての筋力を使って腰を後ろに強く引き、体を前に押し出します。この筋力が強いと、推進力が増してスピードが上げられるのです。バイオメカニクスが専門で「競歩」を研究している三浦康二(みうら・こうじ)さんは、山西選手には、スピード勝負を制する「強じんな脚力」があるといいます。

日本スポーツ振興センター 三浦 康二さん

三浦康二さん

山西選手は、持っている才能が非常に高いレベルの選手です。スピードを出しやすい要素を持っています。ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)が非常に盛り上がっています。ここまで盛り上がっている選手は、あまりいません。

三浦康二さん

足が地面に接地するときは、すね、ひざの裏、お尻からハムストリングスにかけての筋肉を使っている状態です。その後20cm(画像下の青い矢印)ほど進むまでの加速がスムーズでないとスピードが上げられないわけですが、山西選手の場合は脚力が強いので、非常にスムーズに加速できているわけです。山西選手の最大の特長ですね。

推進力を生み出す「体のひねり」

山西利和 選手(2019世界選手権)

「体のひねり」も山西選手の武器です。競歩では膝を曲げられないため、前に進むには足の筋力の他に「体をひねり」が必要になります。体をひねると腰が回る、すると腰の動きと連動して足を前へとスムーズに動かすことができるからです。つまり、「体のひねり」が大きいほど推進力が高まるのです。三浦さんは、山西選手の「体のひねり」は、急速に進化しているといいます。

三浦康二さん

2018年までと2019年の山西選手の歩きを比較すると、それまでコンパクトにやっていた「体のひねり」が、大きくなっていることがわかります。「体のひねり」をうまく使えるようになったことで、山西選手が持っている自分の身体資源を、パフォーマンスにつなげられるになった、一段上がったわけです。

金メダルへの「ラスト3km」

2019年10月、猛暑のドーハで世界選手権の金メダルに輝いた山西選手。しかし、山西選手は、その戦いぶりに満足していませんでした。

山西利和 選手

自分の中のレースの理想の形としては、もっといいものができたと思っていたので、少し物足りなさがありました。

これは、山西選手の1kmごとのラップの推移です。トップに立つため、6〜7kmにかけて一気にペースアップ、8kmまで上げています。そして12kmから再びペースアップ、15kmのラップタイムは4分8秒まで上がりました。ところが、その後は、最後までラップをあげることができなかったのです。

元日本代表の谷井孝行(たにい・たかゆき)さんは、山西選手が物足りなさを感じたのは、後半の歩きだったと見ています。

谷井孝行さん

山西選手のレースプランは、ラスト3 kmを1 kmあたり4分のペースで歩いて、圧倒的に勝ちたかったんでしょう。実は山西選手は、2019年2月の日本選手権で、ラスト1 kmのスパート勝負で負けていますから、世界選手権で勝つためには、少し距離のある2~3 kmのところでスパートを仕掛けると考えていたと思います。しかし、中盤のペースアップで予想以上に体力を消耗してしまったため、ラスト3Kmでタイムを伸ばせなかったのだと思います。

実は、2012年ロンドンオリンピックでは、残り3 km手前でトップを歩く選手がペースアップしました。2016年リオデジャネイロオリンピックでも、ラスト3 kmで激しいトップ争いが繰り広げられました。谷井さんは、山西選手が東京オリンピックで金メダルをとるためのカギは、スピード勝負になるラスト3 kmにあると言います。

谷井孝行さん

ラスト3 kmでスピードアップをしないと金メダルと取ることはできません。中盤での駆け引きにしっかり対応して、ラスト3 kmで一気に切り替えられる爆発力、スピードを上げていく展開をイメージしていくことが大事だと思っています。

高い身体能力と歩きのテクニックを武器に20 kmを猛スピードで歩き抜ける山西選手。ラスト 3kmのスパート勝負を制すれば、金メダルは見えてきます。札幌の市街地で繰り広げられる躍動感あふれるに歩きに期待が高まります。

この記事は、「勝利の条件 スポーツイノベーション」(2020年1月31日放送)を元に制作しました。
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