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2020年5月27日(水)

オレら、生まれながらシンクロ!? 飛び込み 寺内健・坂井丞

飛板の反発力を利用してジャンプし、空中で演技をする「板飛び込み」。この記事では、2人で演技を行う「男子シンクロ板飛び込み」の日本代表、寺内健選手(1980年生まれ)と坂井丞選手(1992年生まれ)のペアの強さの秘密に迫ります。寺内・坂井ペアは、2019年7月、韓国で行われた世界選手権で7位に入賞し、東京オリンピックの日本代表に一番乗りで内定しました。寺内選手は、1996年アトランタ大会に初出場して以来、6度目となる大ベテラン。坂井選手は、寺内選手より12歳年下のホープです。

坂井丞選手(左) 寺内健選手(右)

2人の演技の特徴は、体重が大きく違うにもかかわらず、ピタリと演技が合う「同調性」の高さ。跳躍の高さや回転のスピードを合わせるため、似た体格の選手同士がペアを組むことが一般的な「シンクロ」の世界で、体格の違う2人がなぜ、演技をピタリと合わることができるのでしょうか。その不思議に迫ります。

難易度の低い技で、高得点をねらう!?

寺内・坂井ペア 2019年世界選手権 (韓国)

まずは、下の表をご覧ください。東京オリンピックの代表内定を決めた2019年世界選手権のデータです。縦軸は演技の回数。1〜2回目は規定演技、3〜6回目は自由演技を行いました。横軸は8組の演技の種類(Dive no)とその難易度です。青と赤で囲んだ部分、演技の難易度を見てください。海外のペアが「3.4〜3.8」という難易度が高い技を選択しているのに対して、寺内・坂井ペアは、難易度の低い「3.0~3.4」の技を選んでいます。実は、この演技の選び方に寺内・坂井ペアの強さの秘密が隠されているのです。

選手が選択した演技とその難易度(2019年世界選手権)

もう一つ、表をご覧ください。寺内・坂井ペアが難易度3.1の演技「107B」を行った6回目の採点表です。青で囲んだE1~E3とE4~E6の6人の審査員は、寺内選手と坂井選手の「個人演技」を10点満点で採点、それぞれ最上位と最下位を除いた2人の審査員の点数が採用されます。赤で囲んだS1~S5の5人の審判員は「同調性」を採点、最上位と最下位を除いた3人の点数が採用される仕組みです。「個人演技」を評価する審判員は2人ですが、「同調性」を評価する審判員は3人。つまり「同調性」の評価が全体の6割を占めるのです。

寺内・坂井ペアの6回目の得点(2019年世界選手権)

世界選手権の6回目、寺内・坂井ペアは、失敗のリスクが高い難しい技を避けて、難易度の低い「107B」という技で臨みました。「同調性」の高さを審判員にアピールすることで得点を稼ぎ、上位に食い込む戦術をとったのです。6回目の演技、「107B」(前宙返り3回半えび型)を動画でご覧ください。

寺内健選手

僕らは「点数を引くところないよね」って審判員に思ってもらい、高い点数を出してもらえる戦い方をしています。海外の選手は難易度が高い「抱え型」を選択することが多いですが、抱えると回転速度が上がって合わせるのが難しくなります。2人の足4本が、ばらばらに見えやすいんです。僕たちの「えび型」は、難易度は一段低くなりますが、足を閉じてひざを伸ばすので、より見栄えもするし、回転が合っているように見えるんです。“優雅で美しく”というところで審判が点を出しやすいのではと考えています。

体重差10kgなのに、ジャンプの高さがピタリと一致!

寺内選手と坂井選手がはじめて「シンクロ」に出場したのは、2015年にプエルトリコで行われた国際大会です。試しにと軽い気持ちで出場したところ優勝してしまったのが、ペアを組むきっかけとなりました。ところが、本格的に「シンクロ」に取り組み始めるとうまく行きませんでした。互いが合わせようと意識すればするほど、どうしても合わせることができなくなるというジレンマに陥ったのです。

寺内健選手

寺内健選手

回転を合わせるには、助走で歩く距離やスピード、板の沈め方など、滞空時間に変化が出てくるところ全てに対して意識をしなくてはなりません。でも、合わせようと意識しすぎると逆にダメになるんです。僕がタイミングを遅くしなければならない、坂井がもっと踏み込まなければいけないとか、2人が同じ呼吸で合わせるのは、すごく難しいことなんです。合宿で2~3日は合っていたのに、練習期間が長くなればなるほど合わなくなる、まさに摩訶不思議な現象が起きるんです。

2人がたどり着いた答えは、「無理に合わせるのでなく、それぞれが自分の持っている100%の跳び方をする」ことでした。そうすれば、なぜか自然とピタリと合うということに気づいたのです。ガッチリした体型の寺内選手の体重は68kg、やせ型の坂井選手の体重は58kg。2人の体重差は10kgもありますが、飛板の反動を利用してジャンプした最頂点は、ピタリと一致しています。

寺内健選手

体重差が10kgあると普通は合わないです。だけど、僕は体重があるので板を沈めて反発力を利用して高く飛ぶ。一方、坂井は軽いのであまり板を沈めないで自分のジャンプ力で上にあがる。それで頂点が合う。10kg差でちょうど合うので、きっと2人が体重を同じにしたら合わなくなると思います。相手に合わせてリズム変えるんじゃなくて、互いに自分のスキルを最大限高める、それが理想なんだと思います。

坂井丞選手

「シンクロ」は、合わせる練習をやりすぎても合わないという難しさがあります。でも、それぞれに100%の演技をすれば、結果として自然とシンクロできるので、自分の演技を高めることに集中しています。それにしても、それぞれが自分の演技をすればピタリと合うということは、元々ペアを組むのにふさわしかったのかも知れませんね。

「同調性」のカギは、踏み切りの位置にあり

代表に内定した後も、別々の練習場でそれぞれに自分の演技を磨き続ける寺内・坂井ペア。2人が、最も力を入れて練習しているのは、踏み切りです。飛板のしなりの反動を利用して高くジャンプする板飛び込みでは、踏み切りの位置を合わせるのが最も難しいと言われています。足先が板の外へ出てしまうと力を入れることができず、逆に板の内側で踏み切ると強い反発力が得られないからです。寺内選手が、板の先端をあまらせて踏み切ったために、同調性に乱れが生じしまった演技を動画でご覧ください。

寺内健選手

この技は、宙返りを1回転半ぐらい終えたところから開いて、その後2回ひねるんですけど、開くタイミングを合わせることがポイントです。踏切の際に板を十分に踏み込めれば、同じタイミングで行けるんですが、踏み込みが十分でないと高さが足りなくなって、宙返りのひねりが遅れて、ズレが出てくるんです。先端で踏み切ることができれば、ひねりもピタリと合わせることができるので、課題を克服して、スキルを高めたいと思います。

坂井丞選手

「シンクロ」のメリットは、1人でやっていると調子が悪い時でも、2人でやったらできちゃうみたいな相乗効果が生まれることなんです。自分が崩れているときに、2人で合わせたら、自分の悪いところが浮き彫りになって課題に気づける。そういう意味でもいい緊張感が生まれています。

坂井丞選手(左) 寺内健選手(右) 2019年世界選手権(韓国)

寺内選手は「3mシンクロ板飛び込み」に加えて、個人種目の「3m板飛び込み」でも東京オリンピックの代表に内定しています。6度目のオリンピックの舞台、坂井選手との息の合った演技に注目です。

                   
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